アニメ『艦隊これくしょん -艦これ-』第9話 まさかの提督戦死回!? 私は“かい”になりたい…

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

■『艦隊これくしょん -艦これ-』
第9話「改二っぽいっ?!」

【今週の極私的見どころ!】
 空気は読めなくても、金剛(CV:東山奈央)はいいヤツ。

 ゲームでは最初から提督にぞっこんということで、提督LOVE勢の筆頭扱い、基本的に二次創作でもそれが前提の金剛。なにかと提督にラブ全開で迫るキャラが定着した上に、アニメではかなり空気が読めないキャラになり果ててました。でもね、号泣する吹雪ちゃん(CV:上坂すみれ)に対し、すぐに何かを察して抱きしめるあたり、よくできたお姉さんではありませんか! まあ、就役が1913年(吹雪は1928年)なんで、実際だいぶお姉さんなんですけどね。でも、ホントに可愛いと思ったのは、お姉様が吹雪を抱きしめている姿を見て「ヒエーっ!」と言うためだけに登場した比叡(CV:東山奈央)ですけどね。

【今週のオススメ度】
★★★★★
(前回のあらすじはこちら

 今回のタイトルは物語の一部にすぎません! まさか、こんなに濃い物語が展開することになるなんて、驚きでありました。

 タイトルの時点で、みんな夕立ちゃん(CV:タニベユミ)が改二になることは想像できましたね。なにせゲームでは提督にとって、夕立ちゃんは是非とも改二にしておきたい有能な駆逐艦。その火力はとても駆逐艦とは思えません。

 そんな夕立ちゃんが、どうやって改二になるのか……それを期待する一週間でした。

 冒頭、作戦室でいつものメンバー、長門(CV:佐倉綾音)と陸奥(CV:佐倉綾音)と大淀(CV:川澄綾子)が語っているのは、MO攻略に向け、ここトラック島に多くの艦娘が集結しているということ。

 そこに「大変です!」と飛び込んで来たのは羽黒ちゃん(CV:種田梨沙)ではありませんか。いったい何事かと思えば、海岸で妙な光を放っている夕立ちゃんが。「なんか、ちょっと熱っぽいぽい」。そういう夕立ちゃんに、睦月ちゃん(CV:日高里菜)は「まさか恋」だとか、雷(CV:洲崎綾)は「質の悪い燃料をとったんじゃないか」とか爆発するとか、てんで勝手なことを言っています。そこへ現れた長門は、すぐに夕立に工廠への移動を命ずるのです。

 さて、心配になり工廠へとやってきた吹雪ちゃんと睦月ちゃん。工廠の中はカーテンでいくつのも区画に仕切られています。そこは吹雪ちゃんが「ここ、工廠だよね」と不安を抱く場所でした。

 カーテンの中を覗けば、魚雷の調整と称してイチャついているようにしかみえないレズカップル……大井と北上(CV:共に大坪由佳)が。さらに夕立ちゃんを探してカーテンをめくっていけば、不気味な笑いを繰り返しながら得体の知れない機械を製造している夕張(CV:ブリドカットセーラ恵美)。さらにベッドに寝転がり「提督ぅ! 耳は、くすぐったいです~」と、まるで催眠オナニーにかかっているみたいな金剛が。

「暖かいから、みんな気持ちがおおらかになっているんだよ」

 睦月ちゃんは、あまりに性善説すぎる感想を述べます。

 そして、最後に開けたカーテンの向こうには、下着(白!)姿のお姉さんが。慌ててカーテンを閉じた二人ですが、それこそが改二になった夕立ちゃんだったのです! その姿に、駆逐艦のみんなは一様に驚きの声を挙げます。けれど、ここでシニカルな言葉を吐いたのが島風(CV:佐倉綾音)でした。

「私は吹雪ちゃんが先になると思ったけど」

 ええ、駆逐艦としては唯一艦隊の旗艦となった吹雪ちゃん。艦娘として夕立ちゃんに先を越された悔しさゆえに、複雑な気持ちを抱いています。そんな吹雪ちゃんの気持ちをよくわかっていたのが、大和(CV:竹達彩奈)と赤城先輩(CV:藤田咲)です。腐らず続けていけば必ず結果はついてくることを優しく諭す二人。そして、再び頑張る気になった吹雪ちゃんの頭を赤城先輩は優しく撫でるのです。赤城先輩に頭を撫でられて「今日は髪の毛を洗わない」だの「ランニングしてくる」だの、ハイテンションすぎて、睦月ちゃんもちょっと引き気味です。

 そんな吹雪ちゃんと夕立ちゃんに、長門からお呼びが掛かりました。新たな辞令……それは、夕立ちゃんの第一機動部隊への移動。そして、吹雪ちゃんには第五遊撃隊の解散と、鎮守府への帰投という指示です。
 
 いきなりの戦力外通告!

 睦月ちゃんがいくらなぐさめても、吹雪ちゃんは「気づかない間に失敗しちゃったみたい」と、夜の砂浜を走ります。そして……偶然ぶつかった金剛の胸の中で、号泣するのでありました。

 翌朝、悪夢で目覚めて岸壁に立った吹雪ちゃんは、神通(CV:佐倉綾音)の指導で猛訓練に励む夕立ちゃんを見つけます。そこにやってきた川内(CV:佐倉綾音)は話します。ここに来るずいぶん前、吹雪ちゃんが旗艦になった頃から、もっと練度を上げたいと夕立ちゃんが訓練を始めていたことを。水雷魂を忘れちゃダメだと言っていたことを……。

 迷いの吹っ切れた吹雪ちゃんは鎮守府へ。睦月ちゃんと最上(CV:洲崎綾)も一緒です。それを見送った長門のところへ、大淀が鎮守府からの指令を持ってやってきます。

「MO攻略の中止命令」

 ここまで艦娘が集結して突然の中止、さすがの長門も提督の意図が見えません。

 でも、それはすぐに明らかになりました。

 鎮守府を目の前にして、最上の電探が敵を捉えます。同時に三人の上空を通過していく敵機の姿が! 一刻も早く鎮守府へ! そして三人が見たのは、すでに深海棲艦の攻撃で壊滅した鎮守府の姿でした。提督の指示で間一髪難を逃れた間宮さん(CV:堀江由衣)ですが、「提督だけは司令室に残っていたようなの……」と。艦娘総出による復旧作業。集結した艦娘たちの前で長門は告げます。

「提督は、今現在も行方不明だ」

 そして、長門は提督の残した作戦指令書があるといいます。そして、吹雪に告げるのです。

「改になれ!」

 えええええ!

 いやいや、視聴提督のみんなも同じ想像をしていたのではないでしょうか。「夕立も改二になって、いよいよMO攻略だな、今回は」と。それが、まさかの提督戦死!? 回ですよ。実のところ、艦娘たちが集まっているのがトラック島ということもありまして、史実におけるトラック島空襲……日本海軍の一大拠点が壊滅した、あの悪夢みたいな出来事が起こるんじゃないかと危惧をしておりました。でも、迂回して鎮守府が直接攻撃を受けて壊滅だなんて! 長門は戦力が薄くなっているところを突かれた云々と言ってはおりますが、致命的な戦略ミスです。そして、提督まで……。

 アニメにおける提督……通称アニメ提督に対しては、視聴提督からも辛口の批判が続いてきました。空母機動部隊との遭遇を想定せずに出撃させた、如月ちゃんを轟沈させた作戦立案能力の低さ。あるいは、高速修復材(バケツ)を枯渇させてしまったことも。要は無能かつ「いたんだか、いなかったんだか、よくわからなかった」(Twitterで散見された言葉)存在でした。その提督がついに行方不明。戦争において行方不明とは、戦死とほぼ同義語です。無能だけで存在感を示した挙げ句に戦死とは……視聴提督もこれには唖然とするしかないです。

 ネット上には、史実を反映したアニメ提督の人物像に対する総括が早くも現れていました。いわく辻政信か神重徳か。

 辻政信は、多くの人が日本の敗北した原因を作ったとして記憶している陸軍の軍人です。ソ連と満州国の国境紛争から始まったノモンハン事件では、政府や軍の意向も無視して勝手に全面戦争を企画。停戦後には、現場の将校に敗北の責任を押しつけて自決を強要しました。その後、太平洋戦争中のマレー作戦では、作戦参謀なのに最前線で戦闘に参加して周囲を唖然とさせたり。おまけに捕虜を皆殺しにする指令を勝手に出したり、敗北の責任は部下に押しつけたり……最悪の行動を取ったあげく、敗戦後はアジア各地に潜伏し、かつての部下が戦犯として処刑されるのを尻目に逃げ切った最低の人物です。あげく、日本に帰国後は衆議院議員に。最後は北ベトナムに向かおうとして、行方不明になりました。内戦中のラオスでスパイ容疑で処刑されたといわれています。

 神は陸軍の辻と同じレベルで、最悪の軍人として歴史に名を残しております。日本軍へのニューギニア方面への物資輸送作戦の途上で輸送船団が全滅したビスマルク海海戦(1943年)を立案した際には、敵の航空兵力が優勢なため全滅が危惧されましたが、「全滅覚悟でやってもらいたい」と強行して、その通りにしてしまった人物です。レイテ沖海戦の後には敗北した理由を「勇気が欠けていた」と無茶な総括をし、ついに大和の沖縄特攻を立案し実現させましたが、当然自分は参加していません。そのまま敗戦まで生き残りましたが、ポツダム宣言受諾から一カ月後に移動中の飛行機が津軽海峡に不時着、そのまま行方不明になりました。

 いやね、二人とも19世紀前半までの戦争だったら英雄になっていたと思われる人物です。

 でも、チャーチルが第一次世界大戦を総括した名文「戦争からきらめきと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。アレキサンダーや、シーザーや、ナポレオンが兵士達と共に危険を分かち合い、馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。そんなことはもうなくなった」。これが示すように、20世紀以降の戦争で指揮官が最前線で「俺に続け!」と突撃したり、勇気だけで不利な状況を突破するのは無理です。要は二人とも総力戦体制の組織には向かない存在だったのですね。

 現代社会でもワンマン社長が天才型のひらめきで成功しているけれど、部下が腰巾着だけでダメダメという会社はよくありますよね。まあ、二人ともそんなタイプだったのでしょう。

 さてさて、アニメに立ち返ってみて……。まさにアニメ提督もそんな存在でしたね。こーゆー天才タイプは、意外と現場では部下の信頼は篤いものです。なにしろ勇気を大事にするから、理屈とか制度よりも人情が一番なのです。でも、なにか大きなプロジェクトを行う中で、次第にほころびは見えてきます。そして、人の心は離れていくのです。バケツは枯渇しているけれど、作戦計画は続行、鎮守府の防衛なんか顧みずに、全艦出撃しまくり。後先を考えない蛮勇が過ぎます。おまけに、敵の動きを察知して戻すのが、まず吹雪ちゃんからって……。本編中で鎮守府が攻撃されたことを知った長門は「まさか、提督はこの動きを察知して……」と言っていましたが、「察知して」じゃないですよ!

 そして、艦娘たちも「うちの提督は大丈夫か?」と疑問を抱いていたということが、今回は明らかになりました。だって、提督が行方不明だというのに、復旧作業を楽しそうにやっているんですよ! 艦娘たちの心の中は、MO攻略とかとんでもない作戦が寸前で中止になって内地に帰還できてよかったね! という感じでしょう。なにより、提督が行方不明だというのに、あんまり誰も心配している風ではありません。間宮さんが最後に司令室にいたのを見たと言っているのに、探している気配もないんですから。

 ここで、提督戦死で盛り上げて来るとは、ホントに予想外。そして、まったく悲しんでいる様子もない艦娘たちの様子も予想外であります。先の展開ももはや読めません!

 あと、最後の長門の「改になれ!」というセリフに、ネット上で「海の底の……」とか「それは戦後の話」とかいう書き込みが次々と挙がるあたり、視聴提督の年齢層も読めませんよ! みんな「お父さんは生まれ変わっても人間にはなりたくありません、人間なんていやだ……(中略)どうしても生まれ変わらなければならないなら、私は貝になりたい……」と絞首台を昇っていくフランキー堺の姿に泣いた『私は貝になりたい』を知ってるのかよ! 果たして来週からの展開は……せめて一週間くらいは亡き提督を偲んでゲームにいそしみましょうか。

雪に埋もれた ハボマイにゃ
死んだ親御の 墓もある
飲ませてやりたや 好きな酒
あなた代わりに 注がせてね
(アリューシャン小唄)
 
(文/昼間 たかし)

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