『艦隊これくしょん -艦これ-』第6話 ギャグに徹した神回? それとも二次創作?

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

■『艦隊これくしょん -艦これ-』
第6話「第六駆逐隊、カレー洋作戦!」

【今週の極私的見どころ!】

 円盤の特典は、イベント最速優先購入申し込みプレミアムカード。

 はい! 3月に発売される円盤(Blu-ray/DVD)には、8月に開催されるイベント『第二回「艦これ」観艦式』の最速優先購入申し込みプレミアムカードが付属するんだそうです。第4話を最後に視聴を脱落した提督も多いようですが、そうした提督たちも上坂すみれをはじめとする出演者に会いたい一心で「円盤は買わなきゃなぁ」と嘆息気味に語っているのを聞いたりします。いや、アニメなんだから、アニメで勝負しようよ……。この作品にうごめく何かが、次第に見えてきた気がします。

【今週のオススメ度】
★☆☆☆☆
(前回のあらすじはこちら

 OP前から、作戦室で悲痛な顔の長門と陸奥(CV:共に佐倉綾音)。陸奥は「ついに、この時がきたわね」と言います。対する長門も「それが、艦娘としての私の使命だ」となんだか悲壮です。これは一体なんのフラグなんだ……と、期待を背負って本編スタート。

 今回は、風呂からスタートというサービス満点な仕様です。しかも、仲良くシャンプーしているのは、第六駆逐隊の面々。ゲーム本編でも第六駆逐隊を編成する任務があるので、提督なら誰でも知っている暁、響、雷、電(CV:すべて洲崎綾)の暁型四姉妹。史実では、横須賀鎮守府に所属した第一艦隊第一水雷戦隊第六駆逐隊であります。駆逐艦ゆえに、終戦までの間に暁・雷・電は戦没し、唯一残った響は賠償としてソ連に接収されました。そんな四姉妹は、ゲームや派生作品ではすごく推されている艦娘ゆえ、今回のメインになったというわけでしょう。

 さてさて、喧嘩するほど仲がいい四姉妹ですが、特にキャラ立ちしているのは響でしょうか。なにしろシャンプーを「髪が濡れるのは好きじゃない」とクールに拒否するんだから。確実に潮風で髪の毛がベッタベタになってクサそうです(笑)。

 そんな彼女が遠征帰りだと聞いて入渠中の赤城さん(CV:藤田咲)は目を輝かせます。遠征とは、ゲーム本編における主要な資材の獲得方法。提督はみんな毎日必死に艦娘たちを遠征に派遣しているから、よくご存じですよね。わずかな資材を得るために長い時間を費やす遠征ですが、それを一瞬で消費……費やしてしまうのが、赤城さんなんですよね。今回も響から「ボーキサイトがいっぱい」と聞いて喜びます。

 さて、脱衣所に掲示されていた「鎮守府カレー大会」というポスター。これは何かと興味を持つ第六駆逐隊に「ぱんぱかぱーん」と現れた愛宕さんと高雄(CV:共に東山奈央)が説明します。アニメ世界の鎮守府では、かつての日本海軍がそうであったように、週一度はカレーの日があります。史実では、洋上で曜日の感覚が狂わないように毎週金曜日はカレーと決まっていたのですが、それと同じようなものらしいです。そして、年に一度のカレー大会では、優勝者のレシピが鎮守府のレシピとして一年間採用されるんだそうです。つまり、“優勝者イコール鎮守府のお料理ナンバーワン”なわけなんです。

 一人前のレディーになることを願ってやまない暁は、「私たちも出よう!」と一大決心。“チャンピオン=旗艦”と考えた雷も、みんなに尊敬される様を妄想して同意します。けれども、そこには立ちはだかるライバルがいました。

「優勝してこれから一年、提督に味わってもらうのデース」とは、金剛(CV:東山奈央)。さらに足柄さん(CV:種田梨沙)も、「優勝は私で決まり」と本気です。

 なかなか強敵揃いの中、まずは厨房でカレーを作ってみることに。でも、第六駆逐隊は誰もカレーの作り方を知らなかったのです。まずは本で勉強して、レシピを把握。鍋で煮込むところまではなんとかやり遂げました。でも、なかなか火が通らないと持ち出したのは、ゲームでも使用されるアイテム・高速建造剤=火炎放射器。当然、鍋ごと黒焦げです。いや、もうギャグ回なのだと割り切りましょう……。

 その後、第六駆逐隊はなぜか作業着姿で登場した夕張さん(CV:ブリドカットセーラ恵美)に新たな鍋を作ってもらったり、間宮さん(CV:堀江由衣)にカレーの作り方を聞き「愛情という名のスパイス」と言われたら、「そーゆーのはいいです」と即答したり……諦めかけたら、長門さんに「諦めるのもいいだろう、十分に努力したと胸を張って言えるのならな」とか、色々あって、ようやくカレー大会スタートです。

 司会が霧島(CV:東山奈央)、現場実況が那珂ちゃん(CV:佐倉綾音)という、至極当然な役割分担。審査員は長門さん一人で、あとの艦娘は応援。ここでようやく、主人公のはずの吹雪ちゃん(CV:上坂すみれ)もギャラリーとして登場です。

 さて、出場するのは、第六駆逐隊のほか、金剛と比叡(CV:東山奈央)の姉妹。瑞鶴と翔鶴(CV:共に野水伊織)の五航戦姉妹。赤城さんと加賀さん(CV:藤田咲)の一航戦チーム。単独出場の島風(CV:佐倉綾音)に、お嫁さんにしたい羽黒(CV:種田梨沙)と、お嫁に行かせてあげたい足柄の姉妹です。

 視聴した大方の提督も予想していたかと思いますが、ギャグ回ですから、マトモな調理などありません。具を入れてもないのに、優勝したつもりで高笑いする金剛。それを見て比叡は「お姉様に恥をかかせられない」と、こっそり謎の具材を……味見した途端に失神です。「普段どおりやればよい」と具材を刻む加賀さんの横では、赤城さんが生のまま食べています。ジャガイモを生で食べるなんて……やはり艦娘は人間とは違うのでしょう。

 なお、その様子を見て吹雪ちゃんは「あの食べっぷり、私も赤城先輩に食べさせてあげたいよ~」と、完全に恋です。五航戦姉妹はというと、瑞鶴が翔鶴のスカートについたカレーを拭こうとして、なぜかスカートが脱げてパンツまで見えちゃう、物理的によくわからない現象が。島風は早いという理由でレトルトをゆでて、自分で食べているだけ……。

 暁は言います。「周りが勝手に脱落していく虚しさはなんなのかしら……」視聴提督も同じ気分ですよ。

 そんな第六駆逐隊に立ちはだかるのは、足柄のカレーです。味見すれば「痺れるほどの辛さなのに、後を引く味だわ」と絶賛せざるを得ない味。足柄は「なによりも背負っているものが違う、確実に決める女子力!」と言い切ります。

 いや、二次創作設定のはずの“足柄=行かず後家”が前面に出まくってます。視聴提督もドン引きですが、アニメ内もドン引きです。あまりのドン引きゆえに巻き起こる第六駆逐隊を応援するコール……。それでも「小娘たちが私の人生の重みに耐えられて」「この死に損ないが」と、ガチすぎる足柄さん。その悲惨さに耐えきれず、羽黒は泣くよりほかありません。

 まあ、色々とありましたが、優勝は第六駆逐隊でありました。理由は……長門が辛いものがダメだったからです。第六駆逐隊のカレーは、お子様らしく甘口だったんですね~。

 え? レビューも6週目に突入しましたが、今回はストーリーをまとめるのに苦難しました。当然仕事ではありますが……これを記録することの意味があるのかと自問自答してしまいました。

 今週のストーリーは、実は以下の一行で説明できます。

 艦娘がカレーを作っていただけ。

 Twitterでの実況提督からも、「完全に二次創作だな」という感想がこぼれる回なのです。

 でも、驚くほど実況提督の評価は高いです。「今後もこれで頼む」「神回だった」とか。確かに第4話はギャグとシリアスの配分が悪くて、大変な不完全燃焼回でした。その点で、ギャグに徹した今回が神回だったのは間違いありません。前回から引き続き日常系アニメのようなテイストになっているわけですが……一体、第3話の如月の轟沈はなんだったのでしょうか。もう、このアニメがどういうコンセプトで制作されているのか、理解に苦しみます。

 確かに、第6話単体で見ればギャグ回としては良い出来だったと思います。けれども、果たしてこれが5年、10年先……いや、来年の今頃に「もう一度観たいな」と思う作品になっているでしょうか? 「今週の極私的見どころ!」で触れた通り、イベントの優先申し込み狙いで円盤の第一巻はけっこう売れそうですね。でも、筆者としては、アニメ版は黒歴史という未来を避けられそうにないとしか思えません。あらゆる表現物がそうであるように、テレビアニメでも、制作陣の意志は画面を通して伝わってきます。やる気や現場の一致した気持ち、オカルトではなく、そうしたものは成果物に確実に反映されているのです。その意志とはいかなるものか。この作品を通して世に認められたい、金が欲しい、女の子にモテたい……さまざまあるでしょう。作品の出来不出来、面白いか否かではなく、その得体の知れないパワーが伝わってくるのが、良作なのです。

 けれども、このアニメから伝わってくるのは……仕事だから、と淡々とこなしている現場のムードです。誰一人として「この作品を俺が傑作にしてやる」という意志が見られないのです。過去、読み捨てにされるエロマンガの類いだとか、東映が量産したプログラムピクチャーとか、くだらないのが当然のモノの中から、傑作は誕生しましたよね? おおよそ傑作というものは、誰も期待していない、クソの役にも立たない、くだらないものの中から生まれるのです。そうした作品は、多少つじつまがあってなかろうが、難解であろうが、なんだかわからないパワーをフィルムに焼き付けるのです。でもね、そういうのがないのが見えちゃうんですよ……。果たして、こんな調子で最後までレビューできるのか……とりあえず筆者は歌っておきます。

行けども行けども果てしなく
どこまで続くかぬかるみぞ
銃取る我等はいとはねど
声なき愛馬がいたわしや
(「涯なき泥濘」)

(文/昼間 たかし)

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