「伯爵が誘うBL短歌の世界」第2回

死者を悼む歌「挽歌」を詠む……生きる、季節を感じる短歌の話

2015.06.06

BL短歌同人誌「共有結晶vol.2」より

 みなさん、大変ご無沙汰です。紙媒体と違ってウェブ媒体って発行日が決まっていないもんで、「連載」といいつつ不定期になってしまって申し訳ないです。

 実は3月から、大正末に建てられたそれはそれは素敵なレトロビルヂングにてアートサロンを始めたんですが、その途端に溺愛していた愛猫ぬばたまに急逝されてしまい、涙涙の日々になってしまいました。涙ってなかなか枯渇しませんねぇ。文字通り「泣き腫らし」てしまって、二重瞼が一重になり、一時はなんだか遮光器土偶みたいな目になってました。

 亡くなった次の日も、バイトに出勤する僕の恋人の周を見送って、茶の間に戻ってぬばちゃんの遺骨にちょっと話しかけた途端、号泣してしまいました。そうしたら廊下からにゃあにゃあと、ぬばたまのひとり娘のシャルボンが呼ぶんです。パパを喪って自分も悲しくてたまらないだろうに、じゃれて慰めてくれるんですよね。ごろごろ喉鳴らして。もう可愛くてたまりませんわ。

 シャルボンをなでながら、でも「ぬばちゃ~ん」と声に出してしまったら、「にゃあ」と鳴いて「私がいるでしょ」という風に僕を見つめてくるんです……。ぬばちゃんの忘れ形見、本当にいとおしいです。

 そのあと書斎から茶の間に手帖を取りに行って、ぬばちゃんの遺骨を見た途端にまた号泣。泣き止んで廊下に出たら、目の前を横切るシャルボンを一瞬ぬばちゃんに見違えてしまって、またまた号泣……。今度もシャルボン、ごろごろ喉を鳴らして、一生懸命すりすりしてくれました。

 ぬばちゃんの姉さん女房である愛想の悪いハナちゃんも、最近は「好きなだけなでなさい」という感じでなでさせてくれます。夫というより、可愛い可愛い弟分だったぬばちゃんを亡くしたハナちゃんも、健気に耐えて、飼い主を励ましてくれてるんです。

 それから2カ月半ほどが経ちました。ぬばちゃんは滅多に爪を立てないおとなしい子だったんですけど、たまに失敗するんですよね。その引っ掻き傷も、すっかり薄れてしまいました。毎日話しかけてますが、でも泣くことは少なくなりました。ぬばちゃんの猫生は長くはなかったけど、うちの子でいて、きっと幸せいっぱいだったんだと思います。本当に沢山のいい思い出を残してくれました。周、そしてハナちゃんとシャルボンと、前を向いて生きていこうと思います。

春來るとともに逝きたり遺骨抱き戻れば庭に水仙の咲く
もう返事なきと知れどもぬばぬばとその名呼びつつ涙流せり
ぬばたまよ吾が黑猫よ不機嫌な君を見ることなきままに逝く
廻廊の庭に淡雪降れる午後亡き黑猫の名を呼びてみる
空蝉(うつせみ)は去年(こぞ)のものなり晴れ渡る五月の空にニコライの鐘

 死者を悼む歌を「挽歌」といいます。ぬばちゃんの歌、今まで本当にたくさん詠みましたが、挽歌は詠みたくなかったです。これからは、楽しい思い出も詠んでいくつもりです。

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