『ルパン三世 カリオストロの城』をより楽しむため、知っておきたい3つのポイント

1501_lupin_1.jpg「日本テレビ」内『金曜ロードSHOW!』公式HP金曜ロードシネマクラブより。
1501_lupin_book.jpg宮崎駿全書(叶精二/フィルムアート社)

 本日16日、『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)にて宮崎駿監督の初長編監督作『ルパン三世 カリオストロの城』(以下、『カリオストロの城』)が放送されます。『カリオストロの城』は1979年に制作・公開され、宮崎駿の名を世に知らしめた名作(ちなみに公開当時、興行的には振るわず)。幾度とないテレビ放送では高視聴率を記録し、昨年11月には公開から35年にして「一番くじ」が発売され、好評を博すなど、長年にわたって愛され続けている作品です。本稿では、そんな『カリオストロの城』を鑑賞する上での注目ポイントを、早稲田大学や亜細亜大学などで講師を務める高畑勲・宮崎駿作品研究所代表のアニメーション研究家・叶精二氏の著書『宮崎駿全書』(フィルムアート社) を参考にしながら、いくつか挙げてみましょう。

【知っておきたいポイント1】宮崎駿が創作した“中年のルパン”

 叶氏は『宮崎駿全書』にて、それまでスラップスティック的な要素が強く“永遠の青年”として描かれてきた「ルパン」というキャラクターを、当時38歳だった宮崎駿が自身と同世代の“中年”として捉え直したとし、以下のように評します。

「中年ルパンは、加齢と共に贅沢な成金趣味と決別し、百円ライターにシケモク、カップうどんをすする貧乏暮らしの中で、自分を賭けられる大仕事を求め、峰不二子には目もくれずに可憐な少女を全力で救って去っていく。それは、従来のルパン像を覆し、成熟したルパンを提示するという大胆な創作であった」(『宮崎駿全書』フィルムアート社 11ページより引用)

 また、山崎晴哉氏による従来のルパン像に基づいた当初の脚本をよしとしなかった宮崎監督が、コンテ主導で脚本を改変したことに触れ、宮崎監督が「台詞による説明を極力排し、多くを語らず演技で表現するコンテを心がけた」と言及。叶氏は、宮崎監督が一言の重さにこだわった例として、ヒロインのクラリスがルパンを呼ぶときにずっと「おじさま」と呼んでいたのに、最後だけ「ルパン…」と呟くシーンを挙げます。

 こうした、中年世代が共感を持てる新しいキャラクターとしてのルパンや、抑制された台詞(と言葉だけに依らない演出)によって、『カリオストロの城』はいわゆる“大人も楽しめる”アニメーションとなっているのかもしれません。

【知っておきたいポイント2】車両に銃火器、“裏設定”の歴史まで……緻密な設定

 本書によると、『カリオストロの城』に登場するフィアット500やブルーバードといった車両、イスラエル製ウージーサブマシンガンなどの銃火器は、作画監督である「大塚【引用者補足:康生】が自らの趣味を反映させて近過去の設定にこだわった結果」だそうです。また、本書では車両や銃火器だけでなく、本作の舞台となるカリオストロ城の様子や、“裏設定”の公国の歴史がいかに緻密に構成されていたかを紹介。当時のパンフレットに掲載された宮崎監督の文言いわく、作品のキーとなる“ニセ札づくり”がカリオストロ公国において「もっとも尊敬され生活も保障された職業」という位置づけにあるという設定には驚く人も多いかもしれません。そのほか、叶氏は宮崎監督作品の特徴の一つとして、“高低差のある舞台”を挙げ、そのイメージの源泉として、イタリアの山岳都市の風景を見出しています。こうした“裏設定”を含めた綿密な設定や物語の舞台、背景にも目を向けてみると、より『カリオストロの城』を楽しめるはずです。

【知っておきたいポイント3】『カリオストロの城』が与えた影響

 本書では、『カリオストロの城』公開後の周辺事情や海外での反響、批評などもまとめています。例えば、80年頃から、クラリスがアニメ誌で精力的に取り上げられ、他作品の美少女キャラ人気が高まったことを受け、“ロリコン・ブーム”と呼ばれた時代背景に言及。「この一種錯綜した盛り上がり」が、『カリオストロの城』の人気上昇に寄与したとしています。このように、多くの人々を惹きつけたクラリスにはぜひ注目したいところ。

 また、海外の反響として、本作がハリウッドで好評を博したことをきっかけに、イタリアとの合作アニメ『名探偵ホームズ』が生まれたそう。『名探偵ホームズ』といえば、宮崎駿監督や『耳をすませば』で監督を務めた故・近藤喜文さん、『マイマイ新子と千年の魔法』で知られる片渕須直さんらが手がけた作品として、今なお根強い人気があります。また、ディズニーの『ノートルダムの鐘』に『カリオストロの城』のオマージュと思しきシーンがあったり、今では有名な話ですが、現在公開中の映画『ベイマックス』で製作総指揮を務めるアニメーション監督ジョン・ラセターも『カリオストロの城』に感銘を受けて、宮崎監督を慕っていることを紹介しています。

 そのほか、場内のシャンデリアを写したカットの背景画として、加工を加えた実写写真が使われていることを明かしたり、城の大屋根の上でルパンが疾走するシーンなどは、加速するにしたがって2コマ(1秒あたり12枚の絵)から1コマ(1秒あたり24枚の絵)となり、「1/24秒の超人的な足運びを書き込むことで、アニメーションならではの説得力を獲得している」(『宮崎駿全書』19ページより)と作画&演出的な見どころを紹介したり……このように、『宮崎駿全書』は精緻で膨大なデータを元に宮崎駿作品を丁寧に紐解いていきます。同書では、今回その一部を紹介した『カリオストロの城』から『ハウルの動く城』までの長編に加え、短編も取り上げているので、宮崎監督作品を観る際には参考にしてみると、より深く作品を知ることができるはずです。ぜひご一読あれ。

 最後に、もっと『カリオストロの城』について深堀りしたいという方には、宮崎監督が『カリオストロの城』について語った記事などが所収されているあれから4年…クラリス回想(アニメージュ文庫)をオススメしておきます!
(文/中目黒日向子)

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