エロ本は軽減税率適用から除外? 日本雑誌協会・日本書籍出版協会と出版倫理懇話会の意見交換会が初開催

2015.05.27

5月22日、日本雑誌協会・日本書籍出版協会と出版倫理懇話会の意見交換会が開催された。

 5月22日、神楽坂の日本書籍出版協会会議室で、出版物の軽減税率の適用範囲をめぐる日本雑誌協会・日本書籍出版協会と出版倫理懇話会の意見交換会が、初めて開催された。来年にも予定されている消費税10%への増税に際し、“文化”である出版物に軽減税率を適用するよう求めている。この軽減税率をめぐってはアダルトを除外すべきという意見もあり、議論となっている。

 この日の意見交換会は、日本雑誌協会・日本書籍出版協会などの関係者と出版倫理懇話会会員社以外には非公開で実施。筆者はそしらぬ顔で会場に入り座ってみたが、すぐに見つかり「厳しいですね……」と言われて、そそくさと退場。

 後ほど話を聞いた出版倫理懇話会に所属する、ある出版社の担当者は、次のように証言する。

「冒頭で4月に『出版文化に軽減税率適用を求める有識者会議』の発表した提言についての説明がありました。その上で、軽減税率を実施している諸外国の状況についての説明がありました。基本的にはすべての出版物について軽減税率の適用を求めていきたいとはいうのですが、『政治家の中には、18禁マークや小口止め(雑誌)はどうなのか』という意見もあるというのです。懇話会側としては、大手はアダルト誌を除外することで軽減税率適用を呑んでもらおうとしているのではないかと感じました」

 政府関係筋によれば、与党税制協議会では軽減税率を導入した場合に、どのような物品を対象にするか、個別具体的な議論が行われているという。例えば食料品についても、牛肉や豚肉に軽減税率を適用した場合に加工品も対象にするのかなどの議論も行われているという。そうした中で、出版業界に対しても「軽減税率を適用してほしいなら、対象となる範囲を分類すべき」という圧力がかかっているようだ。要は、娯楽誌やアダルト誌までも含めて“文化”だという出版側の言い分は認めず、アダルト誌などは軽減税率の適用対象とはしない、という態度で迫っているのだ。

「アダルト誌を軽減税率の対象から除外するなんて、困るというよりは冗談じゃないという思いです。これまで成人向けマークの自主規制をしたり、シール止めなど経費をかけて青少年の健全育成のために協力してきたのに、とんでもないことですよ」(前出の懇話会会員社・出版社社員)

 現在、付加価値税を導入している国は多いが、ポルノや娯楽雑誌への対応はさまざまだ。ドイツでは標準税率19%に対して、書籍は一律7%に設定。フランスでは標準税率21%に対して書籍は5.5%だが、ポルノやバイオレンスを扱う内容の出版物は軽減税率の適用外としている。また、イタリアでは標準税率22%に対してポルノは25%と、実質“ポルノ税”とも呼べる制度になっている。

 各国の制度はさまざまだが、フランスの場合はセックスやバイオレンス表現を扱った書籍が軽減税率の対象となるかどうかは、出版社側の判断に委ねられている。ただし、軽減税率対象とした書籍が、出版後に司法省によって“青少年にとって有害な出版物”と指定された場合、一定期間の出版停止などの罰則もある。そのため、ポルノを扱う出版社は最初から通常税率でポルノ誌などを出版しているという。

 出版の中で“文化”と“娯楽”を切り分けるとしても、その線引きをどこに置くかは、さらなる議論を呼びそうだ。
(取材・文/昼間 たかし)

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