ソロアイドルが売れない時代は終わった! 吉川友や武藤彩未など…今後のアイドルシーンを牽引するソロアイドルたち

2015.01.20

――長く冬の時代を迎えていたソロアイドルだが、昨年から復調の兆しを見せ始め、2015年はさらなる躍進が期待される。そこで(竹書房)や「月刊エンタメ」(徳間書店)どのアイドル誌で記事を執筆、年に一回のアイドルムック「アイドル最前線」(洋泉社)では編集にも携わるフリーライターの猪口貴裕氏が、これからのアイドルシーンを牽引するであろうソロアイドルを一挙紹介!

■激しいアイドル界を生き抜いた“小桃音まい”と“吉川友”


 グループアイドルの勢いに押されて、長年に渡って日蔭の存在だったソロアイドル。数年前まではアイドルイベントなどでグループに挟まれてソロが登場するとアウェー感が漂い、いたたまれない気持ちになることも珍しくなかった。

 そんな中で孤軍奮闘ともいえる活躍ぶりを見せていたの小桃音まいだ。2009年から活動を始めた彼女は“まいにゃ”の愛称で親しまれ、愛らしい顔立ちと小さな体からは想像もつかないエネルギッシュなパフォーマンスと、年間300本を超える驚異的なライブ本数で存在感を示した。えてしてソロのパフォーマンスは地味になりがちだが、まいにゃはファンを扇動して左右に移動する通称“民族大移動”をライブに取り入れ、グループに負けない一体感を作り上げた。長くインディーズでの活動が続いたが、2013年には念願のメジャーデビューを果たす。もともとハロー!プロジェクトをこよなく愛し、ヲタ活の延長戦上からアイドル活動を始めただけに、どうすればファンが喜ぶか熟知しているのも彼女の強みだろう。

 まいにゃから遅れること2年後の2011年にデビューした“きっか”こと吉川友も、ソロアイドル冬の時代を物ともせずに多くのファンを掴んだ一人だ。2006年のモーニング娘。Happy8期オーディションで最終審査まで残り、ハロプロエッグに加入すると早くから頭角を現す。ハロプロ仕込みの高いスキルと華やかな経歴もあって、ソロデビューシングルとなる「きっかけはYOU!」からヒットを飛ばし、3rdシングルで早くもアイドルファンの間で神曲として愛されている「こんな私でよかったら」というキラーチューンを獲得。2013年はリリースペースが落ちたが、キマグレンとのユニット「きっかレン」や、舞台「屋根の上のバイオリン弾き」の出演などアイドル以外の活動も旺盛に行った。2014年はハロプロエッグ時代の盟友・アップアップガールズ(仮)、THE ポッシボーと「チーム・負けん気」を結成。チーム・負けん気としてはもちろん、ソロとしても精力的にライブを行った。また1年半ぶりにリリースしたシングル「URAHARAテンプテーション/いいじゃん」では、「こんな私でよかったら」以来となるmichitomoをプロデューサーに迎えて新たな名曲を生み出し、底力を見せつけたのだった。

 出発点こそ異なるが、まいにゃときっかは数少ないソロとして栄枯盛衰の激しいアイドル界をサバイブ、現在も第一線で活躍している。もちろん二人以外にもソロアイドルはいたが、地下アイドルの枠を飛び越えることができずにもがき苦しみ、フェードアウトしていく者も多かった。

前田敦子「セブンスコード」[Type-A]

 グループはファンに推すメンバーの選択肢があるし、たとえ拙いパフォーマンスでも大人数の利を生かして勢いや迫力を出すことができる。それゆえにソロがグループよりもインパクトを残すのは至難の業だし、そのためにはルックス・歌・ダンス・MC力、自己プロデュース力など、すべてのカテゴリーで高いハードルを求められる。AKB48グループからソロデビューしたメンバーは多いが、長期的に活動している者は皆無に等しいことも、ソロの難しさを証明している。

■80年代のアイドルを彷彿とさせる“武藤彩未”と“寺嶋由芙”


 しかし2014年はソロアイドル復調の兆しが見え始めた。その筆頭と言えるのが武藤彩未だ。8歳の頃からモデル活動を始めた彼女は、2008年に期間限定ユニット「可憐Girls」を経て、2010年に結成された「さくら学院」の生徒会長(リーダー)に就任。圧倒的なカリスマ性でメンバーを統率して、在籍2年でさくら学院を人気グループに成長させた。グループ卒業後、同級生だった三吉彩花と松井愛莉は早々に女優として活躍を始めたが、もともと歌手志望だった武藤は1年間の地道なレッスンを積み重ね、満を持して2013年にソロプロジェクトを始動、2014年にアルバム『永遠と瞬間』でメジャーデビューを果たした。本作はアイドル黄金時代の80年代を強く意識したサウンドプロダクションと武藤の透明感溢れるボーカルが程よく溶け合った楽曲がずらりと並び、エバーグリーンな輝きに満ち溢れている。さまざまな趣向が凝らされたワンマンライブのクオリティにも定評があり、彼女のソロプロジェクトに携わるスタッフの気概を感じさせる。松田聖子も中森明菜も優秀なスタッフと潤沢な資本力がバックにあったからこそ数多くの名曲を生み出して伝説となっていった。そういう点でも武藤は80年代アイドルが21世紀に蘇った唯一無二の存在と言える。

“ゆっふぃー”こと寺嶋由芙も武藤と同じく人気グループを経てソロに転向した一人だが、その様相は大きく異なる。武藤はソロ転向後もさくら学院の清廉なイメージを引き継いでいるが、ゆっふぃーがいたのは破天荒なパフォーマンスや仕掛けで知られるBiS。おっとりした言動と優等生然としたルックスの彼女とは真逆なグループだ。当然、グループの方針と合わずに約2年の在籍期間を経て2013年に脱退、もともとライブアイドルとして活動をしていたゆっふぃーはソロ活動を再開。「古き良き時代から来ました、まじめなアイドル、まじめにアイドル」という自己紹介の口上そのままに、大和撫子を地で行く清楚さと、ゆるキャラをこよなく愛することに代表される女の子らしさは、武藤と同じく80年代のアイドルを彷彿とさせる。それでいて彼女が単なる懐古主義ではなく現代的なのは、自身がアイドル好きなことから同じ目線でファンの気持ちを理解していることだろう。ファンへの愛情はMCからも伝わってくるし、それが現場の暖かい雰囲気にも繋がっていて、そこはまいにゃと相通じるところ。実際にライブでは敬意を表して民族大移動を“カバー”することもある。2014年はCDデビューも果たし、シングル3枚、ミニアルバム1枚を発表。オリジナル曲では作詞にジェーン・スーやでんぱ組.incの夢眠ねむ、作編曲に同じ年齢の女性シンガーソングライターrionosを起用するなど、若い女性の機微を活写した楽曲もゆっふぃーの清らかなイメージを強化させている。

■“KOTO”や“吉田凛音”といった若きソロアイドルに注目


 2014年は小さい頃からスクールでダンスレッスンを積んできた二人の若きソロアイドルの台頭も目立った。一人は現在、高校1年生のKOTOで、小学校時代からコンテスト入賞経験や有名アーティストのバックダンサーを務めるなど、ダンサーとして華やかな経歴を持っている。転機は中学入学後で、日本初のキッズダンス映画『SHAKE HANDS』(2013年8月10日公開)の主題歌オーディションに合格し、同作品の主題歌で歌手デビュー。その翌年の2014年1月28日、「ことりっぷ/まだ起きてる?」でCDデビューを果たし、ソロアイドルとしての道を進み始める。やはりライブで強烈なインパクトを残すのは圧倒的なダンススキルだろう。小さな体で全身全霊という言葉がピッタリな手足の先まで切れ味鋭いダンスを踊りながら、とびっきりの笑顔で息を切らすことなく高音のボーカルを響かせる姿は“異形の者”と言いたくなるほど。昨年11月からニューウェーブ系ロックバンド「レコライド」のプログラミングを務める佐々木喫茶のプロデュースで6カ月連続リリースを行っているが、すでにリリース済みの「くえすちょん くえすと」と「推定スウィーティ」は、佐々木の作り出すバキバキのエレクトロサウンドにアンドロイドっぽいKOTOの高音ボイスが見事に融合している。

 KOTOよりも若く、まだ中2の吉田凛音は小1の頃から北海道のスクールに通ってダンスを学び、小2の時に生でライブを観た中川翔子に衝撃を受けて歌手を志した。同じスクール生とユニットを組み、早くから豊富なステージ経験を積む一方で、地元のテレビ番組やCMに出演するなどタレント活動を行ってきた。中1からソロ活動を始めた彼女が全国的な注目を浴びたのは、人気テレビ番組『関ジャニの仕分け∞』(テレビ朝日)の人気コーナー「最強歌ウマ軍団にカラオケの得点で勝てるか仕分け」に出演したのがキッカケ。当時13歳とは思えないほど高い歌唱力と堂々たる立ち居振る舞いが話題となり、2014年11月5日に「恋のサンクチュアリ」でメジャーデビューを果たす。楽曲プロデュースを担当するのは多くのアーティストに楽曲を提供してきたNONA REEVESの西寺郷太で、伸びやかで情感豊かな吉田の歌声を前面に押し出した、メロディアスなポップサウンドを構築している。

 KOTOにしても吉田凛音にしても、同じ人間に楽曲プロデュースはもちろん、作詞まで委ねることによって密接な関係性を作り出し、より彼女たちの個性を引き出しているのは間違いないだろう。

クロミクロニクル公式サイトより。

 ほかにも、DokiDoki☆ドリームキャンパスや多国籍軍の活動を経てソロに転向、2月25日にメジャーデビューを控えた滝口成美。“EDM女子高生”の異名を持ち、現在は大学受験のために活動を控えているクロミクロニクル。シンガーソングライターとアイドルの狭間を軽やかに横断する星野みちるなど、2015年注目のソロアイドルは多い。

 確固たるコンセプトもないままに、雨後の筍のごとく生まれては消えていくグループアイドルの中にあって、信頼できるスタッフと共に着実にキャリアを積んでいくソロアイドルの存在。今後、ますます重要になっていくだろう。
(文/猪口貴裕)

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