鎌倉に住む4姉妹の複雑な家族関係を描いた『海街diary』。家族の葛藤を描かせたら右に出る者はいない少女マンガ界の巨匠・吉田秋生による最新作です。その映画版が公開されましたね。予告を見て「三女・千佳の髪型がアフロじゃない……!」というだけで、原作ファンからは非難を浴びてます。『海街diary』は、それほど原作に思い入れのある人が多い作品です。それでは、果たして、原作ファンは映画を楽しむことができるのでしょうか……?
というわけで行ってきました。はい、まあ、普通に見たらムリゲーです。もう原作は何度読んだかわからないので、「あ、このセリフがない」とか「ここが違う」とか、いちいち引っかかります。5巻分をひとつの映画に凝縮しているので、「えっ、このセリフ、この人が言うの?」みたいな登場人物の割愛ッぷりも目について、どうにも原作以上に深みのある作品になっているとは思えないのです。
と言っちゃうと、「たいていの作品は映画よりも原作のほうがいい」法則のままでした、ちゃんちゃんなので、ここはあえて、「原作ファンが映画を楽しむコツ」を考えてみましょう。
1.登場する男キャラのダメッぷりを観察する
登場する男どもがどいつもこいつもびっくりするほどダメ男なのが、この映画の光るところです。
まず次女・佳乃の彼氏・朋章。映画では名前すら出てこない脇役になってますが、そんな少ない登場にも関わらずクソっぷりを発揮してくれます。一晩過ごした後に佳乃から小遣いをもらい、そしていきなり電話で別れ話。えっ? 佳乃のヒモですか、朋章。この世で女が最も関わりたくない系に成り下がってました。朋章よ、お前の人生辛いのはわかるけど、帰ってこい。
長女・幸が付き合ってる医者もそうとうです。養ってもいない女にご飯作らせて片付けさせて、まったくなんとも思わない昭和男でした。飯だけ食ってデートはキャンセル。お前何様だ。佳乃の上司も、一緒にお茶してるのに、自分が思い立ったらさっさと佳乃を置いて去っていきます。こういうマイペース男と付き合うのはけっこう大変そうです。
おそらくこの映画は、「男がダメだから姉妹で楽しく暮らすの」っていう話なんだと思います。登場する男たちがあまりに魅力がないので、家族を捨てて女(すずの母)と駆け落ちしたという諸悪の根源・姉妹の父親がダメな感じはあまりしません。
2.原作を知らない人と一緒に行く
けっこうセリフがはしょられてるので、映画だけを見た人がどこまで理解できるのかが気になります。とくに、すずに「あなたは宝物よ」いうシーンがあるんですが、原作を知ってるとかなり謎な展開でした。原作では、台詞の前にさまざまな事情があるからこそ感動で読めば嗚咽のシーンですが、映画ではかなり突飛なので、「? いきなり何言ってんの、おばさん?」という気持ちでいっぱいでした。原作を知らない人が、こうしたさまざまなシーンに感動するのか確認してみましょう。
3.「アレ」の数を数える
長女・幸がセリフで「アレする」とか「アレなの」とか連発します。「年寄りは、アレコレソレで会話する」ということで、幸の年齢が高いことの暗喩かなと思いました。が、幸に限らず、いろんな人がアレアレ言うので、全部で何回言うか数えてみましょう。細かいことが気にならなくなると思います。
4.ポッキー四姉妹とどう違うのか考える
ポッキー四姉妹とは、ポッキーのCMに登場していた架空のキャラです。1990年代バージョンは清水美沙、牧瀬里穂、中江有里、今村雅美で、恐ろしいことに映画化されてたみたいです。いったい誰か見たんだ。脚本、赤川次郎らしいけど。2004年バージョンは松浦亜弥、仲間由紀恵、石原さとみ、柴咲コウ。こちらは今見るとものすごいラインナップですね。
対する『海街diary』映画版は、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず。こちらは続編がありそうな匂いがプンプンします。ぜひ次の映画では、姉妹にポッキーを食べさせて広告を取ってはいかがでしょうか。
5.何を食うかでケンカする
映画は、やたら飯食ってるシーンが多いです。序盤、姉妹がシーンを変えては立て続けにもぐもぐやってたので、見てるほうはもはやお腹いっぱいでした。しかし、しらすやアジフライ、梅酒など、原作にも登場する食物がわらわら出てくるので、映画のあとで何を食べるか、一緒に行ったお友達(または彼氏・彼女)とケンカするがよいでしょう。
以上、原作をこよなく愛する読者の方々のために、映画版を楽しむ方法を検証いたしました。せめてもの慰めになれば。
(文/和久井香菜子)
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