5月15日に東京都内で開かれた環太平経済洋連携協定(TPP)の一般向け説明会で、政府がコミケ文化への影響について言及。オタクたちからは不安の声が上がっている。
おそらく新聞やテレビなどで一度は目にしたことだろう“TPP”。これは「環太平洋戦略的経済連携協定」の略称で、環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とし、加盟国間でのルール統一を図る経済連携協定だ。現在も関係国が条件の交渉などを進めている。世の中では推進派と反対派が意見を対立させているが、アニメやマンガの愛好者たちにとって差し迫った問題は「知的財産」の分野だろう。中でも「著作権侵害の非親告罪化」の項目は、オタク文化の死活問題といえる。
毎年開催されている同人イベント「コミックマーケット」では同人誌などの二次創作作品が多く“販売”されているが、現在、著作権侵害の処罰は親告罪であり、そのため二次創作の元となった作品の原作者の多くが黙認している状況。二次創作同人誌の“販売”は、今の法律的にはグレーゾーンなのだ。それがTPP協定で「著作権侵害の非親告罪化」が導入されてしまうと、原作者が黙認していようとしていなかろうと検察官が独自判断で起訴することが可能となる。そして、おそらくそうなったとしても原作者や版権元が二次創作サイドを助けることは考えにくい。
こうした動きを受け、コミックマーケット準備会は今年3月に「TPP協定交渉について」という声明を発表するなど、以前よりさまざまな方法で訴えかけをしてきた。そして、5月15日に政府が開いた一般向けのTPP説明会において、登壇した渋谷和久内閣審議官は、知的財産の分野で調整が難航していることに言及。あわせて、非親告罪化によるコミケ文化への影響を懸念事項として対応していることを明言したのだった。
この報道に対し、アニメやマンガの愛好者たちからは「コミケ潰れたら、絶対デモが起こる」「法が文化を滅ぼすかな」「なくなったら、楽しみが減るのは確か」「参加者と企業側がお互いにいいって言ってるなら、外野が口挟む問題じゃないような」など、TPPに対する懸念の声が多く上がることに。一方で、「本来の同人活動なら無料でネットに公開するだけでいい」「コミケは商業化し過ぎた」「同人でもなんでも他人の権利を守るべき」という意見や、「規制されたら著作権者がOK出してるジャンルに移るだけ」と冷静に受け止める声も。加えて、「政府の人間が公の場でコミケに言及するとは驚いた」と、今回の発言自体が驚きを持って迎えられた部分も大きかったようだ。
仮に「著作権侵害の非親告罪化」が導入された場合、影響を受けるのはコミケだけに限らず、動画サイトに投稿されているアニメやマンガの著作権物を無断使用している動画(いわゆるMADムービー)などにまで広がる可能性がある。今も秘密交渉が続いているTPPだが、交渉に当たっている政治家たちの手腕に期待したい。
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