『ヴィランズテイル 有坂有哉と食べられたがりの白咲初姫』ある日、美少女が「私を食べて」とやってきたら……

『ヴィランズテイル 有坂有哉と食べられたがりの白咲初姫』ある日、美少女が「私を食べて」とやってきたら……の画像1ヴィランズテイル 有坂有哉と食べられたがりの白咲初姫』(著:綾里けいし イラスト:リラル/KADOKAWA エンターブレイン)

『“B.A.D.”Beyond Another Darkness』が昨年完結した、綾里けいしさんの新刊ライトノベル『ヴィランズテイル 有坂有哉と食べられたがりの白咲初姫』(共にKADOKAWA エンターブレイン)。

 いきなりオビに「私を、食べて欲しいんです」と書いてあります! “リョナ”も大好きな筆者ですが、“食人”はレベルが高すぎます……。でも、大好きなので即購入しました。

 秋葉原の某書店で買ったんですが、平積みが大分減っていて……。みんな、綾里けいしさんの新刊だから買ってるんですよね? オビを見て購入しているのだとしたら、日本の行く末が心配です。リョナニーは、ニッチだから楽しいんです。

 さて、物語は主人公・有坂有哉の自宅に「食糧」と記された宅配便が届いたところから始まります。その中に入っていたのは、学園の淑女と名高い同級生の白咲初姫でした。彼女が有哉に「私を、食べて欲しいんです」と告げたことから、物語は始まります。
 
 ここから、初姫が語る“自分を食べてもらいたい理由”では陰惨な描写が続きます。ことの始まりは、初姫の姉・夏子が同級生の男子に殺害された挙げ句、一部を切り取られた腐乱死体で発見されたこと。すでに犯人は捕まっていますが、初姫は真犯人は別にいると確信しています。なぜなら、捕まっている同級生である犯人、その彼に初姫自身が「食べられたいとは思わない」からです。

 ……ヒロインの語る異常な論理にグイグイと引き込まれていきます。初姫は、姉の殺害犯とは別に、姉の肉を奪った犯人がいるのではないか? と考え、そして彼女は、姉を食べた人物が有哉であると確信したと言います。なぜ彼女は、姉を食べた人間に食べられるようとするのか? 弱肉強食の中で、“弱者”である初姫は“強者”である姉・夏子に食べられるべきで、それを人生の夢にしてきたこと。そして、夏子が第三者に食べられたのであれば、自分もその第三者に食べられなければならない、と。

 今までハードタッチなものからおバカな作品まで、さまざまなラノベを読んできましたが、このヒロイン、いろんな意味で危険すぎます。相当危険な思考のヒロインです。イタいところがカワイイ、とかじゃなくて、一刻も早くお引き取り願いたい。それでも初姫は、自分を食べたくなるまで有哉の家に住み着くことを宣言します。

 そして、自分が夏子を食べていないことだけは確信できる有哉は、同じ家に住む一人の兄と二人の妹、兄妹それぞれの部屋の冷蔵庫を探ることに。そして、それぞれの冷蔵庫の中には、血のついたシャツと手首、肝臓などが入っていたのでした……。

 そう、この作品はミステリーだったのです! 2章からは、「有坂家」という文字に「モンスターファミリー」なんてルビがふられ、読者をさらなる混乱へと誘います。

 実はネタバレしたいことも山のようにあるのですが、ここでは避けておきます。でも、やっぱり驚くのは、本作が新シリーズで、今後も続刊の予定だということ。ひとまず、ミステリーならではの後味の悪さも残しながら終わるので、そこだけは救われた思いです。
(文/大居 候)

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