『日之丸街宣女子』をめぐる大論争は集英社にまで飛び火! 渦中のマンガ家・高遠るい/富田安紀子 両者の主張を聞いた

 批判者から上がった「在特会のお抱えマンガ家」「コアな活動家」という指摘にも、首を横に振る。

「私が最初にこうした問題に興味を持ったのは、北朝鮮による拉致問題だったんです。初めて参加したデモは『主権回復を目指す会』のデモで、その時は旗を持って歩いたのですが、今も参加スタイルはさほど変わっていません。賛同できる団体、賛同できるテーマにはカンパもしてきましたが、すべてに賛同しているわけではありません。

 在特会では桜井さん【編註:前会長の桜井誠氏】が会長だった頃は毎週のようにさまざまなテーマのデモがありましたけれど、『このテーマは賛同できない』と思うものもありましたよ。今回、作中に桜井さんをモデルにした人物を描くときには、連絡して許可を頂きましたけど……在特会の幹部の方とは、行動の現場でも会釈するかしないかくらいの関係です。ですから“在特会のお抱えマンガ家では、まったくないんですよ」

 高遠氏が『日之丸街宣女子』を読んでいないことを告げると、富田氏は嘆息するのだった。

「絶対に買っていないと思いました。でも、人を一人潰そうとするのならば、最低調べましょうよ」

 表紙に「vol.1」と記載されているように、『日之丸街宣女子』は一巻完結ではない。これからも、主人公・奏のさまざまな体験が描かれていく予定だという。

※※※※※※

 今回の騒動に接して考えたのは、個人の思想や言論を理由に民衆が虐殺を煽った事例は、すでに歴史上にあるということだ。顕著な例は、第二次大戦後のフランスだろう。連合軍によって“解放”されたパリで巻き起こったのは、対独協力者とされた知識人、ファシズム礼賛や反ユダヤ主義を記した作品を描いた作家たちに対する、権力者と民衆が一体となった迫害だ。シャルル・モーラスとリュシアン・ルバテは終身刑となり、ピエール・ドリュ=ラ=ロシェルは潜伏先で自殺した。母親を人質に取られたロベール・ブラジヤックは出頭して銃殺刑となった。ルイ=フェルディナン・セリーヌは亡命に成功して生きながらえたが、彼が反ユダヤ主義思想を綴った『虫けらどもをひねりつぶせ』は、いまだにフランスでは公刊されず、国書刊行会の日本語版全集でしか読むことのできないものになっている。

 あくまで遠い外国の過去の出来事であり、現代日本にそっくりそのまま当てはめることはできないだろう。

 なぜなら、戦後70年、状況はもっと深刻なのだ。無数の声なき声が、Twitterやブログなどで持論を展開している。でも、それは人と人との会話にはなっていない。高遠氏も富田氏も、Twitterでアットマークをつけて意見する人がいる程度で、メールを寄越す人など皆無だという。

 これは、すべて普通の人間がやっていることなのだ。そのことを見抜かなければ、人類に未来はない。
(取材・文/昼間 たかし)

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