『ドラゴンボールZ』新作映画は流血シーンを抑えてる!? NHKが取り上げた日本アニメの海外戦略

2015.02.25

海外輸出を視野に入れた“標準化”の例として挙げられた『ドラゴンボールZ 復活の「F」』公式サイトより。

 2月23日に放送された『クローズアップ現代』(NHK)では、「逆襲なるか 日本アニメ ~海外輸出・新戦略の行方~」として、日本アニメの海外進出とその戦略について特集していた。その戦略とは、表現においては「アニメの標準化と現地化」、ビジネスにおいては「海外へのネット配信の強化」。番組を下地に、改めてこれらのテーマを振り返ってみよう。

 まず、海外戦略が注目を集める背景には、“日本のアニメが海外で人気”と言われてから久しいものの、アニメ製作企業の海外売上が右肩下がりとなっている現状がある。この海外売上(推定)は2005年の313億円をピークに、2013年には169億円まで減少(日本動画協会調べ)。その理由について、番組に登場した電通コンサルティング・シニアディレクターの森祐治氏は、日本の映像作品全体での売上低迷を指摘する。また、識者として登場したジョン・イーサム氏は、これまで日本側にこうしたコンテンツを海外に売るためのノウハウが培われなかったとしていた。

 その打開策として、番組で挙げられたのが「アニメの標準化と現地化」と「海外へのネット配信の強化」だ。番組では紹介されなかった周辺事情と共に見ていきたい。

 まず、アニメの“標準化”とは、企画段階から海外の層を意識したアニメ作りを指す。同番組では、老舗のアニメ制作会社・東映アニメーションを取材。同社が製作を手がけている『ドラゴンボールZ 復活の「F」』(国内では今年4月公開予定)は、世界各国の表現規制に配慮し、流血シーンをできるだけ避けるという“標準化”がなされているそう。

 日本アニメの表現と海外での規制については、ファンの間でもたびたび話題に上るテーマだ。血の描写以外にも、キャラクターの持つタバコや銃が改変されたり、女の子キャラのスカート丈が長くなるなど、日本のアニメは放送される国に合わせてさまざまな修正が入ることも多い。極端な例では、インドネシアでアニメ『クレヨンしんちゃん』が「ポルノ」と指摘されたこともある。“標準化”はアニメを輸出産業とする際、こうした摩擦を減らすための事前策といえるだろう(もちろん、表現の萎縮を懸念する意見や改変自体に拒否感を示す声もある)。

 あわせて注目を集めているのが“現地化”、いわゆるローカライゼーションだ。番組では、イタリアで先行放送予定の『ルパン三世』新シリーズを取り上げる。アニメ製作にあたり、現地を徹底取材し、このシリーズのルパンのジャケットはイタリア人の好みである“青色“になるという。ほかにも、ワインやサッカーといった“イタリア受けする要素”をシーンに織り込んだ作品作りを志向する。文化的影響力があるとされるイタリアを起点にヨーロッパ全域への波及や日本での話題性といったことも見越しているようだ。

 ローカライゼーションで有名なのは、やはりディズニーだろう。2013年の映画『プレーンズ』ではヒロインが公開される国や地域によって、名前やカラーリングが変更されていることが注目を集めた。また、昨年のヒット作『アナと雪の女王』でも、吹き替えを始めとした同社の徹底したローカライズ戦略がヒットの一要因であるという指摘も多い。そのほか、昨年はアメリカで『ドラえもん』がローカライズされたことでも話題に。近年、注目を集めるローカライズが業界のスタンダードとなるか……動向を注視したい。

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