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【武藤彩未インタビュー】「自分の中に何人もキャラを作りたい」渋谷公会堂ライブに至るアイドル・武藤彩未の今

2015.03.13

■“自分の中に何人もキャラを” カバーを経て、彼女が手に入れた“独自のアイドル性”

 筆者の私が武藤彩未を認識したのは、ソロデビューの直後。このライブでは、「可憐Girl’s」「さくら学院」のころからのファンが温かく迎えてくれたという。

武藤:「2013年の7月のShibuya O-EAST、あのときは1年ぶりにファンの皆さんの前に出て。でも、ステージに立った瞬間に一斉に“おかえりー”って声がして。そこからはもううれしくて。緊張なんかなくなっちゃって。つい泣いちゃいました」

 まもなく、私の周囲から、「歌がすごくうまい!」「1980年代アイドルのカバーで、意表を突かれた。泣けた」という現場ファンの声が聞こえてきた。軽い気持ちで、9月のSHIBUYA-AXの2ndライブに参戦。まだカバー曲中心のライブだったが、「セシル」のカバーを筆頭に、すべてが武藤彩未の曲になっていることに驚いた。この1本で私はすっかり“武藤彩未推し”になり、都内のライブに通いつめることに。

武藤:「ソロは好きなものから、と。私の大好きな80’sアイドルさんのカバーから始めたんです。1980年代はアイドルの全盛期だったし、“アイドルのルーツを探る”って意味でも80’sがいいね、って。“生まれる前から松田聖子さんが大好き”っていうのは前提にあって(笑)、そのうえで、スタッフの皆さんが選んでくれた知らない曲も勉強しました」

 と、彩未さんはきっぱり。80’sアイドルが青春だったプロデュース側の意向かな、とありがちな想像をしていたけれど、実際は全然違った。

 歌詞がストレートに伝わる彩未さんの声質、歌い方も、そのテーマにマッチしている。80年代当時には派手なステージに惑わされて見えなかった歌詞の中の風景が、今、目の前に広がる不思議。14年4月の『永遠と瞬間』リリースを機に、ライブはカバー曲ではなく、ほぼオリジナル曲になった。“歌詞が伝わるように”というのは、例えば「パラレルワールド」など、今の流行であるEDMの中でも沈んでしまわない彩未さんの歌声があればこその話。まず声があり、それを周りの楽器が支えるスタイルもいい。

武藤:「そうですね。“歌詞が伝わるように”は、いちばん意識しています。最初に80’sを歌ったことが、歌詞を大事に思うきっかけになりましたね。今、自分のオリジナル曲にその経験が生かせたかな。歌詞を理解して、何回も何回も歌って読んでって、常に意識してました」

 デビューからのライブのセットリストを見返しながら、「カバーも勉強になりましたけど、わー、もうこの頃(14年春)からほとんど私のオリジナル曲ですね」と、本当にうれしそうな彩未さん。自らを“歌い手”という、歌詞に対する彼女のこだわりが、懐かしさと現代のサウンドを併せ持つ“新しいアイドルPOP”を生み出していた。

武藤:「1stアルバム『永遠と瞬間』では、松田聖子さんなどの曲を手がけた三浦徳子さん、森雪之丞さんにも作詞していただきました。おふたりともライブに来てくださって、三浦さんは“女神に見えた”なんておっしゃって。それで、『女神のサジェスチョン』って曲を書いてくださったんです。もう、ほんとに幸せ。ニューアルバムの『I-POP』でも、それぞれ1曲ずつ書いてくださっています」

武藤:「今までずっとグループだったので、ソロ・プロジェクトと聞いて、やっと武藤彩未として成長を認めてもらえたのかな、と。不安よりもうれしさのほうが大きかった」

 幼いころからの芸能活動の経験からか、ソロデビュー時には、もうしっかり、“アイドル・歌い手の武藤彩未”をセルフプロデュースできる素地があったようだ。

 グループ時代は自分のパートを完璧にこなそうとがんばってきた。でも、ソロ・プロジェクトで「ひとりって何をしたらいいんだろう」と立ち止まる瞬間もあったはずだが、「ライブを始めたときにはもう、“いろいろな顔を見せたい”という意識がありました」と。彩未さんはライブの練習、レコーディングに取り組むうちに答えを見つけ出していた。

武藤:「80’sのアイドルさんたちは、ひとりずつホントに個性があったじゃないですか。絶対にほかの人とかぶらない、その人独自のよさがあって。だからひとりずつ際立っていた。それなら私は“自分の中に何人もキャラを作りたい、曲それぞれの主人公になりたいな”と思って。これは、カバーをやらせてもらったから気づけたことですね」

 今までのアイドルの多くは、ファンの共感を誘うような物語を持っていた。でもそれは、共感できない人の心には届きにくいということでもある。今の武藤彩未の歌声からは、それとは正反対の方向からアプローチをしているような印象を受ける。ニュートラルなまっすぐな歌声が、聴く者の物語に寄り添い、励まし、元気をくれる。『永遠と瞬間』でも感じられたことだが、『I-POP』でその“独自のアイドル効果”がさらに強化されたようだ。

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