姫乃たまの耳の痛い話 第25回

稼いだお金はどこに消えたのか……? アイドルが「この程度の事務所にしか入れない自分が悪い」と諦めた日

 最初に物販で販売するための生写真を撮影した時は、「どんなポーズをとったらいいのかわからず緊張した」と言います。この生写真の売り上げが、彼女のCDの制作費になるのです。

 ライブの出演料は一律で1回2000円でした。バンドでライブに出演すると、チケットノルマが20枚ほどあるので、出演料がもらえるだけで万々歳だと思いました。そのかわり、物販がどれだけ売れても彼女の収入が増えることはありません。

「すべてはCDの制作費のため」と納得していた彼女ですが、交通費の支給がないことから、徐々に金銭面の負担が大きくなってきました。県外から通っているため、都内への交通費だけで出演料が消えてしまうのです。さらにスケジュールが事務所によって強制的に決められるため、アルバイトをすることはできませんでした。

 だんだんと「辞めようかな」という考えがちらつき始めた頃、CD制作の話がいよいよ本格的になっていきます。大学2年生の春のことです。

 無名ではありますが、作曲家に楽曲を提供してもらい、初めての作詞に四苦八苦して、慣れないレコーディングに緊張した後、音源は完成しました。しかし、ジャケットは生写真のために撮影したデータの使いまわしだったのです。しかも、その「CDはライブ会場限定で販売する」とのこと。つまり、CDが店舗に並ぶことはなく、売り上げもほかの物販と同じように、一銭も彼女には入りません

 一応、その売り上げは次のCDの制作費にあてられると聞いて、我慢せざるを得ませんでしたが、この頃から、たった2000円の出演費すら滞納されるようになってきたのです。流されるまま活動してきた彼女でしたが、予想外に固定のファンがついてきたため、物販の売り上げが1回あたり2~3万円ほどになっていました。これを月に10~15本程度も稼いでいるのにもかかわらず、パソコンでCD-Rに焼くだけの音源しか作れないことに、疑問が生じてきました。

 そんな中、彼女がこの状況に決定的に耐え切れなくなったのは、自分のオリジナル曲を、無断で事務所の新人に歌われたことでした。ある日の事務所主催ライブで、自分の曲が流れてきて、何も知らされていなかった彼女は心底驚いたそうです。新人のための楽曲を作る費用は削減されますし、彼女の楽曲を歌うと彼女のファンが新人に流れていきました。「事務所の作戦勝ちですよね」と彼女は吐き捨てました。

 爆発的に怒ることはないけれど、常に疑問と不満がある事務所を辞められないのは、彼女が浮かれてハンコを押した契約書にあります。

「たいした事務所じゃないくせに大手の真似して、退社後は1年間活動停止しないといけないといけないんですよ」

 回転の速いアイドル業界で、1年も休む恐怖は凄まじいものでしょう。「結局、この程度の事務所にしか入れない自分が悪いんですよ」と彼女は話していました。しかし、彼女が稼いだお金は何に使われているのでしょう? それよりも、成人して間もない女の子に可能性の限界を作らせてしまう事務所とは、これいかに。

★姫乃たまの「耳の痛い話」では、読者の皆さん(地下アイドルの皆様、運営スタッフの方々、アイドルファンの方々)からのお悩みを募集します! 姫乃たまがインタビューをさせていただき、当連載にてご紹介させてください。

●姫乃たま
1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。地下アイドル/ライター。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。

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