『シェンムー3』実現に、フランス製作の『鉄腕アトム』――本社はモナコの「Shibuya Productions」が仕掛ける野望

150728_shibuyapro.jpg『シェンムー3』や『鉄腕アトム』新作を製作するShibuya Productions公式サイトより。

 6月16日にスタートしたゲーム『シェンムー3』製作資金を募るクラウドファンディングは、プロジェクトの告知から約9時間で目標金額の200万ドル(約2億5000万円)を達成。このことは、世界のゲームファンにとって熱い話題となった。

『シェンムー』は、今は亡きセガのゲーム機・ドリームキャストの大型作品として1999年に第一作が、2001年に第二作が発売。しかし、全三部作を予定していたストーリーは完結しないままで中断。2007年にセガが家庭用ゲーム機の製造・販売事業から撤退したことで、“未完の大作”になったと思われていた。

 そんな世界のゲームファンが渇望する『シェンムー』続編の製作を立ち上げたのが、モナコに本社を置く製作会社Shibuya Productionsだ。『シェンムー3』のみならず『鉄腕アトム』の新作も製作しているという同社の展望を、来日した同社CEOであるセドリック・ビスカイ氏に聞いた。

「クラウドファンディングは、うまくいくだろうとは思っていました。目標の200万ドルは達成できると。スタートした途端にアメリカとヨーロッパから膨大な数の参加者がアクセスし、開始1時間半で100万ドルを突破しました。あまりの勢いに、『キックスターター』のサイトが3回もダウンしたんです。『キックスターター』の公式Twitterアカウントが“サーバーがダウンしているので、お待ちください”とツイートしたのを見た時には、このツイートをTシャツにして着たいと思いましたよ(笑)」

 ビスカイ氏は丁寧なフランス語でユーモアを交えながら語った。Shibuya Productionsは日仏間の企業コンサルタントを主な業務としてきたビスカイ氏が、2014年7月にモナコで設立した会社だ。日本では山梨県北杜市に支社を置き、活動を行っている。

 筆者がまず気になったのは、この部分。なぜモナコと山梨県に会社を置いているのか? そこにはビジネスのチャンスを得る目的があると、ビスカイ氏は語る。

「モナコで法人を設立したからといって、税金が優遇されるわけではありません。むしろ、費用はかかるし、法人設立はフランス国内よりも敷居が高いのです。けれども、設立が困難な分、“モナコの法人”というだけで信用を得ることができます。特に、アメリカの企業は“モナコの法人”ということで信用してくれる傾向が強いです。そして、モナコは映像業界をはじめ、さまざまな業界の人が小さな町の中で休暇を過ごします。ですから、新たなネットワークを作りやすいと考えたのです。

 山梨県に日本支社を設けたのも同じ理由です。山梨県は、東京のビジネスマンが週末を過ごす土地だと聞いたからです。

 それと、もうひとつ。私が『北斗の拳』の大ファンなので、“ほくと(北杜)”の読みが一緒で面白いなと思ったんです(笑)」

 人との出会いをビジネスチャンスへと変えることに強い意欲を示すビスカイ氏。『シェンムー3』の企画も、3年前にモナコで開催されたイベントにて同作を開発したゲームクリエイター・鈴木裕氏と出会ったのがきっかけだ。

「私も『シェンムー』の続編を待ち望んでいる一人でした。その思いを伝えたところ、鈴木さんも『実は考えている』というのです。そこで2年前から本格的にプロジェクトを立ち上げ、世界のさまざまな場所で鈴木さんと会って相談をしながら企画を具体化していったのです」

 クラウドファンディングによる資金調達が200万ドルを突破した後、支援者からの質問に応じる形で掲載された説明によると、製作にあたって、「キックスターター」で集まった全額を投じて鈴木氏が代表取締役を務める「YsNet」が開発を担当。ここに、ソニーがパブリッシングをサポート。Shibuya Productionsは、制作サポートとヨーロッパを中心としたプロモーション、マーケティングを担当することになる。

 コンテンツ製作では常道となっている、各社が出資を持ち寄り利益を分配する製作委員会方式とは形が異なる。製作委員会方式を取らなかった理由は、もともとの『シェンムー』の製作元であるセガが参加しなかったことが、最も大きな理由だという。

「セガの不参加については、鈴木氏がセガと話し合っていたので詳細はわからないのですが、結果的にセガは関わらないことになりました。セガは14年間、『シェンムー』について何もしてこなかった。ということは『シェンムー3』は彼らのプライオリティには入っていなかったということではないかと思います」

 さて、「キックスターター」のクラウドファンディングは200万ドルを突破し、最終的に約630万ドルを集めたが、気になるのは『シェンムー3』の発売時期である。

「2017年のクリスマスには販売する予定です。少しお待たせすることになりますが、制作側からすれば時間は足りません。今回の来日では、過去シリーズがあまり売れなかったはずの日本でも『シェンムー』はみんなが知っている作品だったと知り、驚いています。集英社で鳥嶋さん(鳥嶋和彦・専務取締役)にお会いした時も『シェンムー』の話になりました。急がなきゃ、と思っていますよ」

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