その彩りに立ち眩みする。光と色を味方につけた武藤彩未、19歳の誕生日を迎えたワンマンライブ[BIRTH]レポート

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「彩未! 彩未!」コールが鳴り止まない。再びステージに戻ってきた武藤はまたも衣装を変え、今回のライブの新グッズの黒・白・灰色の3種類のTシャツを組み合わせたワンピースを身に纏い、白のブーツ姿で登場。ここで武藤が一つお願いを告げる。

「今日私も誕生日を迎えましたが、実はもう一人誕生日を迎える子がいるんですね。さくら学院のメンバーで、大切な一人です。届かないかも知れないけど、よかったら(堀内)まり菜ちゃんにバースデイソング歌ってもらってもいいですか?」

 後輩想いの武藤の合図で合唱が始まり、きっと客席にいるであろう堀内まり菜の「ありがとうっす! ありがとうっす!(激しい擬音)」といった相変わらずの挙動が安易に想像できる。ライブタイトル『BIRTH』にもう一つの意味が込められ、それと同時にさくら学院の厚い絆が感じられるシーンだった。「みんなの道を切り開いてあげられるような、そんな先輩になりたいと思っています。私も、もっともっと頑張っていきたいと思います!」と、武藤。さくら学院初代生徒会長としての責任感と、それを貫く意志が伝わる。この人が松井愛莉、三吉彩花、BABYMETALといった色んな分野で活躍するさくら学院の土台を作った人なのだと、あらためてその人望の厚さを伺わせる瞬間だった。

 アンコールの一曲目は新曲。「まだ先週歌詞が出来上がったばかりで、未完成なんですよ」という新曲は「Happy Chance」というタイトルで紹介され、初披露とは思えない手拍子とタイミングばっちりの掛け声で盛り上がる。その後は「未来へのSign」、「時間というWonderland」と続き、球体それぞれに時計の針が浮かび上がる。“武藤彩未”というソロプロジェクトの変化と進化が映像にも光にも、そして歌にも表れている。未来へ臆することなく立ち向かう力強さを感じ、今まさに「届けたいのは涙じゃなく サヨナラじゃなく Smile」という歌詞の通りの笑顔が届けられる様が美しい。

「夢みたいですね、今ここに立っているのが……。ずっと憧れで、“渋谷公会堂に立ちたい”ってずっと言っていました。ここに立てているのは、今日来てくれている一人一人のおかげです。渋谷公会堂に連れてきてくれて、ありがとうございます!」

 もっと大きな夢を目指していきたいという武藤は、「日本武道館に立ちたいです。今日来てくれた皆さんと一緒に行きたいです!」という願いに大歓声が起こる。“目標に向かってどんな努力でもできる19歳”になる、そんな武藤の決意を込めた「明日の風」が始まる。アコースティックギターとともに響き渡る歌声と、球体に映し出される昨年の『BIRTH』のライブ写真。モノクロで浮かび上がる過去の武藤の姿。10代の女の子の1年間は大きい。会場にいる誰もが自身の1年間を振り返っただろう。シンガロングで「ララララ〜」と声が広がり、歌声が光の演出に頼らずとも多くの人の過去と未来を照らすかのようだ。

 大きな拍手に包まれてアンコールが終わり、「本当にありがとうございましたーっ!」とマイクを通さずに大声で叫ぶ武藤。客電がついても拍手を止めず、帰らない観客の目の前にステージに再び現れる。まさかのダブルアンコールは武藤にとって大切な曲、「彩りの夏」で締める。曲中で「彩未ーーー!」というコールが地鳴りのように響き、まったく終わる気配のないライブはそれでも終わってしまう。最後はバンドメンバーとともに並んで「本当に本当に、ありがとうございましたーーー!」と叫び、武藤彩未にとって10代最後の誕生日ライブが幕を閉じた。

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 無数の球体のセット、ミラーボール、プロジェクションマッピング、レーザービームなど、光と色の演出に包まれた『BIRTH』。それは歌の世界観を広げ、武藤彩未の人間力を輝かせていた。ゴマンといるアイドルの中で突出する、彼女の色彩豊かな歌声と表情。そして元・可憐Girl’sのメンバー、さくら学院の初代生徒会長という唯一無二のキャリア。その先の未来を見たいし、楽しみたい。そんな希望に満ち溢れた140分だった。

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 歌い直しのハプニングもあったが、悔しさを次に置いてはおけない意地の強さが垣間見れた。いわばライブはドキュメントだ。「パラレルワールド」のミュージックビデオはワンカットの長回し撮影で、武藤が階段を伝って空を上っていく姿が収められている。人生を撮影すると長回しであり、一回きりのワンカット。その一瞬一瞬を永遠に、そして瞬間で輝かせる才能をその後、6月9日、10日の渋谷クラブクアトロのライブ以降も見届けたい人は絶えないだろう。

 その卵の殻は破かれただろうか。一度は失敗してスクランブルエッグになってしまっても、また次には美しい卵焼きを作ることになるのでしょう。というか、どちらも美味しいです。
(取材・文/竹内道宏)

《セットリスト》
01、Are You Ready 2015
02、Doki Doki
03、Seventeen
04、女神のサジェスチョン
05、ミラクリエイション
06、宙
07、Daydreamin’
08、風のしっぽ
09、とうめいしょうじょ
10、永遠と瞬間
11、RUN RUN RUN
12、パラレルワールド
13、A.Y.M.
14、交信曲第1番変口長調
15、OWARI WA HAJIMARI
16、A.Y.M.(やり直し)
<アンコール>
17、新曲(仮タイトル「Happy Chance」)
18、未来へのSign
19、時間というWonderland
20、明日の風
21、彩りの夏

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竹内 道宏(a.k.a. たけうちんぐ)ライター/映像作家
様々な媒体で音楽系、映画系、体験系の執筆をしている。監督・脚本を務めた映画『世界の終わりのいずこねこ』がイタリアのウディネ・ファーイースト映画祭に正式出品が決定。今年度から京都造形芸術大学・映画学科の非常勤講師を務める。また、神聖かまってちゃん等の映像カメラマンとして約600本に及ぶライブ映像をYouTubeにアップロードする活動を行なっている。
2013年2月以来、BABYMETALに心を奪われてしまいました。命ある限り彼女たちの活動を追いかけます!
たけうちんぐダイアリー(ブログ)→http://takeuching.blogspot.jp
ツイッター→https://twitter.com/takeuching

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