ファンタジー好きな女性も満足! 特撮・怪獣ファンじゃないけど、展覧会「成田亨 美術 / 特撮 / 怪獣」に行ってみる

■お待ちかねの特撮&怪獣画展示!

 それから、特撮セットの部屋がある。これが残念なことに「あー、なんだ、子どもだましだわ」と思うような出来なのである。ビルはなんだか歪んでいるし、家屋に至っては板にざっくり描いただけだったりする。ところどころ、土台となる板がむき出しになっていて、これならよほど、どこかの第三セクターである資料館の模型のほうがリアルに見えそう……と思っていた。

 ところが、である。セットの手前に置いてある動画カメラを通して、テレビ画面に映してみると、これがものすごくリアルなのである。パンフレットによると成田亨は、「強遠近法」という、狭い場所でも奥行きを感じるように、パースをひどく崩した手法を用いてセットを作っていたそうだ。むき出しの土台はほとんどカメラには映らず、板にざっくり描いた家屋も、ざっくりした分だけより遠くにあるように見える。よく見れば、手前の家屋にはガラスのひび割れまで細かく描いてあるのだ。どんな計算をするとこうした効率のいいセットができるのかわからないけれど、成田亨はかなり頭のよい人だったに違いない。セットの周りをウロウロ歩き回って、表から裏からしげしげ見て回ってしまった。

150501_narita_5.jpgカメラはレールの上を滑らすことが出来て、いろんなアングルで
セットを映してみることができる

 さて、ここまで怪獣なしで堪能してきたが、そろそろ宇宙人や怪獣にも手を伸ばしてみよう。筆者はもともと特撮に詳しくないので、展示してある怪獣はほとんど知らないものばかりだった。が、知らなくてもまったく問題なかったのである。

 成田亨の脳みそを垣間見られるのが、怪獣とその元ネタ写真を並べたスケッチだ。どんなものから発想を得て、どんな怪獣を創造したのかがひとめでわかるようになっている。確かに食虫植物は植物のくせにヌルヌル動くし、畏怖の念が湧いてくるので、これを怪獣に変換するのはわからないでもない。でもネイティブ・アメリカンの衣装が怪獣に? 現地の人たちに怒られないのか? そして色とりどりの風船の束が怪獣?? 幸せの象徴みたいな物体を見てすら、怪獣に見えてしまう、成田亨の発想力にほとほと感銘を受けた。

150501_narita_6.jpg恐竜の骨組みもやっぱり怪獣に!

 とまあこのように、別段、特撮にも怪獣にも馴染みのない筆者が、あっちをウロウロ、こっちをウロウロして、3周も見て回ってしまった。

150501_narita_7.jpg絵は上手いのに文字はイマイチなところもまた味がある

「成田亨 美術 / 特撮 / 怪獣」は、高尚な芸術作品はわからなくても、モンスターや怪獣が好きなら楽しめる。かといって、単なるヲタ向けマンガ展覧会とは違った芸術性がある。特撮ファンの男性たちよ、臆することなく、彼女や奥さんを連れて行きたまえ。特撮ファンの女性たちよ、ファンタジー好きや仏像マニアのお友達を誘うがいい。特撮なにそれ? っていうお友達よ、大丈夫、怪獣以外の展示も面白い。それでもダメなら、奈良美智による「あおもり犬」がある。もちろん、子どもたちは見たこともないであろう宇宙人や怪獣の画に大喜びするだろう。
(取材・文/和久井香菜子)

【そのほかの写真は次ページより】

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