アニメ化決定! ナルシストにドM…規格外に濃ゆいキャラクターが日常を非日常に変える『ナルどマ』

2015.02.04

ナルどマ第1巻(KADOKAWAエンターブレイン/米と書いてめーとる)

 この度、「スマホで縦読み」がウリの電子コミックサイト「comico」の独自レーベルが立ち上げられた。これまでは「comico」の連載作はさまざまな出版社から発売されていたが、KADOKAWAエンターブレインの「comicoシリーズ」として始動した。そして、大人気連載作品『ナルどマ』(作:米と書いてめーとる【註:これでひとつのペンネームです】/KADOKAWAエンターブレイン)の第1巻が今年1月、満を持して発売されたのだ。帯には「2015年アニメ放送決定!!!」の文字が踊る。

 さてこの『ナルどマ』だが、話の内容は非常に薄い。いや、ストーリーそのものが薄いのだが、キャラクターはとにかく濃い! 主人公のハギトは、常に大きめの鏡を持ち歩く「自分スキー」な超絶ナルシスト。街のウィンドゥに映る自分に見とれたり、自宅で「今日は2時間鏡を見れるぞ」と時間を有効に(?)使ったりという変人で、実は幼女好きのロリコンでもある。ハギトの同級生のケイは、殴られたり踏まれたり罵られたりするのが大好きな、どマゾ(ドM)の変態。かわいい顔をしてあざとく、いかにすれば罵ってもらえるのかを常日頃から考えている。

 ほかにも、奇抜なファッションの斉藤さんや、めったに出てこないレアキャラでネガティブ社会人ロクさん、握力89kgの怪力幼女トトノちゃんなど、いろいろ濃いキャラクターが入り乱れて、平凡でなんともない日々を過ごす。このなんでもない日常の中、唯一常識人とも言えるモノさんはハギトたちに振り回される役割。また、イケメンのくせに彼女いない歴=年齢のハギトが、メル友のキセハちゃんとの初デートで狼狽える話もウケる。キセハちゃんもまた、うどんをこよなく愛する、ある意味変人仲間だったのだ! 本作は、ナルシストにマゾの変態に幼女など、ありがちなキャラクターの性質が、規格外にクローズアップされた作品なのである。それが日常を非日常に変えるトリックでもあるだろう。

 ナルシストのハギトがドMのケイと出会った、最初のエピソードからして笑える。ケイがカツアゲに遭って暴行されて(ドMなので実は喜んで)いる時、ハギトが助けてくれたから……ではなく、殴られて喜んでいることに思い悩むケイに向かって、ハギトが自分に正直に生きるべき、と言ってくれたから。言ってることはカッコイイけど、ハギトはその前に鏡の自分に見とれて階段から落ちている。ハギトの言葉に感銘を受けたドMのケイは、その場で「殴ってください」とハギトに懇願する。ドン引きしながらも、成り行きで殴ってしまったハギト。ケイはそんなハギトを大好きになったのだった。そして単行本描き下ろしのエピソードも、この話と対になっており、二人の出会いの裏側が、ケイの本音目線から描かれていて面白い。この描き下ろしを読むと、まるでハギトがケイの変態を開花させたかのように思わせられる。

 アニメ化については、アニメの声優陣も、どの放送局で取り扱うのか、5分枠なのか15分枠なのか30分枠なのかも決まっていないという。サイトに掲載されている告知では、「まだ色々わかんないけど、アニメ化めでたい!って話でした!」と言い切っている。詳細は2015年3月に開催される「アニメジャパン」のcomicoブースで発表予定。そこでおおよその情報は得られると思われるが、こんなに何も決まっていない状態で「とにかくアニメ化決定!」というのは珍しい事例かもしれない。単行本は17話プラス描き下ろしのみだが、「comico」ではすでに68話まで描かれているため、アニメにする素材には困らないであろう。単行本の続きも楽しみだ。

 それにしてもこの『ナルどマ』、発売前に新聞広告にも掲載されたほどなので、レーベルの力の入れようも察するに余りある。これから「comico」独自レーベルからの単行本の発行は続いていくので、今後も色々と目が離せないようだ。
(文/桜木尚矢)

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