『ひとりじめマイヒーロー』ドラマCD化も決定した話題作! 心理描写の深いソフトBL

『ひとりじめマイヒーロー』(作:ありいめめこ/一迅社)は、エッチシーンの少ないBLながらも、心理描写が巧みな作品だ。人を好きになることがどんなに辛くて、どんなに幸せか──そして、男同士だとそれがそれだけ大変か、などもあますところなく描かれている。最新刊4巻が発売され、ドラマCD化も決定。前作『ひとりじめボーイフレンド』では、主人公の大柴健介と、無事恋人同士になった支倉麻也の物語が描かれたが、『ひとりじめマイヒーロー』では健介の兄・大柴康介と、健介の親友・勢多川正広の、新たなる物語を紡ぐ。

 本作は、ヤンキーから「パシプロ(パシリのプロ)」と呼ばれるほど、気が弱い勢多川正広と、正広の親友・健介の兄で、ヤンキーどもを軒並み叩きのめす“熊殺し”康介の恋愛ストーリーだ。「俺を舎弟にしてください!」と申し出た正広が、いかつい数学教師・康介の忠犬と化しているのが面白い。

 しかし、二人の恋路にはさまざまな障害がある。水商売で男癖が悪く、浪費家で部屋を片付けない、正広のダメな母親。康介と正広の関係を知った途端に「気持ち悪い」と言う友人など……。それに、教師と生徒という立場上、二人は会う機会は多くてもなかなかイチャつけない。そこで頼りになるのが、健介の恋人・支倉の存在だ。支倉は空気を読むのがうまく、康介と正広の関係にもいち早く気付く。実は、康介をけしかけたのも支倉だ。クールでツンツンな支倉だが、康介が自身の姉の友人ということもあってか、何かと裏から手を焼いてくれるのが頼もしい。

 恋愛とは、告白して付き合うまでのことではない。告白して両思いになってからのほうが大変なのだ。相手は何を考え、求めているのか、自分はどうすればもっと相手に好きになってもらえるのか──これはどんな恋愛でもそうだろう。その上BLであればこそ、周囲に相談もできずに悩み、年齢差があるからこそ素直になれず不毛な駆け引きをし、忠実であるからこそ相手の思いに応えたいと切に願う。しかし、康介と正広の場合は、それらがことごとく裏目に出てしまう。正広は康介が好きすぎて乙女思考になってしまうし、康介は立場上素直になれず、将来のことも考えると、このままでいいのかと周囲からも言われる始末。二人の間は一進一退だ。

 しかし、本作は決して暗くシリアスな物語ではない。キャラクターは多いのに、みんな明るく個性が際立っていてわかりやすいし、ホモップル(ホモカップル)にも優しい仲間がいる。ギャグパートは笑わせるし、ドタバタコメディの回も多くある、明快な作品だ。恋愛には深刻に向き合って泣かせ、笑って流せるところはあっさりと爆笑させる。そんなメリハリがある作品なので、心理描写の深いソフトBLのわりに前作『ひとりじめボーイフレンド』が今のところ全1巻(続編出版の可能性もアリ)、本作『ひとりじめマイヒーロー』も現在まで4巻と長く続いているのだろうと思う。まだまだ波瀾万丈な康介と正広だが、健介と支倉のように幸せになれることを祈りたい。いや、この二人ならきっとなれるはずだ。
(文/桜木尚矢)

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