結局は、担当編集の当たり外れ!? マンガ家たちが語る“持ち込み”のメリット・デメリット

2015.04.16

(※イメージ画像)ネット上で持ち込みを募集する編集部も散見される(「月刊少年ガンガンNET」より)。

 4月12日、『LIAR GAME』(集英社)などで知られるマンガ家・甲斐谷忍が自身のTwitterで「新人漫画家さんに持ち込みは薦めてません。持ち込みにメリットがあるなら教えて欲しい」とつぶやいたことを発端に、マンガ家たちの間でマンガの“持ち込み”のメリット・デメリットが盛んに議論された。この議論を見ていくと、“持ち込み”の良し悪しは担当編集者にかかっているといえそうだ。

 そもそも“持ち込み”とはマンガ家になるためのステップのひとつで、出版社に赴き、直接編集者に自分の原稿を見てもらう方法。甲斐谷忍は以下のようにツイート(@mangakap)し、マンガ誌が実施する新人賞などに応募する“投稿”を推す。

いいじゃないですか。投稿で。結果がはっきり出ます。出た結果が今の実力です。投稿のメリットは、自分の漫画のことを好きな人が担当になってくれることです。自分の漫画のことを好きでもない人と漫画を作るのは不幸だと思いますよ。お互いに。

持ち込んだら、持っていった漫画について、あれこれ批評されるんでしょう?そんなことより、投稿して、落選くらって、「全然力が足りていない」ってことをつきつけられるほうがよっぽど進歩になると思います。僕も、豪快に落選くらいましたから。


(以上、甲斐谷忍[@mangakap]のツイートより引用)

 これを受けて、多くのマンガ家が“持ち込み”のメリット・デメリットをつぶやくことに。まずは、ツイートで挙げられた“持ち込み”のメリットを見ていこう。『ZOMBIEMEN』(講談社)などで知られるマンガ家・樹崎聖は自身が主催するプロマンガ家の非営利組織「漫画元気発動計画」のTwitterアカウント(@mangagenki)で「担当となる人との人間的相性がダイレクトにわかる」「作品を読む反応で言葉以上の反応が読み取れる」と、“持ち込み”の利点を挙げている。ほかにも「担当さんごとに同じネームで全く違う意見や反応が返って来るのは面白かった」(『フットボールネーション』[小学館]・大武ユキ[@YUKI_OTAKE])、「編集は的確に長所短所を指摘してくれて『ウチじゃなくてあそこに持ち込め』とまでアドバイスしてくれる」(『マルクスガール』[秋田書店]・山本夜羽[@johanne_DOXA])など。“持ち込み”のメリットとしては、直接編集者から評価やアドバイスを受けられるといった点があるようだ。

 一方、“持ち込み”のデメリットについては、「まったく自分の漫画に興味が無いような方が思いがけず担当者になってしまってうまく作品作りが進まなくなることも少なくない」(『囚人リク』[秋田書店]・瀬口忍[@ShinobuSeguchi])という意見や、「持ち込んだ時に必要以上に酷い事を言う編集者だったら、そのままやる気を失いかけない」(前出・樹崎聖)、「同じ編集部内でも仕事が出来る編集さんと出来ない編集さんがいるから、本当に『運も実力のうち』。生まれて初めて付いた担当さんは恐ろしいことに漫画嫌いだった」(『機動少年ナオキ』[メディアワークス(※未単行本化作品)]・まつもと千春[@working_cats])、「まだこれからってときに不誠実な編集担当にあたると不運としかいいようがない」(『もうすぐハダカの距離(スキして?桃色日記)』[ソルマーレ編集部]・水野愛[@miz_megomego])と、持ち込んだマンガを見る担当編集者次第ではその後の制作にまで影響を及ぼすことを挙げる。

 こうしたマンガ家たちの声を見ていくと、“持ち込み”のメリット・デメリットは、そのほとんどが担当編集者によるものとも言えそうだ。瀬口忍は“持ち込み”は申し込みの電話を受けた編集者が担当になるというシステムと説明した上で、「漫画家志望の人には完全に運まかせのシステムってなんとかならないのかな」と現状を憂えるツイートも残していた。甲斐谷忍も「編集者は有能な方が多いけど、万能じゃないですから。最低4人の人には意見を聞いて欲しい」と、“持ち込み”をする際は最低でも4つの編集部を回るようにと助言している。

 現在は同人誌即売会「COMITIA(コミティア)」や「京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)」で原稿の持ち込みができる「マンガ出張編集部」が開催されたり、「週刊少年サンデー」(小学館)編集部主催の「サンデー持ち込み大会」なども行われているなど、“持ち込み”自体は多様化しさかんに行われているが……もしかすると、“持ち込み”によって見出された才能もあれば、埋もれてしまった才能もあるのかもしれない。

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