イギリスの反検閲ネットワークに聞く「イギリスのポルノ規制はキャメロン首相のキャンペーンである」

1501_atvod.jpgBBFCと共に、規制推進派と言及されたATVOD(オンデマンドテレビ規制局)の公式HPより。

 表現の自由をめぐる問題の中で、海外の動向への注目が高まっている。先日、BBCが日本の同人誌即売会などへの取材を行った上で報道した「Why hasn’t Japan banned child-porn comics?(なぜ日本は児童ポルノマンガを禁止していないのか?)」などが、それだ。そのイギリスでは、昨年に映像の審査団体であるBBFC(British Board of Film Classification 全英フィルム審査機構)による新たなガイドラインが、ポルノでの顔面騎乗や潮吹きなどを禁止していると報じられ、大きな反対運動が巻き起こった。この運動にて、ポルノ女優が顔面騎乗のパフォーマンスで反対の意思を示すなどしたことから、大きな注目を集めた。

 この問題を中心としたイギリスの現状を、イギリスの民間組織・CAAN(Consenting Adult Action Network)のメンバーであるジェーン・フェイ氏に聞いた。CAANは、2008年に結成されたポルノへの過剰な規制などに反対するネットワークである。

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――CAANとは、どのような組織なのでしょうか?

フェイ:CAANは、組織ではありません。人々をオーガナイズするために声明を出す程度です。基本的な主張は、同意した成人がベッドルーム、または家でのプライバシーを得ること。それらが、政府の介入するものではないということです。

 CAANは、これらの問題を扱う運動や組織を援助し資金提供する役割を果たしています。

――12月に発生した反対運動は、日本でも注目を集めました。イギリスの日刊紙「インディペンデント」紙の電子版に掲載された「イギリスのポルノで禁止されたばかりの、性行為における多くの項目」という記事には、「顔面騎乗」「拘束」「屈辱」 「潮吹き」などが並んでいます。ところが、私たちの取材に対してBBFCは「顔面騎乗を禁止したリストは存在しない」と、問題自体を否定しています。本当の問題点は、どこにあるのでしょうか。

フェイ:「リスト」とは、BBFCとATVOD(The Authority for Television On Demand オンデマンドテレビ規制局)の発表した新たな規制が登場したという意味です。これは、一定の行為を意味するものだと考えられました。顔面騎乗は、その一つとして禁止されることになるでしょう。

 彼らは、個人の安全に直接的な脅威がある場合に限り、顔面騎乗を制限しました。これには、2つの問題があります。

 ひとつは「潜在的な危害」という問題です。BBFCのガイドラインはDVDで描写されたすべての行為を対象とします。彼らは、様々な性的行為を抽出し論評しています。これによって二つのものが生み出されます。規範的な許される性行為と、性的でないもの、ということです。

 第二に(BBFCのガイドラインは)、法律を先取りする規制です。歴史的に、法律は法的な手続きを経て、特定の行為をワイセツであると禁止しています。BBFCは法律のようなルールとなっています。BBFCの基準に依らない出版・発刊は事実上、不法になるからです。これは、さらなる検閲へと向かっている状態だと考えられています。

――日本では、ポルノ女優らによる顔面騎乗などを用いた抗議活動ばかりが、取り上げられていました。実際には、どのような人々が反対しているのでしょうか。

フェイ:とても広範な層が参加しています。この規制は多くの人を驚かせました。そして、反対の規模も驚くほど広がったのです。明らかに危惧を抱いていたのは、ポルノ産業に関係する組織です。また、現政権の連立パートナーである自由民主党も反対の意思を表明しました。また、スーザン・ムーア【註:イギリスの著名なフェミニストで、ジャーナリスト】のようなフェミニストの参加にも注目すべきでしょう。(抗議活動参加者の)ほとんどは、ポルノ産業に関連する人々ではなかったのです。一般的な認識として、これは表現の自由を削減するためのステップというものだったのです。

――規制が強化された理由を教えてください。

フェイ:二つの理由があると、私は思います。デビッド・キャメロン首相は「sexualisation(註:ここでは、社会全体の性の乱れ)」が蔓延しているとして、私事に立ち入るキャンペーンを繰り広げています。ゆえに、彼は一般の人々がポルノにアクセスすることが難しくなるような提案を支持します。

 ATVODの現在の議長は、レギュレーションへの使命感から、インターネット上のポルノに対するキャンペーンを行ってきました。彼は(BBFCの新ガイドラインの)起草に密接に関与してきたと推測されています。

 もう一つは、メディアプラットフォームの一貫性の問題です。

 異なるプラットフォームは、異なるルールを持っているものです。ゆえに、一貫性【註:DVDやインターネット配信までの映像の統一されたガイドライン】は、必ずしも有用ではありません。

 第二に(規制の強化は)「子供を守るために必要」とされていますが、本当にそうかどうかは、強く争われています。

 また、これらの規則はEUのガイドラインに従っていると主張されています。けれども、イギリスは、ほかのEU諸国よりもはるかに厳罰を伴う方向でEUのガイドラインを実装しているように見えます。

――日本では、2014年に児童ポルノ法の改定が行われました。こうした動きは、なにか関係性が存在するのでしょうか。

フェイ:私は、日本の決定はイギリスのガイドラインには関係ないと思っています。イギリスでは、 Coroners and Justice Act 2009によって、すでに多くのマンガの所持が違法となっています。

――先日、BBCが報じた記事「Why hasn’t Japan banned child-porn comics?(なぜ日本は児童ポルノマンガを禁止していないのか?)」が、日本では話題になっています。

フェイ:それは別の議論であり、CAANと関係することではありません。私たちの関心は、大人同士の問題です。イギリスの(児童ポルノに関する)法律は、多くのほかの国の法律よりも厳しいです。しかし、我々はそれについては検討していません。
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 取材の中で、最後に改めて示されたのは成人のポルノの問題と「児童ポルノ」に関連する問題とは、まったく別の議論であるということ。一方で、ポルノ規制が検閲の端緒となる意識は変わらない。話題となったBBCの報道をはじめとする「日本は児童ポルノ大国」的な意見を読み解く背景は、こうしたところにあるのではなかろうか。
(取材・文/昼間 たかし)

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