※本記事は株式会社出版デジタル機構「I Love ebook宣言」からの提供記事となります。著作権は提供各社に帰属します。
■神谷 明(声優、日本工学院専門学校 顧問)
1970年にデビュー。長いキャリアと、シリアスからギャグまでカバーする幅広い役どころで、声優界の第一人者となる。代表作にテレビアニメ「キン肉マン」、「北斗の拳」、「シティーハンター」。アメリカ産テレビドラマの吹替や、CM、バラエティ番組などでナレーションを手がけることも多い。現在は日本工学院専門学校 声優・俳優科で顧問・専任講師を務める。趣味は写真とドライブという69歳。
インターネットラジオ「神谷明 Hot Beat Party」http://saeba.jp/radio/
■抵抗があった電子書籍だけど……
僕は「家電芸人」という人たちが現れるずっと前から「家電声優」というか、ガジェット好きなんです。Macintoshはハードディスクが210メガバイト!だったIIciから使っていまして、iTunesで売っているオーディオブックの朗読などの仕事を通じて、電子書籍の存在はよく知っていました。
でも電子書籍って、最初はとっつきにくかったんです。ずっとKindleのタブレットを買わないといけないと思い込んでいたりして。でもMacにKindleのアプリを入れられると知って、電子書籍を買ってみたら、一発! Amazonでものを買う感覚より簡単に買えました。文字も結構読みやすいじゃないかと感激しましたね。
それからはもう手放せなくなりました。普段はKindleアプリをiPadに入れて読んでいます。ハードカバーの本を何冊もカバンに入れて移動するというのは実際には不可能ですよね、重すぎます。でも電子書籍なら、何冊でも持ち運べます。画面は明るいし、文字も大きくなる。ページをめくるのも簡単で、しおりもつけられる。ツールバーから一気にページをめくることもできますしね。電子書籍の悪いところなんて、思いつきません。
■ものを増やすことなく、読書の習慣がつく
少し前に、タレントのピーターさんが「老活(ろうかつ)」といって、自宅のものをあれこれ処分するテレビ番組をやっていました。衣装やトランク、カバン、ぬいぐるみまで、かなりのものを処分していました。それを見ていて、大変にいさぎよさを感じたんですね。すごく参考になって、僕もいろいろなものを処分することにしたんです。
最近は友達と会って話をするのは、そんな話題が多いです。「終活(しゅうかつ)」ですね。そう遠くない昔に、私たち世代は親のものを処分しているので、それがいかに大変だったかを経験しているんです。それを子どもにさせたくないなという思いがあります。
僕は気がつくとものが増えてるタイプなんですが、電子書籍は本棚を部屋に置かなくてもいいところが魅力ですね。ものを増やすのには抵抗がありますが、電子書籍だったら気にせず買うことができます。
しかも、一度端末から取り除いても、ちゃんと購入履歴が残っていて、またダウンロードして読み直せる。これは想像以上に嬉しいことです。
どんな本でも、それが例えばマンガでも、一度読んだだけでは中身をきちんと理解できません。2~3回繰り返して読むと、1回目には見えなかったものが見えてきます。でも書架に置きっぱなしだと、手に取ることすら面倒くさくなってしまいますよね。電子書籍では、タブレットのメニューに行くと、買った本がずらりと並んでいるので、より習慣的な読書ができるようになりますね。
■いずれタブレットが教科書になる
僕は今、学校で生徒に朗読や演技の指導をしています。表現をする人は、とにかく本を読まなければいけないと思います。「声に出して読む」という意味ではありません。僕たちにとっていちばん大事なのは、知識や積み重ねといった、人間的な深みとなる経験です。経験が多くなれば、自分の世界が広がっていく。そうなれば、表現する幅も増えるということです。観劇や映画鑑賞と同じように、読書もまた私たちが表現をする際に大きな助けになります。
朗読の教科書としては、「だだっこ」的な感情の起伏の激しいキャラクターが登場するものなど、普段の生活ではあまり自分が表現することのない作品を探しています。紙の書店は、ある程度中身を見てから買えますから、教科書として授業で使う本を探すのは、今のところ紙の書店が多いです。電子書籍は立ち読みできても冒頭だけの場合が多いですからね。もちろん全部を読めなくてもいいのですが、映画の予告みたいに、面白いところをかいつまんで見せてくれる「盛り上がりお試し版」みたいなものができるといいなあと思います。
あと、いずれ電子版で買った書籍を、教科書用にテキストデータだけ引用できるようになったら便利ですね。教科書がタブレットになる時代はもうすぐ来ると思っています。
声優としてはオーディオブックにも興味がありますね。NHKラジオで、1957年から2008年まで50年間にわたり放送されたラジオドラマ番組『日曜名作座』で、森繁久彌さんと加藤道子さんが読んでいた名作は良かった。僕もいつか、名作をちゃんと読みたいと思っています。
(取材・文/和久井香菜子)
(写真/鈴木智哉)
神谷 明さんの<I Love ebook宣言>
「物が増えない。「老活」・「終活」を考える僕らの世代にこそ、電子書籍はぴったり。光量と文字サイズが調整できるのも良い。僕は「夕刊フジ」もタブレットで読んでいます」。
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■神谷さんのオススメ電子書籍
【1】流星ワゴン
重松清(著)(講談社)
[神谷さん推薦文]
重松清さんの本は、ハードカバーの新刊を買うくらいずっと読んでいます。でも『流星ワゴン』はあまりにみんなが面白い面白いとわあわあ言うので、手を出せずにいたのですが、ドラマをちらっと見たら面白そうだったので、電子版を買ってみました。ドラマとの違いを見比べながら読むのが面白くて、何度も読み返しています。
[作品内容]
38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親に出逢った――。僕らは、友達になれるだろうか?
【2】島倉千代子という人生
田勢康弘(著)(新潮社)
[神谷さん推薦文]
彼女の生き方そのものを描いた本です。著者が晩年の島倉さんに密着して取材し、僕らが表面上では知り得なかったエピソードをふんだんに書いています。彼女がなぜ歌手になったのか、美空ひばりさんと比較されることの苦悩と、自分の道の見つけ方など、報道や噂とはまったく違う島倉さんの内面が描かれていて、彼女が生きているうちに読みたかったですね。
[作品内容]
可憐な少女歌手は、日本の戦後史と寄り添うように、波乱の人生を生きてきた…。数々の大ヒット曲とともに、緻密な取材と長時間インタビューで、その知られざる素顔に迫った本格ノンフィクション。
【3】津軽
太宰治(著)(グーテンベルク21)
[神谷さん推薦文]
Kindle版が無料だったので、ダウンロードして読み返しました。『津軽』は、自分の生まれ故郷に行って、自分を育ててくれた女性に会いに行くという内容です。僕が研究生の頃『舌切り雀』をやったときに、雀のお宿に行ったおじいさんが、やかましい奥さんから離れて心の平安を得て、「そこにその人といるだけでよかった」いう場面があるのですが、『津軽』にも同じような表現があって感動した記憶があります。
[作品内容]
こな雪、つぶ雪、わた雪、みず雪、かた雪、ざらめ雪、こおり雪……故郷津軽を思う太宰治
【4】ドロンちび丸 第1巻
杉浦茂(著)(elefrog)
[神谷さん推薦文]
僕が小学生の頃から読んでいた漫画です。大手無茶の助とか、コロッケ五円の助とか、くだらない登場人物が出てきて、破天荒で面白いんです。1巻が無料だったので、思わず買ってしまいました。自分の机の引き出しから、宝物を見つけたような気持ちになりました。
[作品内容]
手塚治虫をして「到底まねできない」と言わしめ、赤塚不二夫をはじめ多くの漫画家に影響を与えた伝説の漫画家、杉浦茂の全集がついに電子書籍化。
【5】CAPA
CAPA編集部(編)(学研)
[神谷さん推薦文]
カメラが好きなので、写真雑誌はよく買います。プロの撮ったものから読者の投稿写真まで、たくさんいい写真が掲載されているのがいいですね。写真は、撮ることでも上手くなりますが、上手い人の作品を見るのも上達のコツです。写真雑誌は分厚いのですが、電子版なら気軽に手元に置いておけます。
[作品内容]
デジタル一眼カメラや交換レンズ、周辺機材の最新情報が満載。豊富な作例とわかりやすいハード記事で、多くの一眼カメラファンの支持を集める。撮影テクニック記事やプロ写真家の作品紹介、充実したフォトコンテスト記事も人気。
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