ゴールデンウィークに一気読み！ 無料で読める「絶版マンガ図書館」“極私的”名作5選

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「絶版マンガ図書館」公式HPより。

　昨年「Jコミ」から名称を変更し、スタートした「絶版マンガ図書館」。ユーザーがすでに絶版で入手困難、あるいは忘れられていた作品のデータをアップロードすることによって、運営が著作権者と交渉して作品を公開してくれるシステムです。

　読者は忘れられていた過去の膨大なマンガ作品を無料で読むことができ、著作権者（≒マンガ家）は閲覧数に応じてお金をもらえる。「絶版マンガ図書館」は死蔵されて消えていく作品を復活させてくれる素敵なサービスで、日々公開作は増加。しかし、読むにあたって「どれが面白い作品か？」と迷う人も多いでしょう。そこで、筆者の独断で、読めば必ず刺激を与えてくれる忘れられていた名作、5作を選んでみました。

戦争なんてくだらねぇぜ！ 俺の演技を見ろ!!
■『THE STAR』
【作者】島崎 譲　原案：藤本ひとみ

「絶版マンガ図書館」内『THE STAR』

【あらすじ】
　芸能界に身を投じた高校生・長瀬優也。抜群の演技力を持ち、共演者の魅力をも引き出す才能に溢れた優也は、さまざまな困難や妨害を乗り越えて、スターの階段を昇っていく。恋愛とバトルの果て、ついに彼の演技は戦争をも止めるまで輝くことになる。

【解説】
　公開当初、Twitterなどで絶賛の声が上がった作品。男性版『ガラスの仮面』（白泉社）と思いきや、作品中の芸能界はやたらと血の気の多いイケメンばかりなのか、なにかとバトル。撮影でも実弾や真剣を使ったり、演技に命を懸け過ぎで、読んでいて燃えてくる。ラストエピソードはマジで戦争を止めるので、ワクワクしながら一気読みできる。

ビデオ屋のエロビデオを全部借り切りたい！
■『友情の男アミーゴマン』
【作者】こにし　しのぶ

「絶版マンガ図書館」内『友情の男アミーゴマン』

【あらすじ】
　ヒーロー・アミーゴマンの目的は「生きとし生けるものすべてと友達になること（ただし、犬だけは嫌い）」。あらゆる悪とも変態とも友情を育もうと、日夜その活動が止まることはない。しかし、彼が友達になることを望む、その多くは暑苦しい男だったり、変態だったり……。「月刊コミックコンプ」（角川書店）に連載されていた変態ギャグマンガ。

【解説】
　アミーゴマンが、汗臭そうな男と「好きじゃああ！」と抱き合ったり泣いたり……。友情というよりは、キャラの立った変態オンパレードという作品。アミーゴマンに立ちはだかる悪（？）についても、世界のエロを支配しようとする「ゴッドエロス」とか、妙なヤツばかり。「このビデオ屋のエロビデオは全てこのゴッドエロスが借り切った」なんて高笑い……。エロビデオ借り切り、一度はしてみたい（なお、こにし先生はマンガ家を引退されましたが、アミーゴマンの着ぐるみで各地に登場しているようです）。

超甘酸っぱい80年代の恋愛観
■『らぶ♥シミュレーション』
【作者】矢野 健太郎

「絶版マンガ図書館」内『らぶ♥シミュレーション』

【あらすじ】
　中学生・湯沢篤の隣に引っ越してきた同級生・早瀬涼美。いきなり涼美の風呂上がりを目撃してしまったせいで、第一印象は最悪。ところが、周囲が恋愛に興味津々な中、イマイチ恋愛に盛り上がれない二人は、「ためしに恋愛」してみることに。単なる「ごっこ」から、二人は次第に本気になっていく――。

【解説】
「週刊ヤングジャンプ」で代表作『ネコじゃないモン！』（共に集英社）を連載した矢野先生が、同一の世界観で描いた超甘酸っぱいラブコメ。中学生ならではの男子のエロへの止まない情熱、そして女子の“恋に恋する”甘酸っぱさが余すことなく描かれている。「絶版マンガ図書館」で公開されているのは大都社版なので、後日談も収録されていて超満足。80年代の恋愛観を知る歴史的資料かも。

貧乏人はすべて悪！
■『重役秘書リナ』
【作者】楠木あると（画）　今野いず美（作）

「絶版マンガ図書館」内『重役秘書リナ』

【あらすじ】
　成田リナは、丸の内銀行副頭取の秘書。事業に失敗し没落した両親と暮らす彼女の夢は「私の力で副頭取を頭取にしてみせること！」。観察力と洞察力に優れたリナは、絶妙な心配りで人の心を掴み、さまざまな事件を解決していくことになる。

【解説】
　90年代の「週刊モーニング」（講談社）が好んだ「お仕事系」マンガ。融資の相談から、不良債権の処理、埋もれた優秀な社員の発掘まで、秘書なのにエラい勢いで活躍。「リナさんが信頼する副頭取ならば……」と信頼を勝ち取って成功していく、やり過ぎ感がスゴイ！　作品を通して、仕事のできない人や冴えない人、貧乏人はすべて「悪」とぶった切る。弱者にやさしさのない作者の意志が見え隠れするのが、オススメする理由である。

マンガ史でも重要なシュールギャグマンガ!?
■『亀井くんの入門シリーズ ～ポイズンギャグ傑作集～』
【作者】竜巻竜次

「絶版マンガ図書館」内『亀井くんの入門シリーズ ～ポイズンギャグ傑作集～』

【あらすじ】
　大学3年生の亀井君の下宿には、「毎日が日曜日」を続ける4年生の先輩たちがいっぱい。ビアガーデンでバイトすれば、「汲めどもつきぬ酒の泉があったのだ！」と仕事を忘れて宴会を始めちゃうような先輩たちに囲まれて、亀井君の将来の展望はどうなっちゃうのか？

【解説】
　80年代に勃興したサブカル的シュールなギャグマンガの中でも、特に光っていた竜巻先生。作品がアップされたことで「また新作を描いてくれるのでは？」という期待もあって、多くの人に読んでほしい作品。とりわけ、“マンガを語る”ことに自意識が強い人は、現在に至るマンガ史の中でも重要な作品なので、押さえておくといいだろう（うん、あまりに作品がシュールすぎて解説文が追いつかないや）。

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　スマホ用アプリもあって、いつでも気軽に無料で読めるのが「絶版マンガ図書館」の良いところ。

　世の中には、まだあなたの読んでいないマンガが山のように眠っているのです。「最近のマンガは読み飽きた」と思っているような諸君、「絶版マンガ図書館」で自分のツボを刺激する、失われた名作に出会えるかもしれないよ。
（文／昼間 たかし）

■「絶版マンガ図書館」
http://www.zeppan.com/