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Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第31回

『ジョジョ』シリーズ切ってのまっすぐキャラ・ジョナサンvs.稀代の悪役・ディオの戦いを振り返る

2015.04.13

『ジョジョの奇妙な冒険』に出てくるキャラクターはとても真っ直ぐな性格をしている。ジョナサンは歴代の『ジョジョ』主人公の中でも、特に真っ直ぐな印象がある。同時に、稀代の悪役であるディオも、もう本当にド悪党なんだけど、悪は悪なりにとても真っ直ぐで、とてもポジティブである。

 大体の悪役は人気が出てくると、同情できる側面や、本当は優しい面を出したりする場合も多いが、ディオは最初から最後までずっと悪党で、とてもすがすがしい。敵役はやっぱこうでなければ! と思ってしまう。

 ヴァンパイアになったディオは、「不老不死である」「血を吸ってエネルギーにする」「太陽の光に弱い」など、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』からの、いわゆるヴァンパイアの特徴を伝承しているのだが、読んでいる当時はこれが“ヴァンパイアもの”という印象はなかった。それはやはり、荒木飛呂彦の個性が強いために、あくまで“荒木マンガ”を読んでいるという印象しかなくなってしまったのだと思う。

 これまで何百回も語られていることだが、「山吹色(サンライトイエロー)の波紋疾走(オーバードライブ)」といった技の名前や、「ゴゴゴゴゴ…」と場を盛り上げる擬音、「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」「ふるえるぞハート! 燃えつきるほどヒート!! 刻むぞ血液のビート!」などの言い回しは、とても刺激的で、何度読んでも飽きない。読むたびに、荒木ワールドにどっぷりハマってしまうのだ。

“ヴァンパイアもの”の作品として『ファントムブラッド』をとらえた時、最も偉大なる発明は「波紋」だろう。ウィル・A・ツェペリからジョナサンに伝えられた、特殊な呼吸法によりエネルギーを練り上げ、放出する秘技で、太陽光と同じ波動であり、吸血鬼に対し致命的なダメージを与えることができる。

 もちろん、すべてはフィクションの話である。しかし、これが、「なんか本当にできそう!」と思わせる独特のリアリティーがあるのだ。読んだ後はつい、「コオオオオオ…」と呼吸をしてしまう。「なんとなく出来そうな気がする」というリアリティーは、能力者のマンガでは大事なポイントだと思う。

 ちなみに、近年だと『鋼の錬金術師』の錬金術はできそうだなと思った。

『ファントムブラッド』のKindle版は、モノクロ版では全3巻、カラー版では全5巻で発売されている。もともとのジャンプコミックでは、全5巻だった。『ジョジョ』シリーズの中では最も短い作品である。バトルものとして見ても、敵は、ディオ、切り裂きジャック、タルカス&ブラフォードの4人と、少ない。

 長期に渡る連載だと、今何をしているのか見失ってしまうことが多いが、『ファントムブラッド』は展開が早いため、感情移入したまま一気に最後まで読めるのがいいところだ。ただ、短い話の中にも、「奇妙な友情」「両親との別れ」「師匠との出会いと別れ」「成長」「仲間」「誇り高き死」と、見どころがこれでもかと詰まっている。

『ジョジョの奇妙な冒険』は読んでいないという人、もしくはスタンドが出た第3部から読んでいるという人は、ぜひこの機会に第1部も読んでいただきたい。たぶん、翌日は「コオオオオ」と、波紋を練っているはずである。

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。近著に、マンガ家の北上諭志との共著『デビルズ・ダンディ・ドッグス』(太田出版)、『ゴミ屋敷奮闘記』(鹿砦社)。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/

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