現役サブマリーナが語る『艦これ』【後編】

『艦隊これくしょん-艦これ-』 「ボイラー工場で造られた○ゆの切なさも表現」潜水艦娘たちに課せられた運命に想いを馳せる

150524_kankore.jpg『艦これ』DMMオンラインゲーム公式ページより

 現役サブマリーナに聞く『艦隊これくしょん-艦これ-』(以下、『艦これ』)、後編は「◯ゆ」「大鯨」「U511」「呂500」について話を聞いてみた。

■世界で唯一!陸軍が作った潜水艦「◯ゆ」

–「◯ゆ(まるゆ)」の描写は、本体の特徴をどう捉えていると思いますか?

A 南洋諸島への物資輸送のため、帝国陸軍が苦肉の策として建造した◯ゆ。“本物”の潜水艦とは違うというのは、海女さん姿からも一目瞭然ですね。輸送用コンテナの運貨筒を引っ張っているけど、◯ゆは使わなかったとか。

–「◯ゆ」をサブマリーナの視点で見ると?

A 造船所ではなくボイラー工場で造られたまるゆちゃん……。貧乳と幸の薄い表情が、すべてを物語っているんじゃないでしょうか。しかし、まるゆちゃんは、警備船に衝突されたり、潜りすぎて海底に衝突しながらも生き延びてますからね。いや、なかなかすごい艦ですよ。

【◯ゆ】
◯ゆは、ガダルカナル島の戦いで日本輸送船団が壊滅的打撃を受け、帝国海軍の護衛艦による「鼠輸送」でも補給が不十分だったため、陸軍が独自に「もぐら輸送」(潜水艦による輸送)を行うべく開発した潜水艇。造船所が使えなかったため、ボイラー工場などで建造され、公開実験では停泊したまま潜航したため、見学していた海軍軍人が“沈没した”と誤解したとも言われている。終戦までに38隻が建造され、遠くはフィリピンへの輸送任務に従事した。終戦後、生き残った艦はアメリカ軍の手により海没処分に。

■潜水艦乗員からの人気者「大鯨」

–「大鯨(たいげい)」の描写は、本体の特徴をどう捉えていると思いますか?

A 両腕で寄せている胸は、潜水艦に補給する燃料と真水を象徴しているはず! 肩にかけている袋と手に持つ飯缶(バッカン)に入った魚雷と生糧品は、潜水艦乗員が喉から手が出るほどに浴している補給品です。大鯨ちゃんの微笑みと数々の補給品は、大洋を孤独に行動する潜水艦の乗員を癒したに違いありません(笑)。

–「大鯨」をサブマリーナの視点で見ると?

A 海自にも潜水艦救難艦という潜水母艦みたいな船はありますが、こっちは沈んだ潜水艦からの乗員の救出が主任務。潜水艦って、水上艦と違って1隻で行動するし、敵に見つからないことが基本だから孤独なんですよ。海自にも大鯨みたいな癒しの存在があればいいのになぁ、と思います。僕も大鯨ちゃんから燃料補給してもらいたです(笑)。

【大鯨】
ロンドン海軍軍縮条約で空母保有数を制限されていた帝国海軍は、戦時に短期間で空母に改装できる艦艇を造ることで、条約の制限を乗り越えようと考えた。このような中で、将来的に空母に改装できる前提で建造されたのが「大鯨」だった。空母と同じ巨大な船体に、充実した補給・整備・休養の設備を持つ本艦は潜水艦乗員に大人気で、空母改装の際に潜水艦部隊から引き抜かれた際は、乗員たちから非常に残念がられたと言われている。空母改装後は艦名を「龍鳳」と改名し、輸送任務などに従事したのち、呉軍港で浮き砲台となった。本艦の最期は、終戦後に解体処分。

■ドイツ生まれの舶来娘「U511」

–「U511」の描写は、本体の特徴をどう捉えていると思いますか?

A ユーちゃんの青白い肌は、大西洋を荒らしまわった「Uボート」の外舷色である白灰色。濃灰色の軍服がドイツ海軍らしいですよね。右手に持つ防潜網カッターは、防潜網が張り巡らされたキール軍港から遠く日本を目指す意気込みでしょうか。

–「U511」をサブマリーナの視点で見ると?

A 洋モノは苦手なんですが……。ドイツ海軍といえば「Uボート」と言われるぐらい有名なドイツ海軍の潜水艦。ユーちゃんは潜水艦というより、戦車兵に見えなくないですが、その悲しげな表情は、大西洋で商船を沈めまくった通商破壊戦をやってきたからなんでしょうね。

【U511】
インド洋でのイギリスとインドとの通商破壊を考えていたドイツは、インド洋にまで勢力を伸ばしていた帝国海軍に通商破壊作戦を依頼し、通商破壊用のモデル潜水艦として、本艦を日本に無償供与した。その後、45年8月に3カ月かけて日本に到着した本艦は、呂500と艦名を改め、帝国海軍の潜水艦となった。

■海狼から陽気な海亀に変身「呂500」

–「呂500」の描写は、本体の特徴をどう捉えていると思いますか?

A 「U511」と「呂500」は、その実、まったく同じ艦ですが、あまりの変化っぷりに、そうだと気づかれないこともあるんですよね。こんがり日焼けした肌は、大西洋にあわせた白灰色から太平洋にあわせた濃灰色に化粧直したんでしょう。いかにも“呂”という見た目は、ギリギリでしょ(笑)。

–「呂500」をサブマリーナの視点で見ると?

A ドイツから大西洋、インド洋を経て日本に到着した本艦は、一度も実戦に参加することなく、ずっと日本海の舞鶴軍港にいたんです。この水中抵抗を極限まで排した貧乳の船体から、メッサーシュミットなみに運動性が良かったと想像できます。はるばる日本まで来たのに実力を発揮できず、不本意だったでしょうね。

【呂500】
ドイツから提供されたU511潜水艦は、45年9月、帝国海軍に編入され、呂500と命名された。帝国海軍は本艦をコピーマスターとして受領したが、当時の帝国海軍にはなかった電気溶接技術などが使われていたため、複製不可能と判断され、終戦まで対潜部隊の標的艦として使われることとなる。本艦の最期は、戦後、アメリカ軍の手により海没処分。

 現役サブマリーナAさんの潜水艦娘たちへの深い愛は、いかがだっただろうか? 英語ではShe(彼女)と呼ばれる軍艦たち。潜水艦娘以外の艦娘たちにも、それぞれ過酷な人生があったのだろう。艦娘のデザインや台詞などに、彼女たちの人生がどのように反映されているのか。戦後70周年を迎える今年、そういった視点を持ってゲームをしてみるのも、いいんじゃないだろうか。
(取材・文=山野一十)

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