ロボアニメ界のムッシュに直撃インタビュー!【後編】

月に2000枚描いたことも……鍛えられてきたベテランアニメーター・吉田徹が見る現在のアニメ業界

  
――最近のアニメの中で、よかった作品はありますか?

吉田 富野由悠季さん復活の『ガンダムGのレコンギスタ』(Gレコ)はやはりいいねえ。あと、変な作品というか、少し変わった作品なんだけど、『ユリ熊嵐』は吹っ飛んでるなあ、と。「え、これやったんだ!」っていう、ちょっと嬉しい気持ちになった作品だったよね。
 
――昔は、ああいうアニメはなかったですもんね。

吉田 昔はというか、今のアニメでもなかなかあれはやらないんじゃないかな? 今のアニメはどうしても、安全牌しか踏まない、小さくなっていってるかなぁ。
 
――最近、アニメ界も変わってきてると思いますが、昔と変わったことってありますか?

吉田 キャラクター的なことや作品自体は変わったことばかりなんだけど、一番大きな変化としては、作品のあり方が変わったかな。作品のオリジナリティがかなり薄れているというかね……。
 
――何が原因でそういうふうになってるんですかね? 一部マニア層にしか向かってないという感じなのでしょうか?

吉田 というよりは、「日本の文化が好き!」「ジャパニメーションだ!」とか言ってるのに、アニメ制作側が世界に売りたいために、世界基準に合わせたものしか作らない。結果、日本産のなのに日本ぽくないものになってる。「それ、日本のアニメじゃないよ!」って。
 
――世界基準で平均化されてるって感じなんですかね?

吉田 たとえば、よく見ると、最近のアニメはお箸とかがなかったりするんだよね。日本を全面に押してる作品なら描くけど、普通の作品では描かない。世界基準に合わせて、お箸やご飯、茶碗や皿を手に持つことも減ってると思う。物を食べてても、手でつかめるパンとかが多い。お弁当でも、日の丸弁当なんかなくて、おにぎりを掴んで食べるだけだったりするからね。

――そう言われると、パンとかを食べてるシーンが多い気がします。

吉田 あと、お酒のシーンなんかも酔っ払ってるシーンはあっても、コップしか映らなかったり。お酒のビン自体はあんまり見せなかったりっていう気遣いはあるしね。
 
――気がつかない間に、日本らしさって減ってたりするんですね……。ちなみに、今までのご自身のお仕事で気に入ってるものってありますか?

吉田 最近なら、『キャプテンアース』の演出は面白かったなぁ。作画のレベルも、内容もいいもんできたんちゃう? って思ってる。
 
――そういえば、一般的なアニメーターさんって、平均どれくらいの枚数を描いてるんですか?

吉田 正直、僕なんかは作品の内容次第だし、原画だったり作画監督だったり、演出だったりとバラバラなんで、今は枚数より質の問題かな?
 
――たとえば新人さんなら、1日どれくらいを目標に描いてるとかってあります?

吉田 1日というか、今は大体月単位で考えて、最初なら100枚以内。そこから200、300、500と増やしていって。平均すれば500~600枚くらいかなあ、たぶん。
 
――月500枚なら、1日20枚……! じゃあ、1枚に1時間はかけれないくらいの計算ですよね。

吉田 そうやねえ。月に700~800枚描いてたらすごい! って感じかな。昔はもうちょっと違ったけどね。僕の頃は、月に1400枚。それでも、僕はアニメアールで一番少なかったんだけど(苦笑)。
 
――えーーーーー!? ちなみに、どの作品を作られてた頃の話ですか?

吉田 『ダグラム』とか『レイズナー』とかかな。でも、今から見れば、影とかクオリティが全然違うからね。今の萌え系アニメのキャラクターの髪の毛なんか、何本も線書いて、影のために裏から色の塗りわけもしてってやってるから。それでも、最高で2000枚描いた時はキツかったよね。「月に1000枚は描けないと原画にあがれんぞ!」みたいな感じだったから。
 
――描けば描くほどよしとされる空気があったんですね……それだけ描けば、やはり上手くなるんですか?

吉田 上手くなるというかね、それだけの枚数の動画を見るということ、カット数をたくさん見るということにも価値があったかな。当時は1本の作品を基本は3人でやってたしね。でも、今は何人でやってるかわからないし、中国なんかだと1200人くらいで一気に取り掛かってやってるから。
 
――上手さよりスピードが重視されているという感じなんですかね……。しかし、3人だとひとりで1000枚とか描くんですよね?

吉田 うん、でも当時のアニメ界ってね、「べらんめぇ気質」みたいなところがあって……とりあえずみんな遊ぶんですよ。そして、残り3日くらいになって、山のような原画の束を見ながら「100カット越えたぜ」とか言い合いながら徹夜で仕上げる、みたいなノリがあって。その中で、短期間で100カット以上分もの動きを見るから、すごい経験値になったよね。それが、今は200~300枚なら、1カ月でだいたい20カットくらいしか見ない。だから経験値が少ないんだよね。しかも、大変な動きの部分ってみんなやりたがらないから、締め切り間際まで残る。そして、締め切り間際になれば結局中国にまとめて送ったりするんで、さらによくない。よく動かす動画が、なかなか描けるようにならないんだよね。昔は追い込まれて、難しいものをヒィーヒィー言いながらやる。そうして、先輩方の動きを学んできたんだよね。
 
――なるほど、そこの経験値がアニメーターとしては財産なんですね。

吉田 まあ、今はネットがあるし、どこでも動画が見れる。しかも、スローもコマ送りもできるから、いくらでも勉強は出来るんだけどね。

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