『スペースインベーダー』に『ギャラガ』…80年代のレトロなゲーム機が“募金箱”になって現役復活!?

2015.03.31

Extra Life公式HPより。

 国際空港で出入国手続きを終えた後のなんとなく手持ち無沙汰な時間――。入国するにしても、帰国するにしても、これからは当面使うことのないコインがポケットにあれば、心ある人々はそれをユニセフや赤十字などの透明なアクリル製の募金箱に入れたりもするだろう。もちろん賞賛されるべき慈善的行為だが、もうほんのちょっとだけでも楽しくコインを募金できないものか……。そこでお鉢が回ってきたのは、なんとも懐かしい現役を引退したレトロなビデオゲームマシンの数々である。

■レトロゲーム機が“募金箱”に

 北欧の国スウェーデンのアーランダ国際空港およびヨーテボリ国際空港の手荷物受け取り所では、80年代にゲームセンターで一世を風靡したアーケードゲーム、『パックマン』や『ギャラガ』、『スペースインベーダー』の筐体が並んでいる。

 スウェーデン赤十字社と国営空港管理会社によって設置されたこの“奇抜な募金箱”は、なんとどの国のコインでも、どの金額のコインでも(日本の1円玉は重量面でどうかわからないが)、投入すれば一律にゲームが1プレイが楽しめるのだ。営利目的ではなく、寄付を促すための設備であるゆえんだろう。ちなみに筐体の下部が透明なアクリル板製に改造されており、投入されて落下したコインは一目瞭然だ。

 1980年前後、日本のいわゆる“インベーダーブーム”時のゲーム機は喫茶店などにも導入しやすいテーブル型が多かったが、海外では立って操作するボックス型がほとんど。この空港に設置してある筐体も立ってプレイするタイプだ。

 そしてこの立って行うプレイスタイルは、エコノミークラスの窮屈な座席に固定され長距離フライトを終えたばかりの旅客にとって、良い“リハビリ”になることが科学的に証明されているということだ。場合によっては十数時間座りっぱなしの長距離フライトの後、勢い余って急に歩き回るよりは、しばらく立ったまま身体をほぐして“ウォーミングアップ”する時間があったほうが、たしかに身体に優しそうである。このウォーミングアップを素朴なレトロゲームを楽しみながら行えて、しかも募金につながるとあれば、ゲーマー冥利に尽きるということではないだろうか。しかし、当時これらのゲームに腕を鳴らしたベテランの面々は、発奮すればするほど昔取った杵柄でコインを減らさずにプレイできて、たいした募金にならなかったりも……(苦笑)。

■広がりつつある“ゲームチャリティ”

 実はゲームと“チャリティ”はなかなか相性が良いようで、以前から各種団体によって活発に行われている。

 今年2月21日、22日(現地時間)にアメリカ、東ミシガン大学で開催されたビデオゲームのチャリティイベント「Gamers for Giving」は、小児病院向けの移動式ゲームコーナーの建設費用を募り成功を収めたということだ。

イベントはまさに現在熱い盛り上がりを見せているe-Sportsのライブ中継がメインで、『League of Legends』『Counter-Strike』『StarCraft 2』『Call of Duty: Advanced Warfare』『Halo』『Peggle 2』『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』のトーナメント大会が開催されたのだ。多数の企業と団体の後援のもと、プロ・アマ合わせてゲーマー約1000人が参加する一大イベントであったという。そしてライブ中継中にオンラインでの募金を呼びかけ、目標額の2万5000(約298万円)ドルはおろか、最終的には3万8000ドル(約453万円)にも達したということだ。

 ほかにも、「ゲームを通じて本物の命を救うこと」を目的に、ここ数年、アメリカを中心に毎年行われているチャリティーイベントが「Extra Life」だ。このイベントでは毎年多くの参加者が24時間もの間、カードゲーム、ボードゲーム、ゲーム機やPCゲームなどのプレイを実況して寄付を募り、アメリカのNPO「Children’s Miracle Network」の加盟病院で闘病中の子供たちの治療費に充当している。ちなみに今年は10月25日(現地時間)から開催される予定だ。

 さらに、病気で苦しむ子供たちをゲームや玩具の力で支援するチャリティ団体「Child’s Play」や、ゲームを通して障がい者支援活動を行う組織「Able Gamers」など“ゲームチャリティ”は枚挙に暇がない。これらのチャリティーはネット上のオンライン募金がメインだが、最初に挙げたスウェーデンの空港に設置されたレトロゲーム機の例を鑑みれば、日本国内でも死蔵されている古いゲーム筐体がけっこうあるのではないだろうか。そしてこの時代のゲーム機はシンプルが故に国境、国籍を超えてグローバルに楽しまれているのが特徴だ。必ずしもチャリティーに活用されなくとも、今後の東京五輪を見据えた“観光立国”計画の中、外国人に人気のスポットや施設に設置するなどして有効に“再雇用”できるケースは多々あるのではないだろうか。
(文/仲田しんじ)

【参考】
・Engadget
http://www.engadget.com/2015/03/16/sweden-airports-arcade-cabinets-charity/

・Gamers for Giving
http://gamersforgiving.org/

・Ventito
http://wdc.com/ventito/gaming/features/the-top-10-gaming-charities-giving-with-gaming
ほか

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