ゴジラの質問にタジタジ? 庵野秀明、樋口真嗣らが特撮博物館の巡回最終地・熊本で語る

■「特撮は贅沢品だった」日本の特撮をめぐる現状

1504_tokusatsu_kuma4松山展(愛媛)でマンガ家・和田ラヂヲさんのサインが追加。

 特撮博物館が開始された2012年は、メディア芸術カレントコンテンツで毎年公開されている「日本特撮に関する調査報告」が開始された年でもある。無論、この調査には庵野監督、樋口監督、三池さんも参画している。

 それから3年が経過。特撮を取り巻く環境の変化として、三池さんは「こういう場(シンポジウムなど)にひっぱり出されることが多くなった。本業は絵を描いたり図面を描いたりものを作ったりって物静かにやる仕事なんだけど、なぜだかみんなの前で特撮を語るっていうのが増えた。ホントにありがたいことだけど、私だけで全部の美術を支えてるわけじゃないんで、色んな人が語ってくれるといいなというのが本音なんだけど……みんな職人さんなんだよね。腕がある人ってなかなか自分で語れない人が多くって、それを代弁してるかたちなんだけど」と、伝道師としての務めでも忙しいよう。

 他方で「特撮全体の世界でいうと、変わってないかもしれない」と樋口監督は言う。「実際問題は(特撮は)贅沢品だということ。そもそも特撮自体をこんな風にしちゃったのは俺らの年代なんで。『ガメラ』とかでCGを使いだして、『CG使うと意外といいじゃん』って、日本の映画界が気づきだした先駆けだった。自分たちは全然そんなこと思ってなかったけど、結果的に自分のやってたことが日本の特撮にトドメを刺してしまった。反省というか負い目のようなものがあった中で、そのまま映画監督をやってるんだけど、(特撮博物館は)もう一度自分の好きなものはなんだったのか、を振り返るいい機会になった」と、先の三池さんの発言を受けるかたちでも言及。

1504_tokusatsu_kuma5『ウルトラマンタロウ』のコンドル1号を背後から。 ©円谷プロ

 具体的な展示物の話題になる場面も。「正直いって『ウルトラマンタロウ』(のコンドル1号)とか、『ん?これはちょっと』って思った時期もある」と、三池さん。子供の頃には「青と赤のカラーリングがありえない」と思っていたそうだが、今では「いかに個性を主張するか。1回見たら忘れないというインパクトとしては凄い」と思っていると話すと、樋口さんも「当時はホントに『こんなの飛ぶわけないじゃん!』って思ったのが、『これを飛ばすことが素晴らしいんだ!』になる。穴が開いてるからね、翼に」と同調。「当時はわからなかった。後ろを見てもらうとわかるけど、普通なら飛行機と同じようにジェットエンジンのノズルがついてるのに、『ウルトラマンタロウ』の(コンドル1号)だけ、変に歯車がついてる」と、コンドル1号のオーバーテクノロジーぶりを解説した。

■新たな『ゴジラ』に『進撃の巨人』…特撮博物館以降の特撮

 やはり最後には『ゴジラ』についても質問が。庵野監督は「口止めされてるんで、『頑張ります』とだけ」、樋口監督は「内容はともかく気持ちだけ……。むちゃくちゃ嬉しいんで、この嬉しさを作品に活かして、どうやって内容に反映させるか」との回答に留めた。

 しかしその後の観客からの質問も、『ゴジラ』に関心が向きがちに。樋口監督は「まぁ金子(修介)さんが先にやってるんで【編注:樋口監督と金子監督は『ガメラ 大怪獣空中決戦』などでタッグを組んでいる】。俺が初めてだとプレッシャーだけど、大丈夫。見てる人からしたら思い入れとか嬉しいとかあると思うんだけど、『だから何』ってのは意外とない。むしろ他人様のキャラクターなんで、いろいろと丁寧に失礼のないように。悪ふざけとかはしづらいんで、真面目にやりたい」との意向を示した。庵野監督は、樋口監督が撮った『ガメラ』を例に「2本目(『ガメラ2 レギオン襲来』)、3本目(『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』)は確かに技術は上がってた。だけど熱意は徐々に別の方向に行ってて、面白かったけど感動には至らなかった。技術は人を感心させるけど、感動はさせない。彼が魂を削った1本目は本当に感動した。次の『ゴジラ』も魂を削って感動させてくれると思うんで。おそらく初心に還ってくれれば大丈夫。まぁ慢心させないんで、僕が(笑)」と語った。

1504_tokusatsu_kuma6「重ねて、感謝いたします。ありがとうございました。」庵野秀明

 このほか、2月末をもって惜しまれつつ閉店した熊本の県民百貨店について、「あの昭和感は素晴らしい」(樋口)、「是非残してください」(庵野)といった懇願や、さらに樋口監督からは「『巨神兵』(短編『巨神兵東京に現わる』)でやったやり方をそのまま引き継いで、(実写映画の)『進撃の巨人』が誕生したんじゃないかなと。特撮展の先にあるものの第1弾として、『進撃の巨人』があるので、よろしくお願いします」と、宣伝も忘れなかった。特撮博物館の熊本での会期は6月28日まで。最後の巡回地だけに、もう一度訪れておきたい。
(取材・文/真狩祐志)

■館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技
http://www.kkt.jp/event/tokusatsu/

figma 巨神兵東京に現わる 巨神兵

figma 巨神兵東京に現わる 巨神兵

特撮博物館のガチャガチャで、畜光バージョンばかりが当たる悲しみ…。

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