アイドルライターが語る“仮面女子” NHKのドキュメンタリーで映された彼女たちの真実【コラム後編】

1501_kamen.jpg仮面女子公式サイトより。

――1月1日にリリースしたシングル「元気種☆」が、インディーズ女性アーティストとして初めてオリコン週間ランキングで1位をとり、1月7日には地上波での冠番組『仮面女子のやっぱ 全力だね~!』(テレビ東京系)が始まった仮面女子。2015年、順風満帆にスタートをきった彼女たちだが、8日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が衝撃的なニュースを報じた。内容は、事務所の社長がテレビ番組での“ヤラセ”やメンバーに対する性行為を強要したというもの。本稿は、この件に対して批判するわけでもなく、擁護するものでもない。仮面女子を取材し続けてきたいち記者が、彼女たちへの思いを綴ったものである。

 最近はテレビ番組での露出も増えた仮面女子だが、筆者の印象に残っている番組といえば、やはり2013年6月に放送されたNHKのドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』だ。当時はまだ、アリス十番、スチームガールズ、アーマーガールズによる“仮面女子”という一致団結した複合ユニットの概念が存在しなかった時代。事務所の母艦ユニットとして位置づけられた古参メンバーによるアリス十番とその後輩ユニットで若手メンバーが集まるスチームガールズが、事務所のNo.1ユニットになるために競い合っていた【編注:当時はまだアーマーガールズは存在していない】。

 しかし、それまで事務所を代表するトップユニットとして大々的に活動をしていたアリス十番だったが、スチームガールズがデビューしてからは陰りが見え始めていたのだ。常設劇場のP.A.R.M.Sでは、毎日のライブごとに「ヲタク満足度」と呼ばれるファン投票が行われており、その投票結果で1位をとったユニットが、ライブのトリを務めたり、メディア露出の機会が与えられたりしている。この人気投票でアリス十番をいつも抜いていたスチームガールズ。ある時の“勝利特典”では、スチームガールズは、世界的に有名なハリウッドスターが主演する映画のジャパンプレミアで、ゲストとしてレッドカーペットを歩いたこともあるほどだった。

 そんな“ユニット格差”がついていたときに放送されたのが、『ドキュメント72時間』。番組内でも、アリス十番が直面している「スチームガールズに人気を追い抜かれている」という問題が取り上げられており、投票結果の数字を見て悩む彼女たちの姿が映し出されていた。正直なところ、スチームガールズがデビューしたとき、ここまで人気が出るとは筆者は思っていなかった。今まで、質の高いパフォーマンスで事務所を牽引してきたアリス十番を見てきたからこそ、その思い悩む姿から、彼女たちの苦悩が伝わってくる。あれは何度見ても泣けるシーンだと思う。NHKの番組内でもメンバーが語っていたが、筆者もその辺りのことをアリス十番のメンバーにさりげなく聞いたとこがあり、やはりスチームガールズには“若さ”や“勢い”があると、気にしていたようだった。

 また、当時のメンバーたちに「スチームガールズのメンバーは、もうアリス十番を抜いて、自分たちがNo.1ユニットだと思っているんじゃないの?」と嫌がらせっぽい質問もしたことがある。しかし、返ってきた答えは意外なもので、「人気はスチームガールズの方があるが、個々のパフォーマンスの高さはアリス十番の方が上だと、ファンからも言われる」というもの。スチームガールズからアリス十番に昇格したあるメンバーも「スチームガールズの時はトップクラスと言われていたが、アリス十番に入ってからは目立たなくなったとファンに言われる」と話す。日々、互いのパフォーマンスを見ている彼女たちは、ベテランのアリス十番の方が、レベルが高いことを知っているが、実際の人気は必ずしも比例しないという現実を突きつけられていたのだ。

 一方で、この『ドキュメント72時間』を見た後にショックだったことがあった。アリス十番の最年長メンバーだった月村麗華の卒業だ。当時の彼女は26歳。アイドルを続けるには、難しい年齢だ。筆者も彼女がいつまでアイドルを続けるのかが気になっていた。当時、何かで彼女と話していたところでは、年内は続けたいという様な話をしており、頑張ってほしいと思っていたのを記憶している。そして、NHKのドキュメンタリーで、やれるところまではやるという姿勢を見せていた彼女に、ちょっと安心をしていた矢先の卒業だった。

 彼女がアイドルを卒業したとき、その心境を聞く機会があった。常設劇場もでき、勢いがついてきたときだったが、逆にライブが毎日になったことで、体にガタがきたという。「アリス十番は続けたかったが、パフォーマンスが落ちたと言われる前に卒業したい」と胸の内を明かしてくれた。本当に毎日全力でステージに挑んでいるからこその選択だったのだろう。

 そして、彼女が語った中で特に印象的だったのが、“自分の芸に対してお金を払ってもらっている”ということだ。事務所ができたばかりの頃、初めてアイドルグループを作ったが、知名度も何もなかった彼女たちは、ポスターも無料で配り、お客さんもメンバーと話したい放題。それは自分たちに“お金を払ってもらうだけの価値”がなかったからだと彼女は当時を振り返っている。今でこそ、アイドルは多くのファンに応援され、ファンはグッズにもお金を出してくれるが、それは当たり前のことではないのだと、彼女は語ってくれた。

 こうしたプロ意識を明確に持っているアイドルはなかなかいない。筆者が仮面女子をすごいと思ってしまうことのひとつは、こうしたメンバーの強いプロ意識だ。ゼロからすべてを築いてきた彼女たち。自分たちの“芸の価値”を意識しているからこそ、仮面女子はつねに全力で、真摯にパフォーマンスをしているのだと思う。
(文/桜井飛鳥)

元気種☆(Type-A)

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某ランキング番組でも1位!

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