“かめはめ波”や“空飛ぶホウキ”が現実に!? 「超人スポーツ」ってなんだ?

2015.06.25

 6月2日、名称を見て一瞬目を疑うような協会が設立された。その名も「超人スポーツ協会」。アメコミのヒーロー、超人ハルクのような現実離れした猛者が相争うスポーツなのか、それとも……? 実はこの“超人スポーツ”とはロボティクスやバーチャルリアリティー、スポーツ科学、人工知能などの研究の集大成となる人間の限界を超えた新しいスポーツの形なのだ。

■誰もが“超人”になって競うスポーツ

 ロボットや脳科学の研究者、義足エンジニア、ゲームデザイナー、アスリートなどのエキスパートが集まって結成された「超人スポーツ協会(Superhuman Sports Society、略称:S3)」――。

「我々のゴールは、強化外骨格や、超視覚、超聴覚といった超人的要素をウエアラブルなVR技術で装備し人間の能力を高めることにあります」とS3の役員であり、電気通信大学教授の野嶋琢也氏は「Motherboard」の記事の中で言及している。

 夢が広がる“超人スポーツ”だが、門外漢にはなかなか具体的な姿は想像し難い。『巨人の星』の星飛雄馬の大リーグボールや、『少林サッカー』のシュートシーンなど断片的なイメージしか湧いてこないが(!?)、実際の競技はいったいどんなものになるのか?

 同協会がリリースした公式動画「Superhuman Sports Society official movie」には、まさに映画『エイリアン2』でエイリアンと闘ったパワードスーツのようなマシンや、VRヘッドセットに映し出されるドローンからの映像、ヘッドセットを装着して泳ぐ水泳選手などが続々と登場している。

 動画の解説文には「個々人の身体的な能力の差など目立たなくなるくらい超人的な力を身につけることで、同じ超人 (Superhuman) 同士として一緒のフィールドで競い合う、人間と機械が融合した『人機一体』の新たなスポーツを創造します」とある。つまり実際の身体的能力には関係なく、みんなが“超人”の状態で競うスポーツということだろうか。その意味ではモータースポーツに似ていなくもないが、乗り物ではなく、あくまでも身体の運動機能を拡張する機器を装備するところがモータースポーツと超人スポーツの違うところだろうか。

■年齢や障がいや才能に関係なくスポーツを楽しむ

 動画の中には野球のピッチャーのように球を投げるシーンもあるが「このボールで誰でもアニメのヒーローのような“魔球”を投げることができます」と、S3事務局長の南澤孝太氏は「JapanTimes」の記事で話している。まさに夢の“大リーグボール”が現実のものとなるのだ。

 また南澤氏は『ドラゴンボール』の“かめはめ波”で争う競技や、『ハリー・ポッター』で描かれた魔法使いが空を飛ぶ箒に乗って行う架空の球技“クィディッチ”も開発中であると語っている。

 この“クィディッチ”競技は「テレイグジスタンス」という技術で可能になるといういうことだ。「テレイグジスタンス(Telexistence)」とは、例えばドローンからの映象や音声などの情報をVRヘッドセットなどを通じて自分の体験のように感知し、同時にまた自身の分身のようにしてドローンを操る技術のことで、遠隔臨場感や遠隔存在感などとも訳されている。

 今後さまざまな分野に応用されるテレイグジスタンス技術だが、S3ではこれをスポーツに幅広く応用することを目指しているという。「年齢や障がいや才能に関係なく、スポーツを誰でも楽しめるものにしたい」と南澤氏は語る。

 S3の活動はまだはじまったばかりだが、この10月に最初のイベントを予定しており、将来的には2020年の東京五輪&パラリンピックにあわせて国際大会を開くことを目標に掲げている。技術開発の進捗如何では一部の競技種目では障がい者と健常者が同一条件のもとで競うこともじゅうぶんに考えられそうだ。2020年を目指した“未来のスポーツ”が一体どんなものになるのか注目が集まる。
(文/仲田しんじ)

【参考】
・Motherboard
http://motherboard.vice.com/read/superhuman-sports-the-japanese-society-turning-athletics-into-a-video-game

・The Japan Times
http://www.japantimes.co.jp/news/2015/06/03/business/tech/superhuman-sports-society-aims-bring-harry-potters-quidditch-dragon-ball-life/

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