安田理央の「特殊古書店ダリオ堂」 第12回

『マトリックス』コラボケータイから1台115万円の高級ケータイまで! 近未来を思わせる『世界のケータイ』

 この本を見ていて、唸るのはそのデザインの芳醇さです。ほぼ全面が液晶であり、機種ごとのデザインにさほどの差異がない現在のスマートフォンと違って、驚くほどユニークなデザインの機種ばかりなのです。どれだけ変なものを作るかを競っていたと言ってもいいかもしれません。

 カバーが360度回転する丸い画面のモトローラーV70、映画『マトリックス』とコラボレーションしたゴツゴツした未来的なデザインのサムスン・マトリックスフォン、純金属にサファイヤ、レザー、セラミックを使用し高級自動車の影響を受けたデザインのベルツ(一台115万円!)、デジカメとしか思えないサムスンS250(実際に5メガピクセルのデジカメ付)、フルキーボードを備えた横開きのノキア9000コミュニケーター、漆器のような光沢感と流麗なデザインで、もはや携帯電話とは思えないルックスのノキア7280

150208_rio3.jpgサムスン・マトリックスフォン
【出典】『世界のケータイ』(ヘンリエッタ・トンプソン/トランスワールドジャパン/2006年)
150208_rio4.jpgベルツ
【出典】『世界のケータイ』(ヘンリエッタ・トンプソン/トランスワールドジャパン/2006年)

 そして、日本では今なおファンの多いKDDIインフォバーKDDIタルビー

 そもそも携帯電話黎明期の馬鹿でかい機種ですら、うっとりするようなSFチックなデザインで僕らを魅了します。

 しかし、結局、こうした奇抜なデザインの携帯電話は、実際には使いにくいものがほとんどで、やがて姿を消していくことになります。

 全面液晶のスマートフォンは、実用面から見ても優れています。だからこそ、iPhone登場後は、ほとんどのスマートフォンが同様のデザインになっていきました。それはまぁ、しょうがないことだというのは、わかります。いくらデザインがユニークでも、実用的ではないものは、受け入れられないのが現実なのですから。

 しかし、この『世界のケータイ』を見ていると、2007年にiPhoneが登場しなかったもうひとつの未来を想像してしまいます。

 とか言ってて、さらに10年後は現在のスマートフォンとは全く違ったデザインのものが主流になり、「全面液晶とか、懐かしいよねぇ」なんて話をしていそうなんですが。

安田理央(やすだ・りお)

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1967年、埼玉県生まれ。主にフリーライター。及びアダルトメディア研究家、ニューウェーブ歌手、など。主な著書に「日本縦断 フーゾクの旅」 (2004年 二見書房)「エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること」(2006年 翔泳社 雨宮まみと共著 )、「45歳からのアニメ入門」(2013年 Kindle 田口こくまろと共著)などがある。
●公式サイト<http://www.lares.dti.ne.jp/~rio/
●公式ブログ<http://rioysd.hateblo.jp/

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