その彩りに立ち眩みする。光と色を味方につけた武藤彩未、19歳の誕生日を迎えたワンマンライブ[BIRTH]レポート

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 ライブの勢いは止まらない。スピード感にあふれた「女神のサジェスチョン」の後は衣装チェンジし、「ミラクリエイション」へ。ピンクのワンピース姿で輝きを増し、眩い光を味方につけるようにパレード調の楽曲を楽しく歌い上げる。最後のピエロみたいに鼻を手で摘み、お尻をふりふりさせる振り付けが天井知らずの可愛さである。

 ここからステージ演出の勢いが増す。「宙」は数個のミラーボールがリズムを刻むごとに切り替わり、ドットの光の拡散が始まる。まるで球体が気泡となって、辺り一面に弾けるような光景が美しい。出会いと奇跡をファンタジックに見つめるこの曲の世界観に似合い、「生まれてきた謎が解けてく」という歌詞通りの予感すら信じさせる。ライブで初披露の「Daydreamin’」からプロジェクションマッピングが始まり、球体のセットに映像が浮かび上がる。デジタル調のビリビリッとした電子の海を泳ぐようなエフェクトがかっこよく、バンドメンバーの一員のように武藤のボーカルを映像がサポートする。着替えてきた衣装を見せるためにぐるっと一回転し、「ちょっと大人っぽくないですか?」と自慢げに誇る姿が微笑ましい。MCでは今回のドット柄の衣装、球体が浮かび上がるセットについて「ライブのタイトルが『BIRTH』じゃないですか。“誕生”という意味を丸に込めていまして、この丸が卵だったり、お母さんのお腹の中だったり、そこから“生まれる”という意味を込めています」と、語る。

 昨年末の赤坂BLITZのワンマンライブの前日、自身のTwitterに「明日のライブで殻を破壊しますから」と書いていたのを思い出す。その殻はここに浮かんでいる卵なのかも知れない。「丸って何気ないものじゃないですか? それがいろんな人の力が加わると“原石”だなって思って」と続け、幾多もの色に照らされ、さまざまな絵が映される卵こそがまさに武藤本人。その殻が次第に破かれていく様が、この後も続いていく。

 一曲目について語ると、「高校を卒業して少し時間ができるので、これから作詞も頑張ってみようと思います!」という決意に大きな拍手が。そのほかに頑張っていることの一つとして料理を挙げ、卵焼きを一発で成功したことを喜んでいたが、今日作ってみると失敗してスクランブルエッグみたいになったという。まぐれだったようだ。「ここだけの話にしておきましょう……」と言ったが、容赦なくここに記した。その代わり、ステージに浮かび上がる卵たちがたくさんの光で美しく焼かれ、さまざまな色が混ざったスクランブルエッグに美味しく仕上がっているから、全然大丈夫!

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 ここからバラードのセットになる。「ここから座って聴いていただきたいと思います」と観客が着席し、「みなさん、自分に置き換えて聴いてください」としっとりとゆっくり「風のしっぽ」が始まる。センチメンタルな歌唱の伸びが心地よく、切ないバラードに似合った風景が球体に浮かび上がる。「とうめいしょうじょ」、「永遠と瞬間」のアコースティックバージョンと続き、バラードは歌唱力が赤裸々に曝け出される。だからこそ武藤の本質的な魅力が全面に押し出される。映像と光の演出に頼らない、“彩未”に名前負けしないカラフルな歌声が響き渡る。次々と涙腺を緩ませてくる。ライブの冒頭では感極まって泣きそうな表情の武藤だったが、次はこちらの番のようだ。

「ずっとこんな時間が続けばいいと思いますが、時間は限られていますからね。だからここからはみなさん、暴れてみませんか!?」と、客席を煽る武藤の合図で、バンドメンバーがそれぞれ紹介されるたびにソロ演奏が続く。ドラムの楠瀬タクヤ、ベースの須長和広、ギターの山本陽介、キーボードのnishi-kenと紹介されたところで、「えっ? ちょっと?」と予定通りではない展開に武藤が戸惑い、サプライズのハッピーバースデイの合唱が始まる。球体に映し出されたケーキはロウソクがしっかりと19本立ち、ステージ天井にレーザービームで「HAPPY BIRTHDAY」の文字。映像に向かって武藤が息を吹きかけると火が消えて、会場全体が彼女の誕生日を祝う。

 今まさに『BIRTH』の主人公が満面の笑みを浮かべ、テンションが最高潮になったところでそのまま「RUN RUN RUN」へ。客席が一斉にタオルを振り回す光景に「楽しい!」と思わず曲の間に叫ぶ武藤。「パラレルワールド」はレーザービームの演出が施され、「A.Y.M.」はイントロから満天の星空のような光が会場の天井に広がる。球体にはそれぞれ「A」「Y」「M」と映し出され、ライブが勢いを増していく中で途中で歌詞を忘れてしまうというハプニングが。それでも最後まで歌いきり、「交信曲第1番変口長調」で勢いを持ち直す。彩未コールと「交信! 交信!」の掛け声でライブが大盛り上がりに。

「最後にもう一曲、盛り上がっていただけますか?」と武藤が問いかけ、本編最後の「OWARI WA HAJIMARI」へ。ライブが終わる頃なのに、これから何かが始まりようなワクワク感を詰め込んだ楽曲。最後は19歳にちなんで、武藤の合図に合わせてバンドが一斉に19回の音を鳴らすたびに客席がジャンプする。

 バンドメンバーがステージを去る際に、「悔しい〜!」と先ほどの「A.Y.M.」での悲劇を悔やんでいる武藤。「バンドのみなさん……バンドのみなさん! あの……私のわがまま聞いていただけますか?」と再び呼び込む。歌詞の確認のために武藤が一瞬ステージに脇に姿を消し、通常のアンコールとはまた違った拍手が巻き起こる。

 異例の事態を鮮やかに迎え入れるバンドメンバー。そこに厚いチームワークが伺える。そしてまさかの二度目の「A.Y.M.」へ。これこそが「上昇専用のリセットボタン」なのか、まさに“終わりは始まり”だった。しかし、せっかくりやり直したのにも関わらずまた歌詞を間違えてしまう。演奏が終わると「また間違えてしまいましたよね……悔しいけど、またリベンジします!」と決意を告げ、会場で“頑張っているけど失敗しちゃう女の子 友の会”が結成されるような愛くるしさがあった。完璧主義者の一面が垣間見え、その意地は彼女特有の愛嬌に満たされていた。

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