ねこはいずこへ? 異色のアイドルSF映画『世界の終わりのいずこねこ』初日舞台挨拶 監督“主観”レポート!

2015.03.14

 3月は別れの季節。この“卒業”シーズンに、すでに活動を終了したアイドルの映画が公開された。『世界の終わりのいずこねこ』は、大阪のソロアイドル・いずこねこの最初で最後の主演映画。原因不明のパンデミックで東京が壊滅し、人々が大阪に避難した近未来が舞台の終末的SFストーリーである。クラウドファンディングで制作資金を募ったところ目標の150万円を大きく上回り、460万円が集まって無事に企画が成立した。

 昨年10月に完成し、その後はパトロン限定試写会、地方上映、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での先行上映を終えて、いよいよ3月7日から新宿K’s Cinemaにて封切りとなった。初日舞台挨拶は大盛況で、なんと全席完売! そのレポートを、竹内道宏監督の主観視点で撮影の思い出とともにお届けします。

■舞台挨拶中に謎の握手!

“いずこねこ”ってそもそも何を指すのか。
最初に企画プロデューサー・SPOTTED PRODUCTIONSの直井卓俊さんからお話を戴いた時、いずこねこのことを詳しくは知らなかった。当時は茉里さんのことを「いずこねこ」って呼んでいた。「いずこねこさん」と呼ぶと違和感がある。なぜなら、いずこねこはプロデューサーのサクライケンタさんと茉里さんの二人で成り立つもの。とはいえ、「いずこねこの茉里さん」というのも、まるでグループアイドルの一人のような響きになる。

 初めて観に行った東京キネマ倶楽部のワンマンライブで、ステージにいる女の子に「いずこねこー!」と呼ぶ人は誰もいなかった。「茉里ちゃーん!」という声援の中心にいるその女の子こそ、まさに猫のような人だった。「だった」って、まるで過ぎ去った季節のように振り返ってしまった。たしかに、春のように温かければ、夏のように熱く、秋のように切なくて、冬のように澄み切っていた。映画の撮影期間は昨年夏のたった10数日間だったが、1月から12月まで網羅できた。猫のように正直で、人懐っこくて、時折アグレッシブな茉里さんの色んな表情が見えた。活動を終了したはずが、映画の公開によって12月から13月、14月、15月へと延命し、それが本作のエンドクレジットで流れるいずこねこのラストソング『i.s.f.b』の歌詞に重なる。

 偶然にも3月という“卒業”の季節に映画が公開されて、茉里さんが10代を捧げてきたいずこねこが本当に終わってしまう。会場の新宿K’s Cinemaに着き、「これで最後になるのか」と物思いに耽りながら楽屋の扉を開いた。

「あーーーっ!監督ぅーーー!監督ぅーーー!」

 感傷はあっけなく潰された。茉里さん、相変わらず元気の塊である。屈託のない笑顔に表も裏もない。楽屋と舞台挨拶までまったく変わることのない姿がそこにあった。

 石井将助監督の司会のもと、茉里さんと竹内が登壇する。ぎっしり埋まった客席に向かって、映画が始まった経緯について竹内が話す。

「この映画は、本作に出演もされているマンガ家の西島大介さん(ミイケ先生役)にプロットを書いてもらい、西島さんから指名をいただき監督をやることになりました。また、クラウドファンディングのCAMPFIREさんを通じて、いろんな方々にご支援いただいた制作費で作りました。企画をいただいた時は、いずこねこの活動が終わるということではなかったんですが、企画段階で突然終了することになりまして、それで“終わる”ということをテーマに作品をつくりました」

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