ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ソング」番外編

宝塚で上演中の『ルパン三世』! チケットが取れない人気作を“勝手に作品レビュー”

2015.03.15

写真:東京宝塚劇場雪組公演『ミュージカル ルパン三世ー王妃の首飾りを追え!/ファンタスティック・ショー ファンシー・ガイ!』プログラム(2015年)

――宝塚ヲタの女医、wojo(ヲジョ)が宝塚の名曲を皆様にご紹介! ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ソング」!!(の番外編)※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

 宝塚ファンの女医・wojoです。15年2月20日より上演開始された、宝塚歌劇団雪組東京宝塚劇場公演『ルパン三世ー王妃の首飾りを追え!ー』の人気がすごいことになっています(宝塚大劇場では15年元旦より上演開始され、すでに終了)。いつもは、連載『ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ソング」』において宝塚の楽曲について熱く語らせてもらってる私ですが、今回は番外編として、この『ルパン三世』について語らせてください。

 宝塚版『ルパン三世』は予想以上にチケットが取れず、右往左往する毎日です(あっでも医者としての業務はきちんとやっております……)。『ルパン三世』という作品自体の知名度の高さ、人気の高さが、チケット難の一因なのでしょう。「(不動の人気演目である)『エリザベート』以上にチケットが取れません……」(宝塚ファン)との声も聞きます。東京公演の初日にはヤフーニュースのエンタメ欄のトップに原作者のモンキー・パンチ氏と作曲家の大野雄二氏のコメント記事が掲載されるなど、その注目度の高さには、一介の宝塚ファンとしてまずビックリです。

 内容はというと、ルパン三世らが18世紀のフランス革命期にタイムスリップし、そこで出会うマリー・アントワネットらとひと騒動起こす、という宝塚オリジナルストーリー。舞台の幕が開くと……ルパン三世や次元大介、石川五ェ門らがとにかくかっこいい!! 次元などは宝塚ではあまり見たことがないリアリティがある男性像であり、「宝塚でも、こういう男性がありなのか!」と新鮮です。そしてルパン三世も、決して有名なアニメ版の物まねではないものの、キャラクターの造形が細かく、なんというか……トップスターの早霧せいなさんは、ルパン三世にすごく似ておいでです!

 あ、でもそういえばタカラジェンヌはみな、芸達者なのでありました。たまに機関誌「歌劇」や「宝塚GRAPH」、はたまたCS番組『TAKARAZUKA SKY STAGE』などに漏れ出てくる彼女らの宴会芸はハイレベルです。余談ですが、以前CSで拝見した、「あたりまえ体操」をパロディにした「男前体操」などはもう抱腹絶倒ものでした。そう、歌やダンスだけではないのでした、彼女らの特技は。こんなところでもマルチな芸達者ぶりが発揮されているのです!

 一方で、「内容が軽すぎる」との古参ファンからのご意見もあります。確かにwojoも、正月に宝塚大劇場に観に行った際には「お、おう、正月らしからぬノリノリの作品だな……」と驚いたのは事実です。フランス革命という時代設定自体は、宝塚が得意とする分野ではあります。フランス革命まっただ中の話である『ベルサイユのばら』(以下、『ベルばら』)や、革命直後のジャコバン派恐怖政治時代を描いた『スカーレット・ピンパーネル』、またつい先日の2月に千秋楽を迎えたばかりの宙組公演『白夜の誓い』も、舞台こそスウェーデンですが、ほぼ同時代の話です。しかし、どの演目も超シリアス路線……。

 また、マリー・アントワネットという人物も、宝塚では『ベルばら』でおなじみです。けれど『ベルばら』に出てくるマリー・アントワネットはそもそもあまり動かないし、超シリアスなキャラクター。一方で『ルパン三世』に出てくるマリー・アントワネットは、はつらつ、生き生きとしています。ルパンからは「マリーちゃん♥」と馴れ馴れしく呼ばれ、一緒に夜のパリにお忍びで繰り出したりもしてしまうのです。

 そして、我々宝塚ファンが『ベルばら』を観る度に涙して心を痛めていたのが、マリー・アントワネットの処刑シーンです。史実がそうなのですから当たり前ですが、『ベルばら』ではいつもマリー・アントワネットは処刑されてしまいます。処刑場へと向かうシーンが見せ場のひとつになっているほどです。しかし『ルパン三世』では、ネタバレになるので恐縮ですが、なんとルパン三世らによってうまいことギロチン処刑を免れて、夫や子らとともに生き延びるのです! 「あれっ、いつも処刑されてたけど、実は生きてたんだね……!」と感極まる我々宝塚ファン……。今回の『ルパン三世』を見て、『ベルばら』で痛んでいた心が癒やされました。

 ちなみに、ルパンらと共にタイムスリップした銭形警部が、世を忍ぶ仮の姿としてジャコバン派恐怖政治の手先になっているというくだりには、会場中からどはっと笑いが起きておりました。ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』でロベスピエールによるジャコバン派恐怖政治の不気味さを実感させられていただけに、「まさか銭形警部が、あんなに恐ろしい奴らの手先に……!」と、その異色のコラボレーションに、思わずツボってしまうようです。

 ……などなど、いろいろと指摘してまいりましたが、要するに『ルパン三世』は、宝塚歌劇の大いなるパロディであるといえましょう。昨年100周年を迎えた歴史ある宝塚の厳格さを、ルパン三世たちが容赦なく壊していく101周年目の幕開き。これを年初の第1作にもってきた歌劇団はすごい! その心意気もあって、チケットもバカ売れしているのかもしれませんね。

 この宝塚版『ルパン三世』、トップコンビのお披露目公演であり、また主要スターたちの退団・組替え後の公演といった話題性もあり、宝塚ファンとして見逃せない作品となっています。チケットが取れなくてとても哀しいのですが、しかし今回はなぜか、取れなくても「しょうがないか」と微笑ましくも思えます。『ルパン三世』という作品目当てで足を運ぶ、宝塚を見たことがない方々が、宝塚のファンになってくれさえすれば……。

『ルパン三世ー王妃の首飾りを追え!ー』。3月22日まで東京宝塚劇場で上演中です!

●プロフィール
wojo(ヲジョ)
 都内某病院勤務のアラフォー女医。宝塚ファン歴20年で、これまでに宝塚に注いだ“愛”の総額は1000万円以上。医者としての担当科は内科、宝塚のほうの担当組は月組。
 去る3月9日、兵庫県の宝塚大劇場では星組公演の千秋楽を迎えました。超人気トップコンビである柚希礼音さん、夢咲ねねさんの退団公演ということでこれもチケット難でしたが、当日のヤフーニュースには、女優・相武紗季さんのお姉さんである音花ゆりさんもこの公演で退団するという話題で記事になっていました。
 以前、相武さんがテレビ番組で「なんでもできる姉に、ずっとコンプレックスを抱いていた」と話しておられるのを拝見したことがあります。音花さんは見た目が非常に清楚な“ ザ・タカラジェンヌ”な方である上、歌・踊り・演技、すべて完璧な方でもありました。しかしwojo個人としては、相武さんご自身も宝塚に入っておられたら、いいところまで出世されたのでは……などと考えてしまいます。なんといってもかわいくておいでで、しかもあの目力をお持ちですから。もし入っておられたら、どこかの組のトップ娘役になったりして、宝塚の歴史が変わっていたかもしれません……。

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