プロパガンダアートを楽しむ“聖地巡礼”? ベトナム・ホーチミンでベトコンの凄さを知る

150602_vietnam_art_1.jpgベトナム・ホーチミン、街中のプロパガンダアート

 一筋縄にいかない「聖地巡礼」を続ける本サイトの執筆陣。今回は、国境を突破してベトナムまで行ってきたので報告する。

 日本でも、ベトナムが登場するさまざまな創作に触れる機会は多いもの。中でも不謹慎か否かは別にして、最も触れる機会が多いのはベトナム戦争を題材にしたものではなかろうか。「ベトナムでならした俺たち特攻部隊は……」という『特攻野郎Aチーム』のオープニングなんて30代以上で知らない人はいないはずだ。

 そして今回、取材班が目指したのは、やっぱりベトナム戦争の聖地「クチトンネル」。ベトナム観光のメッカ・ホーチミンの近郊にある戦争遺跡である。ここは、南ベトナム民族解放戦線(べトコン)が拠点としていた、地下の大要塞が、そのまま遺跡として保存されている場所である。

 今回は、日本語ガイド付きのツアーに予約しての訪問。「クチトンネル」で検索すれば、日本語ツアーの案内がいくつも表示されるので、訪問はごく簡単だ。

 当日、迎えに来たタクシーが途中でオートバイに乗ったおじさんと衝突するも倒れたおじさんを起こしたら、そのまま出発――という「この国は大丈夫か……」と思う光景をいきなり見せられつつも、無事に集合場所からバスに乗車。フランクな日本語による簡単な説明のあとは、1時間半ほどバスに揺られて、現地に到着したのである。

150602_vietnam_tunnel.jpgクチトンネル内部

 まず見学の最初は、映像鑑賞から。ベトナム戦争当時に作られたとおぼしきプロパガンダ映画の鑑賞から始まる。ベトナム人による日本語のナレーションで語られるのは、アメリカの侵略に対して、この地に籠もった解放戦線は、いかに勇敢に戦ったかというもの。

 ゲリラ戦の基地となった「クチトンネル」は、全長250キロ。集落をつなぐ形で縦横無尽に伸びたトンネルは3階建てになっていた。一部はサイゴン川へも繋がっていて都市との連絡も可能だったという。ここで解放戦線の兵士たちは、昼間はトンネルに潜んで米軍に攻撃を加え、日が暮れると農作業をする日々を送っていたそうだ。

 現在、当時のままで公開されているトンネルに潜ることもできる。案内人のレクチャーを受けてさっそく潜ってみたが……暗い! 狭い! なによりも熱い。5月初頭のベトナムはすでに日本の真夏である。とても耐えきれる場所ではない。当時のままのものとは別に、観光用に10メートル程度「少し広げてある」トンネルもあるのだが、それですら2メートルも進めば苦痛。毎日、こんなところに籠もって米軍と戦い続けることができるなんて……アメリカ帝国主義に勝利するには、並大抵の根性じゃできないことが一瞬で体感できる。

 おまけに案内人からは「林のほうは地雷が残っているので歩かないでね」と、ホントかウソかわからぬ注意が。もはや戦争が遠いものになってしまった日本との感覚が違うことを実感させてくれる。施設内では、このトンネルをメインとして、ベトナム戦争を扱う映画の定番である落とし穴の復元模型も見せてくれる。そして、体験ということで当時の主食だったタピオカを食べることもできるのだ。タピオカといってもジュースに入ってる黒い玉ではなく、その原料の芋のほう。毎日、こんなもの食べて戦えるなんて……ベトナムすげえよ! としか思えない。

150602_vietnam_tapioka.jpgタピオカの原料となる芋・キャッサバ

 さて、ツアーでは別料金で実銃を撃つこともできる。早速体験しようとお金を払うと、案内されて「順番までここで待ってて」と楽しそうにM16を撃っている白人カップルの後ろに……薬莢がコツンコツンと筆者めがけて飛んできた。危険じゃないけど、えらくアバウトな国であります。

 アバウトなのは、発展途上だからか国民性なのか? ホーチミンの市街には、社会主義国のはずなのにブランドショップが並び、アメリカと日本、韓国の資本が入った店が並びまくっているのである。そんなカオスな街角で目を引くのは、プロパガンダアートの数々だ。訪問したのがサイゴン解放40周年の直後だったこともあってか、街の中にはやる気まんまんのプロパガンダアートが満載。でも、ブランドショップの横に「社会主義すごいよ!」的なアートが掲示されているのは、やっぱりカオス。う~む、この「来る者は拒まず」的な姿勢こそ、アメリカに勝利することができた秘訣なのか?

 ベトナム戦争の聖地巡礼のはずが、カオスな社会主義を体験しまくれた今回の取材。日本からはわずか6時間の国だけに、ぜひ訪問して体験してほしいものだ。ただし、交通ルールは皆無。道路の横断はガチで命がけなので気をつけてくれ!
(取材・文/昼間 たかし)

【次ページはプロパガンダアート特集】

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