姫乃たまの耳の痛い話 第23回

アイドルから事務所社員へ……そして始まった、生活のために抜け出せない社長との肉体関係

 その時に激しく抵抗しなかった理由を、「眠かったし、ぼうっとしていたし、雇ってくれた恩もあったから」と彼女は話します。「別にそんな純情ぶるような年齢でもないし」とも。彼女の目の下のクマが、じんわりと広がって見えたような気がしました。

 その日から、社長は当たり前のように、彼女の体を求めてくるようになりました。

「いま思えば、最初から、これが狙いだったのかもしれないですね」

 相変わらずの激務をこなしながら、打ち合わせや、スタジオに向かう道の途中で、何度も何度も事務所を辞める場面を思い浮かべました。しかし、ライブや撮影でかつてのメンバーに会うたびに、その決意は揺らいでしまうのです。

 いま事務所のトラブルが表沙汰になったら、メンバーのイメージに傷がつきます。それに彼女が退職することで、次の犠牲者がでることを恐れたのです。自分のためにも、あの楽しかった地下アイドル時代の思い出を守りたい一心でした。

 しかし、実際のところ、最も重要な問題はお金がないことだったのです。主に外での仕事をこなす彼女が、仕事中の経費を立て替えることも多かったのですが、徐々に社長からの支払いが遅くなっていました。「毎日、顔を合わせているし、言えばいつかもらえるだろう」程度にしか考えておらず、気がつけば事務所から実家に帰省するための交通費すら持ち合わせていませんでした。

 「私ね、社長とセックスする時、目をあけていられないんです」と、彼女は言いました。毎晩、やってくる社長に怯えることもなく、ただただ気だるい気持ちで迎え入れます。目を閉じて、現状から抜け出す最良の方法を考えながら。

●姫乃たま
1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。地下アイドル/ライター。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。

[地下アイドル姫乃たまの恥ずかしいブログ]http://himeeeno.hatenablog.com/
[姫乃たまのあしたまにゃーな]http://ameblo.jp/love-himeno/
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