Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第27回

クロの喪失感と葛藤に涙が止まらない! 松本大洋の『鉄コン筋クリート』はやっぱり名作だった

―今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

150203_rum.jpg(イラスト/村田らむ)

『鉄コン筋クリート』は1993年に「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)にて連載が始まった。

 僕が大学1年の頃である。大学の部室で1話目を読み、ガンッと頭を打たれたような衝撃を受けた。松本大洋作品は、高校の頃に『ZERO』『花男』と読んでいてすでに好きだったのだが、それでも『鉄コン筋クリート』は、ずっと完成度が高く感じた。

 僕の勝手なジャンル分けで悪いのだが、『鉄コン筋クリート』は“奔放な少年モノ”というカテゴリに入れている。

 このカテゴリにほかにはどのような作品が入っているかと言うと、アニメだけれど宮崎駿の『未来少年コナン』『ドラゴンボール』のチビ悟空時代が代表格だ。

 ここでは、主人公が少年であり、かつ運動能力が高いのが条件。運動能力が高いと言っても、スポーツができる男の子レベルではない。どんな高いところから落ちても平気、飛べばビルも超えられる。重力のしがらみすら吹き飛ばすことができる、超人的な能力である。

 『鉄コン筋クリート』の主人公はシロとクロという名前の少年2人組。2人は、街では“ネコ”と呼ばれている。そして自在に空を飛び、そして気に食わないヤツラを平気で叩き潰す。

 この空を飛ぶ表現が、とても気持ちがいい。 ビルからの落下→着地、そしてそこから流れるようにバイオレンス。しびれる。

 なぜ2人が超人的な身体能力を持っているのかについて説明は一切ないが、絵の気持ちよさで説得されてしまう。“奔放な少年モノ”に一番大切なのは、絵の力なのだ。

 と、ここまでだととても少年誌らしいジャンルなのだが、『鉄コン筋クリート』の掲載誌は「ビッグコミックスピリッツ」、つまり青年誌である。

 少年たちが主人公でありながら、物語はシビアでダークな大人の話である。主人公たちが暮らす『宝街』に『子どもの城』と呼ばれる遊園施設が作られる。そして街が少しずつ変わっていってしまう。それに反発を覚えたネコが、地上げ屋と戦っていく……というのが、大まかな前半のストーリーである。

 多くのマンガでは、街はただの背景であることが多い。しかし、『鉄コン筋クリート』の世界において、宝街はもうひとりの主人公だ。

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