「『クレヨンしんちゃん』の時の感覚を思い出そうとした」原 恵一が語る『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』

1505_haraint.jpg5月9日に公開された映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』原恵一監督。

 江戸風俗研究家にしてマンガ家であった杉浦日向子が描いたマンガ『百日紅』(筑摩書房)。葛飾北斎とその娘・お栄を中心に、江戸時代の文化、情緒、風情、特にその時代を生きる人々を、一歩引いた視線で描いた傑作だ。杉浦日向子作品を敬愛してやまないという、『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』『河童のクゥと夏休み』の原恵一監督が、『百日紅』を見事にアニメーション映画化。5月9日に全国公開された『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』に、原監督はどのような思いで臨んだのか、お伺いした。

※本文中には、『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』のネタバレが含まれています。予めご了承ください。

――どうして『百日紅』を映画化しようと考えられたんですか?

原 恵一(以下、) 『カラフル』を作った後、しばらく次の作品がなかなか決まらなかったんです。これにはちょっと僕も焦ってきて、営業活動をしようと思った。(アニメーション制作会社・)プロダクションI.G.の石川(光久)さんとはそれなりに古い付き合いだったので、最初にI.G.に行こうと思って、アポを取ったんですよ。会った時に手ぶらで行くのもなんだから、何か持っていこうと。それなら、自分が一番に作れるといいなと考えている作品にしようと思いました。それで杉浦(日向子)さんの別の作品を持って行きました。そうしたら、石川さんが「杉浦さんの作品だったら、実は『百日紅』を、一度企画を動かしたことがあって、結局あきらめちゃったんだ」という話で。2度目にI.G.に呼ばれて行った時に「原さん、『百日紅』をやらないか」という具体的な提案があったんです。「ぜひやらせてください」と……。それで作ることになったんです。

――原さんは何度か「杉浦さんの作品に影響を受けている」というお話をしていますけど、実際、杉浦さんの作品を作ることになってどう感じました?

 ほかの誰かに作られてしまうとか、あきらめるとかは考えなかったですね。『百日紅』という原作はすごく出来のいい原作なんですけど、不安としては、“(原作が)完結していない”ということや、(自身が)原作を好きすぎるところがありました。それに、『百日紅』は各話が独立したエピソードで、オムニバスになっている。それを一本の映画にどう構成していくかというところから、まず考え始めたんです。

――いくつもの短編を一本の映画にするというのは相当難しいというか、『百日紅』の原作を読んで、「これを一本の映画にする」というのは素人目にはできるとは思わなかったです。原監督としても、難しいと感じられましたか?

 クライマックスをどうするかは最初から決めていたんですよね。「野分」というエピソードで、僕が最初に読んだ『百日紅』の単行本では、それが最後のエピソードなんですよ。そこに僕はものすごく感動して、これをクライマックスにもっていくような構成にすればいいと考えていました。あとは逆算して、いかにそのエピソードがクライマックスになるか考えて、お栄とお猶の姉妹関係をオリジナルのエピソードとして、随所に入れていこうと思ったんですよね。

――「野分」で描かれている“人が亡くなってしまうこと”に、心を奪われたのですか?

 この死は、突然の死なんですね。たいていどんな人でも身近な人が突然死ぬという経験ってあると思うんですよね。ものすごく突然なんだけど、誰でも経験することなんじゃないかなと思って。それを杉浦さんはことさらウェットには描いてない。すごくドライに、むしろ読者を突き放す形で描いて終わらせている。そこに彼女のすごさを感じます。

――映画『百日紅』だと、ウェットな描写ではないけれど、北斎のもとに百日紅の花があるなど、映画オリジナルの描写もあります。

 まあ、百日紅の花などは、僕の持っているものですね。杉浦さんだったら描かない部分なのかもしれないですけど。今回はなるべく杉浦さんのコマ割りとか、アングルとかは活かそうと思って作りましたけどね。

百日紅 (上) (ちくま文庫)

百日紅 (上) (ちくま文庫)

原作との違いも、じっくり楽しんでほしい作品。

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