『GTA』の世界に“完全没入”できる機器が登場！ 可能性が広がるVRゲーミング

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　人気のオープンワールドアクションゲーム『グランド・セフト・オートV』（以下、『GTA5』）の舞台であるロスサントスは架空の都市だが、セレブな高級住宅街もあればアウトローが巣食う不穏な地区もあるという清濁併せ呑む実に魅力的な街だ。ゲームの世界でもその魅力はじゅうぶん満喫できるが、実際に自分の足で街を駆けまわれるとしたら――。

■ロスサントスを自分の足で駆けまわる

　トレッドミル型の機器「Omni」の上に実際に足を下ろし、現在鋭意開発中のHMD「Oculus Rift」を装着して『GTA5』の世界に“どっぷり浸って”バーチャル環境でプレイしている動画が公開されて話題を呼んでいる。

　このシステム「Virtuix Omni」は、シリーズ初の搭載となる「一人称視点モード」に連動させたシステムで、自分の足で街の中を歩き、時には小走りに駆けまわり、店に入ったり、車を運転したり、そしてマシンガンを撃ちまくったりと思いのままだ。まさに“完全没入型”のゲームシステムといえるだろう。

「Omni」は現在事前予約受付中ということで、価格は699ドル(約8万4000円)。もちろん「Oculus Rift」も別途必要となる。また、現状では『GTA5』に正式に対応しているわけではないので、今のところはサードパーティーによるソフトウェアを使うことになる。

　多くの「GTA」ファンの注目を集めるに違いないこの「Virtuix Omni」だが、もちろん様々な可能性を秘めた機器となることは想像に難くない。他のオープンワールドFPSへの対応はもちろん、3D環境による擬似体験映像や、現代芸術の一ジャンルである「ビデオインスタレーション」の装置としての活用など、さまざまな応用が考えられるということだ。また実際に身体を動かすことから、健康増進面での効能も期待されている。

■ようやく開発が本格化した「Oculus Rift」

　ゲーム好きにとっては夢が膨らむ「Virtuix Omni」の話題だが、その画竜点睛となるのは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の「Oculus Rift」だ。ご存知の通りコンシューマ向けOculus Riftは現在鋭意開発が行なわれているが先頃、2015年中の発売はないとアナウンスされ、話題的にはいったん沈静化している感もある。

　そして先日、Oculus VR社の親会社であるFacebook社のCFO、デイビット・ヴェーナー氏は株主向け収支報告の場において「Oculus Riftは現在、開発の真っ只中にある」と発言し、コンシューマ向けのOculus Riftの発売にはまだまだ時間がかかることを示唆している。ソニーのHMD「Project Morpheus」のほうも早々と2015年中の発売はないとして2016年上半期中の発売を目指しているが、Oculus Riftもそのくらいの時期になるということだろうか。

　しかしその一方で、Oculus VR社は先日、2人の開発責任者ジョー・ジェプセン氏とアンナ・スウィート氏を招き、まさにこのOculus RiftとVRディスプレイ開発の強化を図る体制に入ったことを発表している。ちなみに2人とも女性で、ジェプセン氏の前職はグーグルのディスプレイ開発、スウィート氏の前職はValve社の経営開発と、それぞれ十分なキャリアを積んでおり、Oculus Riftの開発がいよいよ本格化してきたことを物語っていそうである。

　確かに時間に追われて安易な、文字通りの意味でオモチャっぽい製品を出せば、90年代に“大ハズレ”した死屍累々のヘッドセット型周辺機器の二の舞になってしまうかもしれない。多少時間がかかっても腰を据えて開発に勤み、納得のいくHMDをリリースしてほしいと望む声も少なくなさそうだ。
（文／仲田しんじ）

【参考】
・Smash
http://www.smash.com/grand-theft-auto-5-played-fully-immersive-virtual-reality-looks-incredible-quite-disturbing/

・Games Industry（デイビット・ヴェーナー氏の発言）
http://www.gamesindustry.biz/articles/2015-04-23-facebook-too-early-to-talk-large-scale-oculus-shipments

・Games Industry（2人の開発責任者）
http://www.gamesindustry.biz/articles/2015-04-27-oculus-vr-adds-two-to-exec-team