その彩りに立ち眩みする。光と色を味方につけた武藤彩未、19歳の誕生日を迎えたワンマンライブ[BIRTH]レポート

2015.05.02

――ステージ天井に浮かび上がる無数の球体が光を放ち、色で彩られる。その下で会場全体を自ら光で照らし、そこに色を塗るソロアイドルが立っている。彼女はこの日、19歳になった。ソールドアウトの渋谷公会堂を“彩”り、“未”ちなる世界に変えていた。2013年、80年代を再現する「DNA1980」と銘打ち、ソロプロジェクトを始動させた武藤彩未。今年2月にアルバム『I-POP』をリリースし、その名の通り“POP”に彩られた楽曲をたくさん引っ提げて迎えたワンマンライブ『BIRTH』は、彼女の年齢にちなんでチケット代はなんと1,900円。お手頃な値段に相応しくない高級なステージを魅せ、完璧を目指す意地にあふれていた。

(写真/笹森健一)

 初代生徒会長として在籍していたさくら学院を卒業して3年。今年高校を卒業したばかりの武藤彩未にとって、10代最後の一年の幕開けはいかなるものか。『BIRTH』にはソロアイドルの頂点を目掛けて突っ走る、メジャーデビューから2年目を迎える彼女の“変化”と“進化”が詰め込まれていた。

 4月29日、昭和の日。1980年代の歌謡曲に慣れ親しんでいたアイドルにとって、まさにうってつけの日。春の陽気のせいか、渋谷の街に半袖姿の人々が目立つ。青空の下、ビールを飲んでいる人たちを横目に向かうのは渋谷公会堂。このステージに武藤彩未が立つのは実に7年ぶりで、彼女にとって夢の一つ“渋公”は開演前から静かな熱気が渦巻く。会場に入ると、ステージ上に施されているいくつもの球体のセットが目に飛び込んでくる。なんなんだこれは。今から一体何が始まるんだ。そんな高揚感に追い討ちをかけるように武藤彩未の声が響き渡る。開場中にテレビ朝日のネット配信番組『LoGiRL』の相方・清野茂樹アナとのトークが始まり、「緊張していないんですよ〜」と呑気そうに言いつつもどことなく緊張の色が見える声から、これから始まる景色に期待が高まる。

 ついに開演を迎える。「ナウシカ・レクイエム」のアレンジに合わせて手拍子が鳴り、バンドメンバーの後に武藤彩未が登場。早くも感極まった表情で正方形の広いお立ち台の上に現れ、『BIRTH』がスタートを切る。

 1曲目からいきなり未発表曲「Are You Ready 2015」で攻めてくる。武藤本人が作詞したこの曲には「今ここは憧れの場所で 目の前はたくさんの皆 ステージから見る渋公 なんて最高♪」と本公演に込めた想いがストレートに綴られている。丸い形をしたオブジェをいくつも纏ったカラフルな衣装で軽快に踊り、少し大人びた様子なのは耳を出しているせいか。身軽そうなボブヘアーと突き出された頰が美しく光に照らされ、思わず立ち眩みしそうになる。

「渋谷公会堂、盛り上がっていくよーっ!」と宣言すると、そのまま「Doki Doki」と「Seventeen」と立て続けに披露するNineteen。どこか懐かしげなメロディに新世代のアイドルが色を付け、冒頭から客席では休む間もなく拳を突き上げる渋公。ステージ上の球体を照らす光が赤、黄、青とカラフルに彩り、まるでこの世に存在する色をすべて塗りたくるかように贅沢だ。演奏が終わると、「2階ーーー! 1階ーーー!」客席の隅から隅まで呼びかける。

「ここに実際に立ってみるとやっぱり大きくて……でも一人一人、皆さんの顔がよく見えています」と語る武藤。彼女にとって可憐Girl’s以来、7年ぶりの渋谷公会堂のライブ。ソロでは自身のキャリア史上最大規模になるステージに立てたことの喜びを噛み締め、「全員で楽しんで盛り上がれるライブを作っていきたいと思います。全力で歌わせていただきます。最後まで、よろしくお願いします!」と、感謝の気持ちを伝える。

 MCでは、近くの代々木体育館で「GirlsAward 2015 SPRING/SUMMER」のステージにさくら学院の同期の松井愛莉と三吉彩花がモデルとして立っていることを告げ、「今ごろ頑張っているんですよ。こうやってね」と一瞬だけモデルウォークの真似をする姿に笑いが。「なので今日、最強だと思いません?」とうれしそうに問いかける武藤に、なぜか「愛莉ー!」という声援が。「そこは彩未でしょ?」と即座に突っ込みが入る。“離れていても心は一つ”。これは今年3月に卒業式を迎えたさくら学院2014年度のテーマだが、2011年度の卒業生も心を一つにつなげていた。

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