“ライトオタク”のエスノグラフィ(民族誌) 第1回

「ラブライバーは“民度”にとても気を使ってる」離島からやってきたラブライバー【“ライトオタク”のエスノグラフィ】

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 インターネット上では何かと評判の悪いラブライバーたちだが、話を聞いてみると、思った以上にきちんとしたコミュニティがそこには形成されていた。こうしたオタク活動のためのサークル自体は昔から存在していたが、これまでと大きく異なる点として、その活動の実態が外から見え難くなったことが挙げられるのではないか。

 K君が参加しているラブライバー・コミュニティは、「LINE」という外側からその内部を覗き見ることが困難なメディア上に成立していた。また、K君がTwitterでフォロワーに誘われてLINEグループに参加していたように、コミュニティに参加するためのハードルは低いようにも思われる。100人という参加者数は、規模としては大きいほうだろう。しかし、そこに誰でも比較的簡単に参加できるのだとすれば、コミュニティのルールをメンバー全員に徹底させることは当然困難になる。そして、K君の語りの中にあるように、羽目を外し過ぎるなどのルールを破ったメンバーがコミュニティ内で注意されていたとしても、そのやり取りを我々部外者は見ることができないのである。こうしたコミュニティの構造が、世間でのラブライバーたちの悪評にも繋がっているのではないだろうか(もちろんK君とその周りの人びとがラブライバーを代表するわけではないが、彼らのようなラブライバーの姿が見えてこないことの一因はそこにあるのかもしれない)。

 K君自身について筆者が感じたことは、ステレオタイプなオタク像との大きな乖離である。インタビュー前半にもあったとおり、K君は毎日ロードバイクでアキバに通っており、これまで一般に流通しているオタクのイメージとは結びつき難い、アウトドア派の一面を有していた。さらに彼のコミュニケーション能力の高さも特筆すべきである。オフ会で会った初対面の人に対してプレゼントを渡したり、学祭に遊びに来ていた女の子と付き合っていたりと、コミュニケーション能力の高さは彼のさまざまな部分に見て取れる。インタビュー後に判明したことなのだが、実は彼は高校時代に生徒会長をやっていたという。これまでオタクはスクールカーストでは下位に存在しており、どちらかと言えば教室の中で隅っこに追いやられる存在とされていたのに、である。

 そして、K君自身もステレオタイプなオタク像を有しており、それを意識的に避けていることがインタビューからは伺われた。インタビュー中、K君は「オタクって、自分の好きな作品を他人に無理やり押し付けるっていう良くない部分があるじゃないですか」と語る。確かにオタクの悪癖として、好きなモノに夢中になると周囲が見えなくなるという言説は昔から存在する。そうした振る舞いを避け、他人に無理やり好きな作品を押し付けないことや、自らの“装備”姿がネット上で他者にどう見られているのかを把握している点も、これまでイメージされてきた“オタク”とは異なる点として挙げられるのではないだろうか。

 もしかしたら、こうした従来のオタク像とは違う部分が目立つことで、彼(女)らのオタク的要素が薄まって捉えられてしまい、結果として「ライト」の烙印が押されているのではないか? もちろん、これは彼自身の性向や育ってきた環境によるものでしかないという可能性も大いにある。いったい何がライトオタクと呼ばれる人たちに共通するものなのかを判断するためには、さらなる調査を続けていく必要があるだろう。

 さあ、次のオタク/ライトオタクに話を聞きに行くとしよう。

(取材・文/圓堂寛哉)

【次回の連載は3月末更新予定!】
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圓堂寛哉
仮名。都内某大学でオタクについて研究を進める駆け出しの研究者。自身も三度の飯よりオタクが好きな、オタクのオタク(オタオタ)である 。専攻は社会学、若者文化論のはずだったが、最近は大好きなオタクのことを知れるなら、やり方なんてなんでもいいやと思い始めた。

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