姫乃たまの耳の痛い話 第25回

稼いだお金はどこに消えたのか……? アイドルが「この程度の事務所にしか入れない自分が悪い」と諦めた日

――地下アイドルの“深海”で隙間産業を営む姫乃たまが、ちょっと“耳の痛〜い”業界事情をレポートします。

150419_himeno.jpg大学生とアイドルの狭間で。

 世間では終焉すら気にされ始めているアイドルブームですが、まだまだ「新しいアイドルグループを作りたい」という相談が後を絶ちません。近年のアイドルブームは、容姿が整っていてパフォーマンス技術の高い子ばかりが人気になるとは限らないので、どんな子がブレイクするのかわからない面白さがあるのです。そのため、アイドルだけでなく、そのプロデューサーになる人や、プロダクションのようなものも日々、増加しています。

 しかし、いくつかのアイドルの成功の影に、彼女たちの育て方がわからないままのプロデューサーや事務所も有象無象に存在しているようです。今回はそんな事務所に所属しながらも、地下アイドルを辞められない女の子に、その理由を聞いてきました。

 今年の春、大学3年生になったばかりの彼女は、いまから2年ほど前、関東のはずれにある土地で、バンドのボーカルをしていました。軽音サークルの新入生のみで結成された4人組で、彼女以外のメンバーは全員、男の子でした。彼女にはボーカル経験はなく、バンドも有名な邦楽のコピーばかりでしたが、これまでに経験したことのない楽しさがありました。

 その年の秋、軽音サークルのイベントが近所のライブハウスで行われることになりました。大学の部室以外で演奏をするのは初めてでしたが、そのイベントで、「東京で芸能プロダクションを経営している」という男性から声がかかったのです。男は40代半ばくらいで、「アイドルが好きだ」と話していました。彼女の歌声を聴いて、「ぜひ自分のプロダクションに所属してほしい」と切り出してきたのです。アイドルに疎かった彼女は、ただの若い女好きだろうと高を括っていたのですが、話を聞くと、都内のライブハウスにも顔が利いて、CDなどの制作費も負担してくれると言います。

 東京の芸能プロダクションというと、所属するだけでお金がかかると思っていたので、もっと人前で歌ってみたかった彼女は、その場で彼の提案を承諾しました。そして数日後、都内の喫茶店でA4版1枚の契約書にハンコを押し、本格的に契約をしたのです。ライブの日取りもその場で決まりました。事務所が定期的に主催しているイベントが月に何本もあったので、あっという間に、彼女のスケジュール帳は月の1/3が埋まりました。

 最初の仕事は歌ではなくネット配信の番組で、「とてもアイドルとは思えない容姿の」事務所の女の子たちと共演しました。台本を作る人がいないらしく、「社長に気に入られているお局っぽい子が出しゃばって仕切っていた」そうです。こんな人たちがアイドルなのかと、衝撃を受けたと彼女は話します。

 しかし、彼女の衝撃はこんなものでは終わりませんでした。収録後に社長から、バンドを解散するように言われたのです。メンバーに男性が混ざっているため、印象が悪いという理由でした。簡単に納得することはできませんでしたが、大学は関東のはずれにあるので、バンドは内緒で続けていればバレないだろうと考えました。何より、CD制作の話が魅力的だったのです。あまり売れたい気持ちがないとはいえ、全国のCDショップに並ぶ自分のCDを想像すると胸がはずみました。

 そんなことを考えている間に、彼女は実年齢よりもひとつ若い17才ということにされ、「永遠に17才の地下アイドル」として、月に10本程度のライブを都内でこなすようになったのです。

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