四半世紀をどうまとめるか? 国立新美術館にて、「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」が今夏開催

1502_shinbi1.jpg今夏に「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」が開催される国立新美術館。

 2月4日、六本木・国立新美術館で「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」の開催発表会が行われた。

 国立新美術館は、アニメやマンガ関連の展示では「文化庁メディア芸術祭」の会場として知られている。今回、同美術館の企画として、アニメやマンガ、ゲームが大々的に取り上げられるとあって、注目が集まる。

 国立新美術館・副館長の南雄介のあいさつに続いて行われた発表会では、展覧会を担当する国立新美術館主任研究員の室屋泰三が司会を務め、まず展覧会のタイトルについて「マンガ、アニメ、ゲームを包括的に見て、相互のつながりに目を向けるという意味で、“かけ算”を意味する“*(アスタリスク)”を使用した」と説明。

1501_shinbi2.jpg開催発表会の様子。

 そして、「これまでは特定の作品や作家、年度にターゲットをしぼった展覧会が多かったが、今回の展覧会は1989年~2014年までの25年間に制作されたマンガ、アニメ、ゲームをターゲットにしている」「この25年間はマンガ、アニメ、ゲームが非常に発展した期間であり、他方でテクノロジーがめざましく発展し、2度の震災や同時多発テロなどの社会不安も起きた」と語り、テクノロジー、社会を背景に発達したマンガ、アニメ、ゲームを、8つの章に分けて総合的に展望するという概要を説明した。

 発表された8つの章と展示予定作品は以下の通りだ。

・第1章 プロローグ:現代のヒーロー&ヒロイン
【展示予定作】
NARUTO -ナルト-』『ストリートファイターII』『ドラゴンクエストIV

【概要】(リリースより引用)
 友情、正義の心、そして冒険…。第1章では展覧会のプロローグとして、1989年以降に誕生したヒーロー、ヒロインたちを紹介しつつ、マンガ、アニメ、ゲームが持ち続けてきた「王道」たる熱気あふれるテーマの作品を紹介します。

・第2章 テクノロジーが描く「リアリティー」―作品世界と視覚表現
【展示予定作】
電脳コイル』『BIOHAZARD』『ファイナルファンタジーVII

【概要】(リリースより引用)
 1990年代以降の情報通信技術の発達やインターネットの広がりは私たちのコミュニケーションの形を、そして情報の伝達速度や共有の仕方を大きく変化させました。また、デジタル映像技術の進歩は私たちに視党表現の新たな可能性を提示し続けています。第2章では仮想現実や拡張現実、ロボットといったテクノロジーやネットワーク社会を背景とした世界観を持つ作品や制作技法として3次元CGなどのデジタル映像技術を駆使した作品を紹介します。

・第3章 ネット社会が生み出したもの
【展示予定作】
ひぐらしのなく頃に』『コロニーな生活

【概要】(リリースより引用)
 デジタル技術を駆使した制作技術とインターネット社会の広がりによって、マンガ、アニメ、ゲームを作り、共有する構造は変化してきました。作品の共有は、作り手と作品の受け手(読者や視聴者、プレーヤー)を直接つなぎ、その関係性は、次なる創作にフィードバックしていくサイクルとなっています。インターネット上での情報共有やコミュニケーションが新たな作品を生み出す土壌となっているといえるでしょう。第3章では個人/同人制作や二次創作など、ネット社会を背景とした、新たな創作プロセスの中で生み出された作品を紹介します。

・第4章 出会う、集まる―「場」としてのゲーム
【展示予定作】
シーマン』『モンスターハンターポータブル2nd』『Dance Dance Revolution

【概要】(リリースより引用)
 ゲームはひとり部屋にこもって遊ぶもの…、それは今や古い見方です。キャラクターの身体を借り(コントローラー越しに)「拳」で語り合いながら対戦すること、そして、インターネット上の「仲間」と共同しながらミッションをクリアすることなど、ゲームの世界では他者とのコミュニケーションが必須のものとなっています。また、音楽ゲームでは、プレイすること自体が一つのパフォーマンスと言ってもよい作品も多く作られてきました。プレーヤーは自身が遊ぶだけに留まらず、作品の実演者としての役割を持ち、作品の「完成形」を押し広げる役割を担うようになっています。そして、そのことはゲーム作品をプレーヤーとその周りの観衆を巻き込んだ体験の共有へと導きます。第4章では、「コミュニケーションの場」と呼ぶべく進化したゲーム作品を紹介します。

・第5章 キャラクターが生きる=「世界」
【展示予定作】
ラブプラス』『うたの☆プリンスさまっ♪Repeat

【概要】(リリースより引用)
「プロ野球チームの監督になってみたい」、「アイドルをプロデュースしてみたい」…、現実ではかなわない夢も、マンガ、アニメ、ゲームの作品の上では体験できます。特に表現や技術の進歩によってキャラクターが歌い、踊れるようになったことで、音楽はキャラクターが持つ重要な「個性」となっています。今ではボーカロイド・ソフトウェア「初音ミク」を文字通り「プロデュース」し、楽曲をインターネットに公開することで、真の意味で「プロデューサー」になれるのです。

 また、90年代以降、キャラクターは物語のストーリーに必ずしも従属した存在ではなくなりました。さまざまな「個性」を持ったキャラクターが集まることで、キャラクターが生きる空間としての「世界」が生まれ、そこに群像劇として物語が生まれていきます。作品の受け手はその「世界」に時に入り込み、時に俯瞰しながら、作品を受容します。第5章では、アイドルの卵、プロ野球選手、競走馬、歴史上の人物、さまざまな「キャラクター」たちの生きる「世界」を表現した作品を紹介します。

・第6章 交差する「日常」と「非日常」
※展示作品未発表

【概要】(リリースより引用)
 第6章では日常性と非日常性がさまざまな物語構造で入り混じった作品を紹介します。物語の中の非日常性と共に描かれている日常的な生活や風景は、見る者と作品世界との距離を縮め、身近なものとしてある種のリアリティーを与えます。また、日常的な描写の中に織り込まれた非日常性は、私たちの現実世界と物語世界の一体性を問うてきます。人間関係という最も日常的な要素が非日常性と深く関わりあうという不可思議な関係性を提示する作品など、「日常」と「非日常」がさまざまに交差した作品を紹介します。

・第7章 現実とのリンク
※展示作品未発表

【概要】(リリースより引用)
 マンガ、アニメ、ゲームは時に現実の社会から強く影響を受けた作品を生み出します。特に幾度かの震災は、強い影響を与えました。3つのジャンルのなかでもマンガは世相に素早く反応し、その時々に応じた多彩な題材を作品として描いてきました。働くこと、作ること、日本の伝統文化を継承すること…、90年代以降のマンガはこれまでに数多く描かれてきた学校や恋愛、スポーツといったテーマに加え、より多彩で、実社会との接点を持つた題材の作品を生み出し続けています。第7章では、現実とリンクした多様なテーマを持つマンガを中心に紹介します。

・第8章 エピローグ:作り手の「手業」
【展示予定作】
METAL GEAR SOLID

【概要】(リリースより引用)
マンガの描線やコマ割り、アニメの動きや色彩設計、ゲームにおけるリアルな映像表現、これらはITや映像技術の進化だけで実現できるわけではありません。技術を使う作り手の「ワザ」や「思い」が込められてこそ、世界に類を見ない映像表現が生まれ、見る者に感動をもたらすのです。展覧会の最終章では、作品の作り手に注目し、その「手業」を、作品を通して紹介します。

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 今回、25年という長い年月の中で生まれた作品群を包括的に取り上げるということで、展示から外れる、捨象されてしまう作品も当然出てくるだろう。また、現在、展示予定作に並んだ作品も、いわゆる“時代を象徴する”革新的な作品として有名なものも多い。つまるところ、現在の展示予定作を見るに“美術館らしい”ラインアップといえる。一方、この25年のマンガ、アニメ、ゲーム文化の変遷を“歴史”として語り継ぐことであったり、独自のテーマを導入して作品の新たな側面、魅力を提示してくれること(本来的な意味での“キュレーション”)など、美術館ならではの見せ方もきっとあるはずだ。先の室屋氏の言う通り、個別の作品展などが頻繁に催され、美術館でこうしてコンテンツに触れる機会が多くなった現在、「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」が新たにどういった役割を果たせるのか、期待したい。

 なお、開催に先駆けて、展覧会公式書籍「「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム(仮)」が5月上旬に発売予定。中野晴行、氷川竜介、さやわからが執筆を担当し、価格は2500円(税別)。

「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」は6月24日(水)~8月31日(月)に六本木の同館で開催され、9月19日(土)~11月23日(月)には神戸・兵庫県立美術館にも巡回予定だ。

■「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」(国立新美術館の公式サイト内)
http://www.nact.jp/exhibition_special/2015/magj/

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