姫乃たまの耳の痛い話 第21回

「愛してくれる人が離れていくのに慣れている」執着を知らないアイドルの“強み”

2015.02.22

――地下アイドルの“深海”で隙間産業を営む姫乃たまが、ちょっと“耳の痛〜い”業界事情をレポートします。

ゆるく、長く、推してください

 アイドルとして根本的に間違っているかもしれませんが、「一推しになりたくない」という気持ちがどこかにあります。太く熱い愛情は、持続させることが難しいと思っているからです。高校生くらいの頃は、「一推しだ」と宣言してくれるファンに応えようとしていた時期もありましたが、不器用な女子高生が頑張ったところで、どうにもならないものです。ある時、ファンと地下アイドルが互いにがんじがらめになっているのを見て、冷静になりました。これではお互いに効率が悪すぎます。

 ゆるく、長く、推してもらう

 これがいまのところ、もっとも自分に合っていると思います。そうすると自然と余裕ができてきて、「一番だ」と言われても素直に受け入れられるのです。アイドルとして、正しいかはわかりませんが。

「基本的に母子家庭」で育った彼女は、地下アイドルとしての活動が心のよりどころになっていると話します。

「ありがちな話なんですけど、私の母親はスナックを経営していて、気に入った客の男を家に連れ込んでは、そのまま家に住まわせてたんです」

 こういった話に続きやすいのは、義父からの暴力でしょうか。しかし、母親が連れてくる男たちはみな、本当の父親のように愛情を注いでくれたと言います。「まあ、本当のお父さんは見たことないんですけどね」と彼女は笑いました。どういうリアクションをとるべきかわからなくて、私もつられて弱く笑いました。

 しかし、男たちは母とそりが合わなくなると、家を出て行かなければなりません。どんなに男に懐いていても、まだ小学生の彼女に権限はありませんでした。

「母には、一生懸命働いて育ててもらって、感謝してます。でも正直、『愛された』という気持ちはあまりないですね。それとこれとは別、と言ったらわがままでしょうか」

「自分でも意外なほどしっかりした子」に育った彼女は、普通の女子高生と同じように友人と遊んだり、部活に精を出したりするようになりました。中でも彼女が好きだった遊びが、カラオケです。

「友達に歌を褒められてびっくりしたんです」

 学校行事でも勉強の成績でも、仕事が忙しい母親からは何かを褒められる機会がなかったため、衝撃を受けたのだと言います。

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