『低反発リビドー』 世界は、変態と変態と変態によって出来ている!

 変態ではなく、ちょっと嗜好が変わっているだけである。この嗜好が変態だというのならば……世界は変態と変態と変態によって出来ている。そんな詩的な気分にさせてくれるのが、高野雀のマンガ『低反発リビドー』(徳間書店)だ。

 この作品は、あるアパートを舞台に各話を「○号室」と表記して描かれる全30話の連作。各話4ページ+4コマ1本の形式を基本として、各部屋の住人たちの性嗜好にまつわる物語が描かれていく。

 読者にとっては、その性嗜好の存在を知っていれば“あるある”になる。そうでなければ「うわ~」と、とんでもないものを見てしまって落ち込むか、あるいは「こんなのもあるのか!」と新しい世界に目覚めることができるだろう。クソサブカルにありがちな視点で「なんだ、この変態野郎」と冷笑しては楽しめない作品だ。

 全30話の作品だが、性嗜好は多種多様。第1話では「鎖骨にぐっとくる」嗜好のために、罪悪感なしに後輩の彼氏と寝ちゃう女子が描かれる。このままライトな変態テイストで各話進んでいくのかと思いきや、そんなことはない。

 女子の処理をしていない毛が好きすぎて「もう、一年も付き合ったんだし……」と、自分の嗜好を打ち明けたら、彼女が永久脱毛していて落ち込む男。高校生と付き合っている大学4年の女子は、年下好きかと思いきや「詰襟好き」という嗜好なのである。

 妊活に励む夫婦の物語では、“何かが足りない”ので子作りに励めないと悩んでいた夫は、妻の「正直こんな射精管理みたいなことされてもね」という一言で目覚める! その瞬間に自分が「射精管理」という言葉に興奮することに、気づいてしまったのだ!!

 はたまた、彼氏にゴスロリを着てほしいと頼まれて「こんなのよゆうだよ~」と笑顔な女子が登場。ところが……彼氏の嗜好は「お揃いでかわいい服着て美しく愛し合いたいだけ」というもの。でも彼女のほうも「難易度高いわ」とは言うものの、ドン引きじゃないのが、なんだかほのぼのしていて、とてもよい。いや、羨ましいのである。

 そう、ここで描かれる物語は、どれも「羨ましい」の一言に尽きる! なぜなら、突然開陳される性嗜好を聞かされた相手は、悪くても一瞬引くくらい。多くの話では納得してくれているからである。特にカップルが登場する作品では、相手の性嗜好をできる限り理解しようとする話ばかりなのだ。

 だいたい自分の性嗜好が「変態」だと思っている人は、趣味を理解してくれる相手に巡り会うのに苦悩をしているものである。羨ましすぎるわ、この世界!
(文/ビーラー・ホラ)

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