『レイズナー』の生みの親に直撃インタビュー!【前編】

メカニック・アクション界の“ムッシュ”・吉田徹が語る地方アニメ業界の魅力と苦悩

――大阪でアニメーターの仕事をするメリットってなんでしょう?

吉田 メリットか……なんやろう? 冷静に考えると、当然、東京より大阪のほうが、メリットよりもデメリットのほうが大きいよね。だけど、大阪とか地方にいながら仕事を振ってもらう、という逆境で仕事をするというのは、ものすごく、自分のスキルアップにはなります。
 
――やはり、仕事を取ってくるのは難しいんですね。

吉田 それは、少し違うかもしれないね。昔は、大阪に来る仕事って、ほかが蹴って蹴ってやっとまわってきた仕事だったんです。だから、当時は「そうじゃなくていい作品を引っ張ってこよう!」って情熱とか、パワーがすごくあった。難しいけれど、「いい仕事をしてたら仕事は来る」とは思ってたよね。だけど、今は作品が増えて、仕事そのものが多いし、人手が足りてない。だから仕事自体は割りとあるんじゃないかな。
 
――じゃあ、アニメーターになること自体は、難しくはないんですか?

吉田 うん、なるだけならね。最低限の知識と絵の上手さ、あとは人柄というか人としての真面目さ、それさえあれば大丈夫じゃないかな? 締め切りが多少遅れたりはあっても、ちゃんと連絡するとか、ちゃんと状況を話すとかができればいいんじゃないかと思う。そういう意味では、今は真面目にさえやってれば、業界に入ることは難しくはないと思うよ。ただ、ジブリに入りたい! とか、ガイナックスに入りたい! とか、「特定の会社に入る」っていう目標は、難しいかも知れないけどね。
 
――野球選手にはなれるけど、巨人には入れない、みたいな感じですかね?

吉田 そうそう。巨人に入りたい! って、最初から選ぶのは難しい。だけど、業界に入ってから腕を磨いて、その後にその会社と仕事する、ということを目標にすればいいんじゃないかな? 大阪なら、清原和博が西武に行って、最終的に巨人に入ったみたいな感じでね。
 
――今からでも、「東京に行きたい」と思うことはないですか?

吉田 大阪がいいかなー。基本的に、大阪っていう土地が好きっていうのもあるし。東京に行って勉強する機会さえあれば、大阪にいながらでも全然やれる仕事だと思うから。それに、大阪にいながら「いい仕事をして、仕事を引っ張ってこよう!」っていう熱があるのは、やっぱりいいことだと、今でも思うからね。
 
――東京は、そういうハングリー精神みたいなのが少し薄いんですかね?

吉田 そういう訳ではないんだけど、東京ですごいがんばってて、いい仕事もしてるんだけど、なんだか東京に飲まれちゃう、っていうことがあったりもするよね。大阪にいたらいろんなことを好きにやれてたのが、東京に行ったらひとつの会社でひとつの作品だけにのめり込むことになって、それで偏っちゃうというか。上手くなるし、クオリティは上がってるはずなんだけど、個人としてはあまり名前を聞かなくなって、こじんまりしちゃって、少し寂しい……ってことはあるかな?
 
――本人は成長していても、環境的に埋もれてしまう……まさに、「飲まれる」という表現がしっくりくる感じなんですね。
 
* * * * *
 
  今回のインタビューでは、芸人やバンドマンが憧れ、夢を抱く場所というだけでなく、やはり東京は、アニメーターにとっても登竜門であり、魔都でもあるのだなと感じた。しかし、そんな東京への反骨精神からくる大阪の熱量もまた、魅力的なものだろう。その熱量から『レイズナー』『ダグラム』などの作品達が作られてきたということは、関西人として、アニメファンとして、やはり嬉しく思うのである。
 
 次回、後編では、吉田さんのお仕事や、最近のアニメのお話などにも突っ込んでインタビューを進めてみよう。
(構成/B・カシワギ)
 

●吉田徹(よしだ・とおる)
作画監督、演出、レイアウト、絵コンテと幅広くこなすアニメーター。アニメアール第1スタジオ所属。アミューズメントメディア総合学院大阪校講師。

★関連作品
メカ作監:『機動戦士ガンダムSEED』『蒼き流星SPTレイズナー』『機甲界ガリアン』『勇者王ガオガイガー』『ガサラキ』『装甲騎兵ボトムズザ・ラストレッドショルダー』『機動戦士ガンダム第08MS小隊』『機動戦士ガンダム0083』『ジオンの残光』、ほか多数

●B・カシワギ
大阪のライブシアター「なんば白鯨」、「なんば紅鶴」店長。科学ポッドキャスト『青春あるでひど』をはじめ、ポッドキャスト連盟「もっこもこパレード」主宰。その他、東京、大阪で「大阪おもしろマップ」「今昔科学語」「新漫画党編集会議」「鼻フック研究室」「たのしいたべもの」などのイベントを主宰、出演。2014年末より魔女術者としての活動も行っている。

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