今、出版界で怪獣がブーム? アニメ『シドニアの騎士』脚本家・村井さだゆきが提唱する「ご当地怪獣」とは?

 この4月、特撮番組の人気脚本家らが書き下ろした異色のオムニバス小説集『日本怪獣侵略伝~ご当時怪獣異聞集~』(洋泉社)が発売された。挿絵も豪華で、怪獣絵師として知られる開田裕治氏から、『ウルトラセブン』などの怪獣デザインでおなじみ池谷仙克氏まで参加している。

「ご当地怪獣」という怪獣フィギュアシリーズのキャラクターをモデルに書かれた本作は、『ウルトラマンティガ』の小中千昭、『ウルトラマンギンガS』の中野貴雄、『烈車戦隊トッキュウジャー』の会川昇、『電人ザボーガー』の井口昇。そしてなんと「ウルトラシリーズ」や「戦隊シリーズ」、「メタルヒーローシリーズ」で知られる特撮脚本界の最重鎮・上原正三がオリジナル怪獣の小説を書き下ろしているのだ。

 なぜいま怪獣なのか? そもそも「ご当地怪獣」とはなんなのか? 提案者の一人で、小説の執筆者にも名を連ねている村井さだゆきに伺った。氏は『夏目友人帳』『シドニアの騎士』など人気アニメのシリーズ構成、脚本家として知られるが、特撮番組も『ウルトラマンダイナ』『ウルトラマンネクサス』など多数手がける。

――そもそも「ご当地怪獣」とはなんですか?

村井さだゆき(以下、村井) 「ご当地怪獣」は“怪獣で日本を元気に”をコンセプトに、日本全国都道府県に怪獣を誕生させるプロジェクトです。僕が怪獣の設定を作り、造形の寒河江弘さんがデザインしていて、フィギュアほかいろんな展開が決まっています。

――村井さんのアニメのファンの層と、特撮のファン層は同じなんでしょうか?

村井 アニメと特撮を観る層は離れていってますね。若い子はCGで育っているから「特撮」という言葉自体になじみがなくなっているし、CGになる前の特撮を知っている世代はどんどんジャンルものを観なくなっています。

――今回手がけられたことは、それを埋める意味もあるのでしょうか。

村井 そんな大げさなものではないですけどね(笑)。僕が教えている映画美学校の卒業生にこの企画のブレインストーミングで参加してもらったんです。若い人は怪獣を作るってことの感覚がないんですよね。一番ズレを感じるのは、怪獣の名前をつけるときかな。彼らがつける名前が、どうやっても怪獣にならないんですよ(笑)。「○○ラ」とか「○○ドン」とか、怪獣の名前らしい基本があるじゃないですか。そういう勘が働かないみたいで。

――やはり若い世代には、怪獣の文法が浸透していないんですね。

村井 わからないんですよね。物語の構造は授業でも教えていたし、みんなわかってるんです。でも怪獣がこう出たら面白いよねとか、人間との関係でこうなったほうがいいよね、っていうようなことが、最初は戸惑う人もいましたね。

――今後どのように受け入れられてほしいと思いますか?

村井 基本にあるのは、子供たちに楽しんでほしいということと、地域に密着した怪獣を作ろうということです。その土地で育った人が、その怪獣を自慢できるといいなという願いをこめて作っているので、何世代にもわたっての架け橋になればいいなと思っています。

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『日本怪獣侵略伝』に先駆け、角川出版からも『怪獣文藝の逆襲』が発売された。その内容は怪獣小説はもちろん、2016年の『ゴジラ』の監督・樋口真嗣が昔書いた怪獣映画の企画書や、有栖川有栖の怪獣の夢の話まで多岐にわたる。今年頭に「SFマガジン」(早川書房)で円谷プロとのコラボレーション小説が掲載されたことも記憶に新しい。

 出版不況が続く中、突如起こった怪獣小説ラッシュはまだまだ続きそうである。

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