ついにエロマンガ壊滅へ!? トーハンの取引条件変更で、エロ系出版社が続々と破綻秒読みか…

2015.03.31

TOHAN公式サイトより。

 数カ月以内に、エロ本出版社が倒産する!? それも一社や二社でなく……。

 今、エロ系を主力とする出版社が壊滅的な打撃を受けることとなる異常事態が発生している。その原因となっているのが、大手取次であるトーハンによる取引条件変更の強要だ。

 発端となったのは、今年2月にトーハンが中小取次である協和出版販売の株式を買収し子会社化したこと。協和出版販売はエロ系を主力とする取次で、特に地方のDVDなどを扱う郊外型書店に対しては強い営業力を持っている。

「協和出版販売はエロ本、とりわけエロコミックの販売に長けている取次です。ちゃんと売れる書店に配本してくれるので、エロコミックの売り上げはトーハンと同じくらい。出版倫理懇話会系【註:茜新社やコアマガジン、辰巳出版などが加盟する業界団体】の版元では、売り上げの7割近くが協和出版販売の扱いになっているところもあるんです」

 取材に応じた出版社の社員は、怒りを込めながら語る。

 2月の子会社化を受けて、3月に出版社各社には協和出版販売とトーハンの双方から通達が行われた。これによれば、4月11日の搬入分よりすべてトーハンの取り扱いとすることが記されている。ところが、問題は通達に記されていない部分にあった。トーハン側は、これまでの協和出版販売と出版社との取引条件をすべて反故にし、すべてトーハンの条件にすることを一方的に通告していたのだ。

「トーハンの条件では、卸値が5%は下がります。うちのような小さな版元でも、(版元に入ってくる金額としては)月に数百万円は変わってきます」(前同)

 さらに、精算の方法や支払時期もすべてトーハンの条件にするという通告もなされている。

「協和出版販売では、書店からの注文分(の代金)は全額翌月支払いでした。ところが、トーハンの場合は、“注文分の代金の7割を版元に支払い、残り3割は3カ月後に支払う”という条件。さらに部戻し【註:出版社・版元が取次へ本を卸した時に、売り上げ金額から差し引かれるもの。通常は本体価格の3~5%】も、協和出版販売は6カ月後に支払う条件だったのが、トーハンは1カ月後に支払わなければならないことにするというのです」(前同)

 出版社にとっては、卸値が下がって利益が減るだけでなく、収益の入ってくるサイクルががらりと変わってしまう。余裕資金を保持している出版社など、ほとんどない現在、支払いのサイクルが変われば、外注のマンガ家やライター、カメラマンなどに払う原稿料から社員の給料まで、一気に支払い困難になってしまう可能性もあるのだ。

 もちろん、出版社側もトーハンの一方的な条件を受け入れる気はない。

「これまで協和出版販売に卸していた冊数は、トーハンに搬入しても同様の条件で扱うように求めたのですが、話を聞くふりはしても受け入れる気はまったくないようです。“もし、トーハンの条件を承諾しないなら、雑誌コードは卸さない【註:その出版社の雑誌を書店に配本しない】”と、露骨に脅してきてるんですよ」(前同)

 出版社各社は共同でトーハンとの交渉を継続していく方針だ。

「トーハンに卸して委託配本するのを取りやめて、書店からの注文で対応しようとする出版社もあるようです【註:取次を介さずに、書店と出版社間で流通させようということ】。しかし、やはり取次の委託配本がなければ数が伸びません。書店も本が入ってこなくなれば困るわけで、誰も得をしませんよ」(前同)

 このままトーハンが自社に有利な条件を強行すれば、出版社の首が絞まっていくことは確実。今、エロ本、エロマンガに危機が迫っている!
(取材・文/昼間 たかし)

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