『ちぐはぐ少女のダイアログ』ギャグを越えた幸せな少女たちの青春

 日々、萌え四コマで疲れた心を癒やしている筆者ですが、また新たな名作を見つけました。めの氏の初単行本『ちぐはぐ少女のダイアログ』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス)です。

 掲載誌は「コミック電撃だいおうじ」。可愛い系の作品がわんさかと連載されている雑誌ですが、『ちぐはぐ少女のダイアログ』はその中でもキラリと光る作品です。なんで光っているのかと考えたのですが、その答えのカギとして、めの氏は同人活動においても心に刺さる叙情的な物語を描き出します。そうした下地があってこそ、ギャグを主体に描かれた本作は光るのです。

 さて、本作の始まりは双子の姉妹である一ノ瀬麦と緑の高校入学から。ずっと一緒に過ごしてきた二人ですが、双子だというのに性格は真逆。麦(妹)は超優等生、緑(姉)は超ヤンキーとして、入学前から知れ渡っているほどです。入学前から知れ渡るほどなんて……どれだけ狭い世界……田舎過ぎるだろ! と、野暮なツッコミは横に置いておきます。そんな姉妹は、高校入学をきっかけに秘密の決め事をします。それは、お互いが優等生とヤンキーの役割を入れ替わるということ。ゆえに、麦は超ヤンキー、緑は超優等生のフリをして入学するのです。

 きっかけは、自分の内気な性格を変えたいという麦の希望。それにちゃんと付き合ってあげる緑は、なんと良いお姉さんなのでしょうか! 第二話で入れ替わりに至る経緯が描かれますが、コンパクトなページ数できちんと二人の心情を綴ります。というか、めの氏は、四コマの間に挟むストーリーマンガ的なパートの挿入が超絶上手いのです。

 そんなわけで、優等生を演じているのに、ついつい地が出てしまう緑。周囲に超ヤンキーだと思われていて、クラスメイトが勝手な解釈で恐れおののいてしまう麦の日常を主体に、四コマはほのぼのと進みます。ここに絡むのは、自称「学校一の不良」なのに子供が駄々をこねているようにしか見えない二宮紅。さらに、美少女なのに内気すぎて、いつもお面をつけている澤茉莉花の二人です。

 要するに、みんな自分に何かが欠けていることを知り、それを埋めようとあがいている少女たちなのです。そして、埋めきれないものをお互いが補い合っているのです。

 そう、本作は四コマギャグの体裁を取りながら、少女たちの青春群像を真っ正面から描きます。こんな世界を描ける作者の良い人っぷりが存分に感じられる……幸せになれる一冊です。
(文/大居 候)

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