『耳をすませば』に立花隆が出演したきっかけとは? ジブリが文化人を声優に起用する理由

2015.03.09

 3月5日放送の『ゴロウ・デラックス』(TBS系)に、『田中角栄研究』や『自分史の書き方』(ともに講談社)などの著書で知られるジャーナリストの立花隆氏が出演。立花氏のキャリアの中には、スタジオジブリの映画『耳をすませば』で主人公・月島雫の父親役で声優デビューしており、番組ではそのことについても言及していました。ジブリ作品の声優といえば、『となりのトトロ』にコピーライターの糸井重里、『風立ちぬ』でアニメ監督の庵野秀明など、俳優はもとより文化人などを声優として起用し、たびたび話題になっています。今回、立花氏の話からジブリが声優外の人を起用する理由の一端が垣間見えました。

 番組中、立花氏は『耳をすませば』への出演のきっかけについて、スタジオジブリのスタッフ全員を集めた勉強会に講師として参加したことを挙げています。その縁で、ジブリのスタッフから『耳をすませば』の出演オファーがあったとのこと。

 立花氏の声優起用については、2013年5月に立花氏がゲスト出演したラジオ『鈴木敏夫のジブリ汗まみれ』(TOKYO FM)で詳細が語られています。ジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏によると、宮崎駿監督は『耳をすませば』の父親役に対して“現代の父親像”を求めていたそう。鈴木氏いわく「役者さんだと、いわゆる“お父さん”になっちゃう。昔の一家の大黒柱のお父さんと違い、現代のお父さんはお父さんであって、お父さんでない。自分の好きなことをやってる存在感がほしい」と語っています。

 その中で、雫の父親役として白羽の矢が立てられたのが立花氏。鈴木氏は起用の理由について「(声優として)上手い下手は関係なくて、とにかく茨城県・水戸の言葉で訛りがほしかった」からとも語っています。水戸で育った立花氏の第一声を聞いたとき、宮崎駿監督は大喜びしたとか。鈴木氏も立花氏の声優ぶりについて「雫に対しての言い方がね、やっぱり本物のお父さんなんですよ。役者さんにはできない」と絶賛しています。

 同じく、『となりのトトロ』で主人公の父に糸井氏を起用した理由について、宮崎監督は「声優さんの声をいろいろ聞いてみたんですけど、みんなあったかくてね、子どものことを全面的に理解している父親になりすぎちゃうんですよ。【中略】それで、これはどこか別のところから人を連れてこなくちゃいけないって話になりまして」と(『ジブリの教科書3 となりのトトロ』[文藝春秋]宮崎駿・糸井重里対談)語っています。また、同書で宮崎監督は声優について、映画制作の中で声優の器用さに頼ることもあるとしつつ、“存在感のなさ”に欲求不満になるとも評していました。

 宮崎監督もといジブリは、作品のキャラクターの声について“素人”だから出せる味、雰囲気にこだわっているよう。ネットでたびたび物議を醸すジブリ作品の声優ですが、これも一種のジブリ哲学と言えそうです。

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