少年時代のトキメキを復活させる要素は“駄菓子”…だけじゃない! マンガ『だがしかし』が読者の心を掴む理由

2015.01.29

だがしかし第1巻(小学館/コトヤマ)

 今月24日、少年マンガ誌「週刊少年サンデー」(小学館)が3月29日に大規模イベント「サンデーフェス2015」を開催することを発表した。公式サイトでは、イベント会場に「サンデー」連載の全作家カラーイラスト色紙が展示されることが告知されているが、そのほかの概要については、続報が待たれている。さて、そんな「サンデー」連載作の中で、筆者が今一番注目しているマンガは、コトヤマ氏の『だがしかし』(小学館)だ。昨年9月に第1巻が発売されて以来、いまだに書店にコーナーが設置されるなど、話題となっている。

 本作では、田舎の駄菓子屋を舞台に、店を継がせたい父・鹿田ヨウと継ぎたくない息子・鹿田ココノツの前に、大手菓子会社の社長令嬢・枝垂ほたるが現れる。彼女は、ヨウを自身の会社に引き抜くことを目的とし、店を訪れては駄菓子をテーマにした、さまざまな事件が起こるギャグ作品である。

 ギャグというが、基本的に駄菓子を食べているだけである。駄菓子を食べているだけなのに、なぜ面白いのか? それはまずヒロイン・ほたるの駄菓子に賭ける情熱が常軌を逸していることに尽きる。

 棒きなこを食べる回では、普通に食べたらきなこがこぼれて胸元が汚れてしまうと解説し、「一口で食べる(ワンショットキル)」を披露する。……披露するのに、食べ方が下手なのか、顔がきなこまみれになるというボケまでカマしてくれる(逆に顔をきなこまみれにするほうが難しいだろ……)。

 1話8ページの枠の中で、駄菓子の食べ方の披露に3ページ使っている。そんなどうでもいいことにページを割いてしまう。それほど、駄菓子に賭ける無駄な情熱を示してくれるのである。

 でも、どうも読者の心を掴んでいるのは、このテンションの高さではないような気もする。そう、冷静に読んでみると、ほたるがメッチャ可愛いのである! 作風ゆえか、可愛く見せようというあざとさは感じない。にもかかわらず可愛く見えるのは、彼女の喜怒哀楽がはっきりしているからだ。

 毎回、駄菓子を口にすれば超満足そうな笑顔を。モロッコフルーツヨーグルの回では、数色あるフタの中身すべてが同じ味であることを知り、本気で「いま知った!」という顔で驚く。社長令嬢というキャラ設定にも関わらず、ほとんど「執着」と表現してよいほどの駄菓子への情熱と相まって、読者に妙な親近感を与えてくれる。ゆえに、ページをめくるごとにその可愛さに気づき、愛情が増していく。

 そうして可愛さの虜になったがゆえに、風呂回や水着回は嬉しさが倍増するのである! おそらく、この作品の読者の多くは、少年時代の思い出に駄菓子がある人々ではないかと思う。そんな人々を、数コマの風呂や水着シーンで喜ばせてしまう。いわば性に対するトキメキまで少年時代に戻しちゃうから、このマンガがスゴイのだ! と、納得した。

 惜しむらくは、連載ページの少なさ。もっと増ページしてもらってもいいんですよ!
(文/ビーラー・ホラ)

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